本を読みたい理由
本を好きになったのは、最近だ。
小学生のときハリー・ポッターシリーズは夢中で読んだけれど、その後はなんとなく一冊が読みきれない。あらすじに興味はあるけど、最初から10ページに栞が挟まったまま。
そんなことはしょっちゅうあった。
ていねいな言葉に惹かれて
日本語は好きだ。
その元になるのは、中学で出会った国語の先生。
担任だったのもあり、心許せる人だった。
「正しく、美しい!正美です」
とインパクト強すぎる自己紹介が懐かしい。
正美先生が使う日本語は丁寧さが感じられて、いつも凛としていた。言葉って人柄を表すのだなと教えてくれた人だ。
日本語の細やかなルールを分かりやすく伝えてくれたおかげで、国語の授業は3年間ずっと楽しみながら、きれいな言葉の使い方を肌から吸収させてもらった。
おとなになってから
結婚して子どもが生まれて、家のなかでの悩みがたくさん増えるようになった。
子どもの成長のこと、夫婦でのこと、なかなか会えなくなった友だちとのこと、家でコツコツやっている仕事のこと。
誰かに喋ることもなかなかできないし、検索エンジンにキーワードを入れても多種多様すぎる意見から「これ!」と言った解決方法はなかなか見つけられない。
そんなとき娘の絵本を借りに図書館へ通うようになった。
ひとり6冊まで借りることができる会員カードを親子で2つ作り12冊。この枠に納まるように絵本と小説を並べていく。
もちろん自分の悩みとピッタリはまるような、ザ・パーフェクトな回答が得られることはあまりない。
けれど自分の興味があるテーマや感情移入できる登場人物をみつけると、一冊の本から膨大な学びを得られるのだ。
心が動いた一冊目
最初に衝撃を受けたのは
小川糸さんの『つるかめ助産院』
沖縄の美味しそうな食材や料理の描写に影響を受け、読了した日の晩ごはんはスーパーで少しだけランク上のお野菜を買い、素材のままの味を堪能したり。
出産直後だった自分と主人公を重ね、お産の奇跡を再度噛み締めたり。
つるかめ先生の言葉の励ましがダイレクトに響いたり。
そして一節。
悩んでいるのは自分だけでない。
孤独を感じているのは自分だけではない。
と、また立ち上がる勇気をいただいた。
わたしの人生は一度きりだけど、本を読むと色んな人間の人生やストーリーを共に体験できる気がする。
「自分じゃない誰か」の世界に飛び込み、そっと本を閉じたあとは「本当の自分」と対峙する意欲がまた湧くのだ。
そんな繰り返しでわたしは生きている。
文字に。言葉に。生かされている。
だから、これからも生きていくために本を読む。
希望・慰め・癒し。
エネルギーを与えてくれる活字を力に変え、ただただ前向きに自分のストーリーを生きていけるように。
そして。
本気の喧嘩をするほどぶつかりあった信頼できる大人、正美先生が教えてくれた言葉の美しさを。わたしはきちんと、体現できる人間になりたい。