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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」

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こんな力は望んでいなかったのに ─── 人間からヒトになった僕の回想録 銀行員の“僕“は毎年訪れるクリスマスを楽しみにしていた。小さなお店で身の丈にあったクリスマスツリーを買う…
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記事一覧

長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」 第一章 第一話

 目を瞑るのが勿体無いほど美しい景色が広がっていたとしても、それは信じられないほどの凶器…

米田梨乃
4か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第一章 第二話

第一章 第一話はこちらから↓ 第一章 第二話  僕は前方に板を見つけた。ただ真っ白な大きな…

米田梨乃
4か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」 第一章 第三話

第一章 第二話はこちらから↓ 第一章 第三話  世の中奇怪な出来事というのは自分の身に起こ…

米田梨乃
4か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第一章 第四話

第一章 第三話はこちらから↓ 第一章 第四話  あの日はクリスマスツリーを買って家に帰り、…

米田梨乃
4か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第一章 第五話

第一章 第四話はこちらから↓  外は変わらずの銀世界で、雪は何事もなかったかのように静か…

米田梨乃
4か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第一話

第一章 第五話↓ 第二章 第一話  百三十五年。世の中がどれほど変わろうとも、どれほど大き…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第二話

第二章 第一話↓ 第二章 第二話  突然声をかけてきたその者は、背は低いもののすらりとした細身の姿で、肩に付くほどの髪を綺麗に靡かせていた。左右を向くたびに光る瞳は美しく、吸い込まれるようだった。襟元にお洒落なレースの付いたブラウスに大きなカフスのコートを羽織り、水玉模様のスカートを身に纏っていた。その手には一つの革の財布が握られていた。  たしかな色がわからない僕にも、その姿はとても魅力的に映った。なぜかはわからない。それがこの者の佇まいからくるものなのか、はたまた別の

長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第三話

第二章 第二話↓ 第二章 第三話  一人アパートへ戻ると、僕はこの忌々しい能力に再び激しく…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」 第二章 第四話

第二章 第三話↓ 第二章 第四話  僕は努めて普通を振る舞おうとした。いつも通り、何事もな…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第五話

第二章 第四話↓ 第二章 第五話  何かが崩れるような音が、どこか遠くで、そして近くで聞こ…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第一話

第二章 第五話↓ 第三章 第一話  こんな形でここへ戻ることになるとは。僕は再び収容所へ、…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第二話

第三章 第一話↓ 第三章 第二話  夜明けとともに目の前が開け、一面に広がる草原が目に入っ…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第三話

第三章 第二話↓ 第三章 第三話  ここでの暮らしは規則正しく進んでいった。村は男の暮らす…

米田梨乃
3か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第四話

第三章 第三話↓ 第三章 第四話  この町での生活にも慣れ、一ヶ月ほど経った頃だろうか、僕はこの町に対して、やはり何かがおかしいと思うようになっていた。それは人々の暮らしぶりでも、男の行動でもなかった。ここで暮らす者の瞳の色であった。  ヒトである以上、皆、青色の瞳を持っている。そこに濃淡の差はあるものの、そこに違和感は覚えなかった。違う、彼らの振り向きざまに見える妙な眼光だ。これまで出会ってきたヒトの中で、黒光りを持った者には出会ったことがなかった。唯一、男だけだ。