小さいときは天使やがて不良しかしてその正体は……
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草木も凍る冬になった第8回もキノコ特集をする。
探してみると1回の探索で3~4種くらい見つけることが多く、同じ種類でも違う場所だと生育に違いがあるなどするから、調べるほどに面白いと感じている。
今回、取り上げるキノコは生育の初期~中期の状態を撮影できた。
大きさは小指の先くらいで、周囲を探すとヘッダー画像にした↓のような団子も見つけた。
おそらくこれは「ホコリタケ」の幼菌で、よく見ると円状に生えたフェアリーリングを形成しており、もしも私が子どもだったら中心で踊る妖精が見えたかもしれない。
同じ場所で少し成長した状態がコチラ ↓
別の日に異なる場所で見つけた群体がコチラ ↓
近づいてみると……
あんなに可愛かった幼少期から成長すると、いがぐり頭のヤンチャボーイになってしまう。これはこれで可愛いけども。
さらに成長すると傘の頂点に穴が開き、そこから胞子が飛び出すという仕組みだそうで、どこかタバコを吹かす不良を連想する。
調べていくと始めの小さくて白いものは「ヒメホコリタケ」の可能性が高く、漢字だと「姫埃茸」と書く。
様々な場所に生えるためか別名も多く、「キツネノチャブクロ」(狐の茶袋)、「キツネノダンゴ」(狐の団子)、「けむだし」など様々にあるようだ。
しかも石器時代には乾かして火をつける火口にされていたほか、なんと血止め薬としても使われ、現代の漢方でも馬勃として名付けられているから、由緒ある薬用キノコと言えるだろう。
参考:小川真『きのこの自然誌』
何かに火を点けるというのは、今でこそライターがあるから簡単に思いがちだけれど、可燃性の液体あるいは気体のない時代は重労働だったに違いない。
そして絆創膏や消毒薬もない中で切り傷を放置すれば、傷の化膿や破傷風といった重篤化が起きるかもしれない。
実際に利用できるかはともかく、可愛いだけじゃない頼れる存在としてキノコを見られるようになったのだった。