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読書記録 あなたの右手は蜂蜜の香り

それからどうなったの?生きる糧を失った雨子はどうやってこれから生きていくの?まさか生きることをやめてしまうの?…となんともいえない読了後の気持ちだ。

最後の数ページのヒヤヒヤ、ハラハラったらもう。

いろんな感情で胸がいっぱいすぎて整理ができていない。
ただ巻末で愛してるといったのは、本人からすると究極の愛なのだろう。
それを私は知っている気がした。

何かを切り捨ててでもあなたを守る。あなたを想う。あなたを愛する。
それはね、愛じゃないよ雨子。執着だよ。

雨子って実はすごく人間らしく泥臭いのだということを感じた。
なぜと疑問を持ち、迷い悩み続けている。
砂村さんがいうように…考えて生きている。

そこには雨子躓くような世の中の間違いも矛盾もたくさんあるけれど、同時に雨子自身にも矛盾が生まれている。だからそのことに突っかかる書評は、少し違うのかな、と烏滸がましくもおもった。


私は雨子を嫌えない。
社会の秩序に対するバランス感とか、自分の心のコントロール力は足りないのだけれど、ただ一生懸命生きている人間を嫌いにはなれない。

同じような感情になった今村夏子さんの著書「こちらあみ子」ともまた少し違う。
変わっていることとか、そういった以上に、動物も植物もひっくるめた生命というテーマが付随しているので、いろんなことを考えさせられる。


娘と一緒に動物園へよく行く機会がある。
またちがった見方になるのだろう。

那智くんも、砂村さんも、鳩子さんも三太さんも。
お父さんもお母さんも、みんな。
この本の登場人物は素敵な人たちだった。
手元に置きたい一冊になった。


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