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ぼくはしばらく泣いたことがない

ふと気付いたことがある。

もう何年も泣いた記憶がない。

6年ほど前に恩師が亡くなった時に泣いたことしか覚えていない。

子供の頃はよく泣いた。

親に叱られた時、友達と喧嘩した時、兄にいじめられた時・・・。

就職してからもある。

仕事で大きな失敗をした時、親父が死んだ時、転職する時に先輩から温かい言葉をいただいた時・・・。

歳を取ると、泣くという行為がこれほどまでなくなるものなのだろうか。

確かに泣くような場面がなくなった。

生活するのはまだまだたいへんだが、若い頃より落ち着いたと言うか、子供も大人になって必死に生きることも少なくなったと言うか・・・。

いや、そんなことはない。

それなら、泣くような場面がなくなったと言うより、辛いことを辛いと思わなくなったのだろうか。

何事も"泣くほどのことじゃないだろ"って心のどこかで冷めた目で見ているのだろうか。

自分の、他人の、心の痛みに鈍感になってしまったのかもしれない。

ぼくはこれから泣けない人生を送り続けるのだろうか。

なにか人情に欠ける人間に成り下がってしまった気がする。

でもそんな感情とは裏腹に、もう辛いことに遭いたくないとも思っている。

だから泣けなくなったのだろう。

ぼくは弱い人間だ。

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鈴々堂/rinrin_dou@昭真
小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。