見出し画像

【連続note小説】日向食堂 小日向真司59歳

吾郎:「いらっしゃい」
客:「おー、ここかぁ」
客:「思ってたより広いじゃないかぁ」
吾郎の見知らぬ年配男性の一団が、日向食堂にどかどかと入ってきた。
 
「おぉー、おまえらぁ、来てくれたのかぁ」
真司の嬉しそうな声が店中に響き渡る。
 
それは真司の高校時代の同級生たちだった。
真司はあおいといっしょに同窓会に度々顔を出してきたから、真司が食堂を経営していることを知っていた。
 
「好きなものを頼んでくれ。今日はおれのおごりだ」
「いや、代金は払うが、ご飯を無料で大盛りにしてくれ」
「あの真司が料理を作るなんてなぁ。食べるのが楽しみだ」
皆、歳を取っても相変わらず気のいいやつらばかりだった。
 
お金がなくて真司が弁当を持って来れない時に、皆で助けてくれたあの友人たちだった。
 
真司は今でもその恩を忘れていない。
料理をご馳走したからと言って、恩を返したことにはならないが、それでも真司は一つ一つ丹精を込めて調理した。
 
「美味い!」
「いや、お世辞抜きだ。
定食屋のメシの域じゃないぞ」
「おれ、明日も来ようかな」
皆、口々に真司な料理を褒めてくれた。
 
「おれがこうやって定食屋をやってこれたのも、おまえらのお陰だ。
ありがとうなぁ」
30年ぶりの真司からの礼の言葉だった。
 
「立花、元気かあ」
「どうやってらこんな上手い料理、作れるんだ」
「真司、高校の頃、ガリガリだったのに、今じゃメタボだな」
「おまえも人のこと言えないぞ」
 
吾郎:「この人たち、オヤジさんの言うこと、まるで聞いてない」



真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

▼関連エピソードはこちら

<続く…>

<前回のお話はこちら>

▼1話からまとめたマガジンはこちらから▼
途中からでもすぐに入り込めます!

いいなと思ったら応援しよう!

鈴々堂/rinrin_dou@昭真
小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。