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【連続note小説】日向食堂 小日向真司76歳

稲本が死んだ。
真司の愛すべき悪友が黄泉の国へと旅立った。
 
癌だった。
身体の調子が悪く、真司らが病院に行くように散々忠告したのに放置した結果、見つかった時には末期だった。
 
真司と稲本との出会いは最悪だった。
幼少のころの稲本の家庭は、両親が不仲で互いが毎日のように罵り合っていた。
そんな家庭環境だったから、稲本の心も荒んでいった。
 
小学校ではいじめを繰り返し、中学校では学校にもろくに行かず不良行為で警察に補導されたこともあった。
 
大人になって再会してから、なぜか二人は馬が合った。
稲本は陰日向になって、日向食堂を支えてくれた。
どちらか人生を全うするまで、二人は悪友でいられた。
 
「おれより先に逝きやがって」
真司は心がどんよりと曇ったまましばらく晴れることはなかった。
生前の稲本が言った言葉が、真司の頭の中で繰り返される。
 
「なあ、真司、生きるってのは辛いことの繰り返しだよなぁ。
 でもな、おれも苦労したけど、おまえの苦労に比べたらたかが知れてる。
 おまえに負けてられないといつも思ってた。
だから今日まで頑張って来れた。
 まぁ、礼でも言っておくよ。
 
 それとなぁ、真司、小学生の頃のこと、悪かったなぁ」



真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。


▼関連エピソード

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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鈴々堂/rinrin_dou@昭真
小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。