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余白の匂い

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香りを「聞く」と言い慣わす”香道”の世界に迷い込んで十余年。 日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」
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記事一覧

「泥の香」 ~ 蟲たちの春

週末に買った鉢の植替えをしていたら、部屋がヒヤシンスの花と土の匂いで春一杯になった。 年…

Ochi-kochi
3年前
8

「ホタルノヒカリ」~ 想いに添えて

シソにも実りの季節があったとは。 大葉の鉢が急に枝を伸ばすのに驚いていたら、可愛いらしい…

Ochi-kochi
4年前
6

「金木犀」 ~ 思い出でもないくせに

嗅覚にも得手不得手があるのだろう。 私はもしかすると“花”系の香りを感じにくいのかもしれ…

Ochi-kochi
4年前
9

「永遠へ」 〜 明治神宮、命の森の匂い ~

猛暑に焼けつく8月の週末、久しぶりに明治神宮の森を散策した。庭好きの友人との都内”探庭活…

Ochi-kochi
4年前
4

「梅仕事」 ~ 梅雨のおくりもの ~

雨の匂いが近づき店頭に青梅が並んだ週末、今年も「梅シロップ」の仕込みをした。 真夏の外出…

Ochi-kochi
4年前
5

「散歩」 ~ 雨の匂いのする街 ~

部屋の観葉植物に水やりをしていたら、思い切り立ち上がった緑の匂いに鼻がびっくりしてしまっ…

Ochi-kochi
4年前
5

「梅雨明け」~ 父の残り香 ~

まもなく父の七回忌を迎える。 そのせいか、この頃ふとその人を思う時がある。 父が亡くなったことで、私はことさらに泣いた記憶がない。同じように母や妹の涙も見たことが無い。一度だけ妹が声を上げて泣いたが、それは直前の体調の変化に気付かなかったことへの”後悔”で、悲しさや寂しさの涙とは違う気がした。 いなくなった実感が乏しいからかも知れない。 「パパのことだから、その辺フラフラしてるわよ。お墓なんかにいるわけ無いし。」 あの頃も今も、私達はそう言いあい笑っている。 木の枝のよ

「Vinyl」 ~ 12インチ聞香(もんこう) 〜

コロナウィルスの声が聞こえ始めた2月の初め。法事帰り、人気の少ない京都寺町通りを歩きなが…

Ochi-kochi
4年前
8

「折詰」 ~ 小さな世界の清なる匂い ~

ネットフリマの商品受け取りで、初めてその駅に降り立った。谷根千あたりの魅力的な匂いの街だ…

Ochi-kochi
4年前
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「無為」 ~ つらつら匂い考 ~

香りは苦手、匂いが好き。 香道のお稽古を十年以上続けておきながら、敢えてそう言ってしまう…

Ochi-kochi
4年前
12

「ラストダンス」 ~ 師走の街に ~

12月はダンスの季節だ。 父が生前ソシアルダンスを長く続けていたことから、この時期あちこち…

Ochi-kochi
5年前
9

「移り香」 ~ 顔うずめる時 ~

「自分の枕の匂いっていいよね。ときどき突っぷしてクンクンしたくなる。」 私は「へーえ」と…

Ochi-kochi
5年前
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「慈雨」 〜 Calling you 〜

雨の日が苦手と言う私に、その人は飛び切りチャーミングでパワフルな”おまじない”をくれた。…

Ochi-kochi
5年前
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「香道」 ~ 漂うように 〜

余白の匂い 日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」  前回の記事: 「盆会(ぼんえ)」 ~ いかれたBaby ~ 香りを”聞く”と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。 この九月、「香道」を始めて新しいひと回りの年を迎えた。 ”香り好き”ではないが”匂い”には興味があった。 「○○は鼻が利くから。」 母からは冷蔵庫に残ったお肉や魚の「お鼻見」をよく頼まれた。 中学三年の春、学習旅行で訪れた京都。行く先々のお寺で「お手洗い」にひっそりと炷(た)かれた線香