おじいちゃんのカブ
「カブ」という言葉が懐かしかった。
今とっても温かい気持ちになれる。
おじいちゃんのカブの後ろに箱をくくりつけて、私はその箱に乗せてもらっておじいちゃんとお出かけした。
箱に入るくらいだからきっと、1歳から3歳くらい?
どこにおじいちゃんと行ったのかは全く覚えていない。
ただ、おじいちゃんのカブの後ろの箱に入って、おじいちゃんがカブを運転して、私はその風を頬で感じていたことだけはハッキリと覚えている。
後で知ったこと。
私はそのカブがすごいスピードで走っているように感じていたけど、私の母(おじいちゃんの娘)曰わく、「おじいちゃんは超慎重な人だったから、カブの運転もノロノロスピードだった」と言うことだった。
幼い頃に感じた世界は、大人になって見る世界とずいぶん違う。
中学生になっての夏休み、おじいちゃんの家に行ったとき、あちこちで体をぶつけた。自分の体が大きくなっていた。あれだけ広いと思っていたおじいちゃんの家は、幼い頃の感覚のままに動くと、とっても小さく感じられた。
だんだん、おじいちゃんとおばあちゃんの身長に近づいて、追い越して。
でも、どんなに体が変わっていっても、心の中に消えない思い出がある。
おじいちゃん、ありがとう。
風を感じさせてくれてありがとう。
一杯、幸せな楽しい思い出をありがとう。
今度は子どもたちに、それをバトンタッチしていくね。