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‘すぺしゃる’の向こう側 (18) りゅうの里

愛を探しに出た ぼくとりゅう。旅の向こうに もっと大切なものが あった。本当の幸せを手に入れる方法を 見つけた ぼくの冒険物語。

18)りゅうの里
ぼくは、空を飛びながら、りゅうの耳元で、できるだけ優しく言った。
「大好きだよ。りゅうの行きたいところ、ぼくも行きたいな。」
りゅうは、
「きゅるるー。」
と歌うような声で、答えて、空高く飛んだ。

夜が明けるころ、山の中の大きな森の中に着いた。りゅうが、
「きゅるきゅるー。」
と言ったら、森の木がいっせいに、ガサガサ鳴って、ぼくは、怖くなった。木の向こうからは、たくさんのりゅうが、出てきた。ぼくのりゅうは、一番大きいりゅうに向かって走って行って、どーーんと、そのりゅうに、ジャンプした。その大きいりゅうは、ぼくのりゅうを抱きしめた。ぼくのりゅうは、大きいりゅうのほっぺに、自分のほっぺをすりすりしていた。お母さんかな? ぼくは、思った。他の小さいりゅうたちも、二人のまわりにやってきて、ほっぺをすりすりさせていた。ガサガサ、ガサガサ。たくさん、たくさん、りゅうが、出てきた。どうやら、ここは、りゅうの里みたいだった。ぼくのりゅうを抱きしめているお母さんりゅうは、ぼくのほうを見て、静かに、優しく歩みよって、ぼくの顔にも、ほっぺをすりすりしてくれた。

りゅうの里での毎日は、すごく楽しかった。朝、太陽がでたら、起きて、木になっている果物や、葉っぱを食べて、暖かい日は湖で泳いで、森でりゅうの子供たちと遊ぶ。寒い日や雨の日は、山のほら穴の巣の中で、一日中、お母さんにくっついて、寝る。家族みんな、ずっと、くっついて、寝る。りゅうのお母さんは、ぼくもいっしょに入れてくれて、ぼくは、りゅうたちの真ん中で、とっても温かくなって、寝る。とても、気持ちよくて、とても、のんびりできて、すごく好きだ。ぼくは、お母さんりゅうがほっぺにすりするしてくれるのも、温かくて、大好きだ。

そうそう、たくさんのりゅうといっしょに住んで、新しいことがわかった。りゅうたちは、火を噴くことができるから、湖で魚をとったあと、ぼくのために、魚を、やいてくれる。ぼくの服が濡れた時も、火で、小さい木に火をつけて、乾かしてくれる。それと、たくさんりゅうがいるから、ぼくは、ぼくのりゅうを、「きゅるる」と呼ぶようにした。最近は、「きゅるる」も、呼ぶと、わかって、ぼくのほうに、来てくれる。

あっという間に、一週間が過ぎた。お母さんりゅうと寝ているのは大好きだ。けど、ぼくは、ママの「とくべつ」になるために、きらきらを集めたいから、ぼくは、冒険を続けようと思った。でも、きゅるるは、お母さんりゅうや、弟や妹たちといて、とても楽しそうだったから、ぼくは、朝早く、こっそり、一人で、りゅうの里を後にして、歩き始めた。

つづく…

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