ベレー帽と翡翠のループタイが似合う祖父と。#美術巡礼
今日は敬老の日ですね。
祖父との思い出話しを書いてみようと思います。
私の祖父は、古美術が大好きな人で曽祖父から受け継いだ古美術商を営んでいました。と言ってもお勤めをしていたので商いとは名ばかりの趣味に近いコレクションだったと思います。
そのため骨董品は私にとってより身近なも物でした。家の床の間には掛軸が飾られおり、玄関には壺や陶器の置物、食器も和食器が多かったです。
毎週、祖父の気分で掛軸が入れ替えられ、床の間の前に正座し、淡々と語る祖父の話しを聞くのが習慣でした。しかし私はうんざりで、いつも右から左に聞き流していました。当時小学生の私には活気ある現代美術の方に興味があったからです。
たまに祖母が略盆(茶道の簡略化したお点前)で点ててくれたお抹茶を戴きながら聞くときはまだマシでしたが、マンツーマンでの教授は、苦痛でしかなかったのです。本当にごめん。じーちゃん。だから、あまりよく覚えていないのです。
■記憶のなかの作品たち
それでも印象深い作品は、今でも覚えています。
それがこちら、①本阿弥光悦の赤楽茶碗です。
◆赤楽茶碗 銘「乙御前(おとごぜ)」
http://kizuna-maboroshi.doorblog.jp/より引用
貫禄ある面持ちなのに陶磁器よりも軽く、手に馴染むフィット感に意表を突かれたのをよく覚えています。粗相の無いよう上半身をかがめ両肘を正座の太腿につけ、支えるようにしては何度も持ち比べ見ていました。
そして、②尾形乾山も好きでした。
◆色絵竜田川図向付
文化遺産オンラインより引用
◆舟橋蒔絵硯箱
東京国立博物館より引用
江戸時代の斬新なデザインや釉薬の色づかい、和との融合がなんとも絶妙で一瞬で虜でした。上図の派手目の向付の皿は、何をどのように盛り付けつけるか悩みそうですね。すごく創造性をかき立てられますね。ダイコンやニンジンのおなますが主流のようですが近年はお刺身が多いようです。
あと③菱田春草は、清楚で凛とした空気感が優しさを醸し出していて好きでした。
◆猫シリーズ 「白き猫」「黒き猫」「春日」「黒猫」「梅に猫」
https://mag.japaaan.com/step/38182より引用
祖父が見せてくれた多く作品は、写し(手本を模倣して作られたもの)だったと思われます。しかし、どの作品もとても素晴らしいものでした。
■久しぶりの美術館
先日、京都嵐山の福田美術館へ行ってきました。
亡き祖父が大好きだった菱田春草を見にです。
休みの日には日本全国の美術館へよく足を運んでいた祖父。
果たしてこの作品達を見たのでしょうか?
当時、貴方は、何を思い何を感じてましたか?
毎晩お酒を飲んで近所迷惑になるくらい軍歌を大声で歌って、朝にはケロッとしてまた寡黙で実直な人柄に戻る。幼いながら大人が不思議でなりませんでした。
戦火に徴兵され弟を亡くし帰国したあと、家長としての重圧など色々あったのですよね。孫は今、それなりを経験しいい歳になりました。
古美術商は残念ながら祖父の代で絶えてしまったけれど、心にはちゃんと息づいています。
もっともっと、いっぱいお話聴きたかったよ。そして、もっともっと語らいたかったよ。
亡き祖父の声を聴きに
祖父の足跡を辿り思い巡らす美術巡礼。
また機会をみつけて美術館に出掛けてみます。
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