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『連ちゃんパパ』は最も"人間"を描いた作品

『連ちゃんパパ』とは、ありま猛先生が描かれたパチンコ漫画である。

元々は『パチスロ7』というパチンコ漫画雑誌に掲載されていたが、現在以下のサイトで(広告付きで)無料で読める。

上のサイトのあらすじには

妻が家出、そして残った借金!!息子と二人で妻を探して日本中を探し歩く。借金取りと3人の歪なトリオの放浪記!!

と書かれているが、騙されるなかれ。それは序盤も序盤、最序盤の話。

その実態は邪悪が蔓延るピカレスクロマンである。

放浪の道中でお父さんはパチンコにハマり、それがキッカケで倫理道徳から道を外したサイコパスと化していく。

現在ネットで一大ブームを巻き起こしているので、ミーハーな私もその流行に便乗して一気読みした結果、凝縮した悪の原液が流れ込んできて、持病の逆流性食道炎が悪化した。

ネットで見た"のどごしのいい毒"という形容が一番ハマる。

ほんわかした絵柄で読者を騙して、その実、登場人物が主人公含めほぼ全員クズというのだから、アウトレイジよりたちが悪い。

しかし本作を読んでて不愉快な気持ちがするのは、自分にも思い当たるフシがあるからなのだろう。
銃弾で撃たれるシーンより生爪を剥がされる描写の方が痛そうに感じるのと同じで、「これ分かるわ……」と容易に自分と重ね合わせて想像できるからこそ笑い飛ばせない。

この漫画に血肉が通っているというか、「ちゃんと"人間"を描いているな」と感じるのもそこなのだろう。

私の持論に「人間はそう簡単に変われない」というのがあるんだけど、連ちゃんパパもまさしくそうで、
お父さんがどれだけ悲惨な目に遭ったり善人から施しを受けても人間性が改善しないのは、決して変わりたくないと思っているからではなく、一度形成された性格から抜け出せないだけなんだと思う(それを自覚してるか無自覚かはともかくとして)。

そしてそれが多分一番の"人間らしさ"なのだろう。

バカは死んでも治らない。
ましてや物語みたいに誰かの言葉や行動で簡単に変われる人間なんて、めったにいない。
それで変われるぐらいなら、そもそも人の力なんていらない。
おおきなカブとは違い、芯の部分に根付いたものは、抜こうとすればするほどより深く根を伸ばしていく。

『連ちゃんパパ』はそういったことを教えてくれる漫画なのだと思う。

そして元は真面目な高校教師だったお父さんが、パチンコにのめり込んでいく過程は、私にも経験があるので非常にリアルに感じた。遊びを知らない人ほどギャンブル中毒になりやすいというのは的を射ている。

そういった点でも『連ちゃんパパ』は、人間の剥き出しのリアルを包み隠さず描いた正直な作品なのだと思う。

オモコロの「『連チャンパパ』感想ラジオ」でかまどさんも言ってただけど、これだけ人気だとドラマ化しそう。

それか『凶悪』の白石和彌監督あたりに映画化してもらいたい。お父さんは誰がいいだろう。小太りで、見た目はいい人そうな役者にやってほしいな。六角精児さんとか。あの人、若い頃は本当にギャンブル狂だったらしいし、ぴったりかも。

というかアウトレイジとは正反対に、借金取り以外は見た目が優しそうな役者だけで揃えて欲しい。例は浮かばないけど

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