【連続note小説】日向食堂 小日向真司13歳
冬の寒い夜だった。
文枝はパートの残業で夜遅くなるから、真司と歳之は二人で晩御飯を食べることになった。
ご飯は真司がガス窯で焚いた。
この頃は電子レンジなどなかったから、二人は冷めたコロッケを食べなければならない。
皿に載せたコロッケを食卓へ運ぼうとして、歳行が謝って床に落としてしまった。
コロッケはぐしゃぐしゃになった。
歳之は泣き出した。
真司は自分のコロッケを歳之に渡して、ぐしゃぐしゃになったコロッケをもう一度皿に載せるとそれを自分で食べた。
夕ご飯を食べてから、中学生になった真司は定期テストの勉強を、小学生の歳之は学校の宿題をやっていた。
真司は何が何でも学費の安い公立高校に行って、文枝の負担を減らすために勉強に励んだ。
歳之はそんな真司に引っ張られるように、宿題をやっていた。
「兄ちゃん、寒いよ」
この家にはろくな暖房器具がなかった。
真司は自分が着ていたちゃんちゃんこを歳之に投げ渡した。
「兄ちゃん、寒くないの?」
「寒くない」
“兄ちゃん、何で寒くないんだろう”
歳之は不思議な顔で真司を見たていた。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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