自他ともに愛する〇〇
『あたいと他の愛』 もちぎ 読了レビューです。
ネタバレ:なし 文字数:約1,000文字
・あらすじ
著者もちぎは、7歳にして自らを普通ではない、別の生き物だと知る。
母親からの言葉により性的指向、つまりは恋愛対象として好きになる性別が、自分と同じ男性なのは「おかしなこと」だと気づいた。
父親はおらず、家族はヒステリックな母親と年齢の離れた姉の3人。
決して裕福とはいえない経済状況にあって、著者が家を出る高校3年18歳の冬までに出会った、愛ある人々との交流が描かれる──。
・レビュー
著者のもちぎさんは、「はじめに」で次のように書いています。
【あたいの名前はもちぎ。平成初期に生まれたゲイ。】
最近はLGBTQという言葉を見聞きした人も多いでしょうけれど、
ゲイとは男性同性愛者のことで、言い換えるなら
「男性で男性が好きな人」ですね。
開始から怯んでしまいそうになったアナタ。
安心してください。
本作を読んだ後に思ったのは性的指向がどうこうではなく、
出会った人々が1人の人間として著者と向き合い、
愛を持って接していた事実です。
親しい人が困ったり悩んだりしていたら、「どうしたの?」と声をかけたくなるのと同じで、そこにあるのは純粋な優しさや気遣いです。
親が片方しかいない家庭の苦労は耳にしますし、どうやら著者の母親は子供にとって害を与える毒親なのでしょう。
【「あんたなんか産むんじゃなかった」】
そんな言葉を聞き慣れてしまう家庭だったとしても、幼い子供からすれば親は神様なので、それによって子供の未来も左右されがちです。
しかし、著者は抗います。
きっと1人だけなら無理だったかもしれません。
K先生、カナコ、エイジといった人々との出会いが、暗い方向へと引っ張られる運命に抗い、生きるために18歳で家を出ようと決意させました。
そのための資金を得る方法には賛否あるでしょうし、おそらく嫌悪感を持つ人もいるかと思います。
だとしても頭ごなしに否定するのではなく、もしも自分ならと想像して、著者が出会った人々のように向き合って欲しいのです。
同じようにはできないかもしれませんが、未来は変えていくことができます。
ささやかな声かけが、誰かの人生を少なからず良い方向へと導くとすれば、
「人間も捨てたものではない」
そう思えるのでした。
・おまけ
本作はnoteで書かれたものが元になっており、公式の記事もあります。
著者もちぎさんのページはコチラ↓です。