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「経営にいきる映画」第2回『県庁の星』(2006年日本/西谷弘監督/131分)
文/前原政之
つぶれかけたスーパーの「蘇生のドラマ」
桂望実さんの同名小説の映画化です。
ちなみに、同作はコミカライズ(マンガ化)もされています。
とある県庁で働くエリート公務員・野村(織田裕二)が主人公。
野村は民間企業との人事交流研修の一員に選ばれますが、研修先はつぶれかけたスーパー「満天堂」でした。
半年間の研修を大過なく過ごし、帰庁後のステップアップにつなげることだけを考えていた野村。彼は、年下のパート店員・二宮(柴咲コウ)と、しばしば衝突します。
高校を中退し、16歳から満天堂で働いてきた二宮は、ほかの店員たちに慕われ、「裏店長」とも呼ばれていました。エリート公務員の野村とは正反対の存在だったのです。
しかし、野村は県の大プロジェクトから外されるという大きな挫折を経て、本気でスーパーの改革に取り組むことを決意するのでした。
官民連携の企業改革をエンタメ仕立てで描く
この映画は前半で、官と民の意識ギャップを物語の駆動力にします。
満天堂に接客マニュアルも組織図もないと知って野村は呆れますが、二宮は「そんなものなくても回っていきますから、民間は」と笑います。そして、公務員としては優秀な野村が、スーパーでは役立たずと化し、問題を起こしては二宮に救われる……そんな様子がコミカルに描かれるのです。
しかし後半、映画のトーンは一変します。消防署と保健所の調査が入り、営業差し止めの危機(閉店に直結)に直面した満天堂の店員たちは、改革に本気になった野村と団結し、それを乗り越えていくのでした。
その過程では、公務員として鍛え上げた野村の書類作成能力などが、フルに発揮されます。
つまり、前半では官の悪い部分が描かれたのに対し、後半は逆に、官ならではの力で民の足りない部分を補っていくのです。
ずさん極まる体制に慣れ、店を改革することをあきらめていた店員たちが、野村の意識が変わったのに呼応して、一人また一人と意識を変えていきます。在庫の山があふれる倉庫を整理し、店内の導線を改善し、厳格な鮮度管理を取り入れ……と、店を少しでもよくしていこうとする意欲が満ちていくのです。
その結果、営業差し止めを免れ、売り上げも上がり、店は見事に蘇生するのでした。
映画のキャッチコピーは、「カイカクするのは、ココロです★」。
この言葉のとおり、野村と店員たちの心が一つになったとき、官民連携が大きな実を結ぶという、中小企業改革の物語です。
経営者にとっては、成功する官民連携の要諦を学べるとともに、社内改革のお手本にもなる映画です。
★注目のワンシーン
二宮が、「あたし、あんなスーパーでもあそこが好きなの。好きだから逃げちゃいけないって思った」と、失意の野村を励まし、改革に駆り立てる場面が圧巻。この映画は、2人の淡いラブストーリーでもあるのです。