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「疲労」と「疲労感」はベツモノって話

NHKの「ヒューマニエンス」という番組が好きでよく観ている。
先日のテーマが「"疲労"捉えにくい生体アラーム」で、とても興味深かったのでその備忘録。

簡単に言うと、
・疲労:体の細胞がダメージを受けた状態
・疲労感:脳が感じる休めというサイン

で、
実際に体が感じていることと脳のサインにズレが生じる、らしい。

実際にある運送会社で、仕事後に疲労測定器(自律神経の働きによって疲労を数値化する装置)を使って従業員に測定してもらったところ、本人は「まだ疲れていない」と言うのに対し、疲労偏差値と呼ばれる数値に「要注意」アラートが出るというズレのある社員が沢山いた。
(その割合は7,000件以上のデータをとって、28%もあった)

たしかに私も「今日はいい仕事したな!!」というシーン(単純だけど自分の成果物が誉められたり、目標を達成したとき)は、疲れを忘れてしまうことがある。


この仕組みについて専門家は「マスキング」と表現していた。

「疲労感」は脳の眼窩前頭野という部位で感じるらしいのだけど、人間の場合はそこに覆い被さるように前頭前野という、欲や意欲を司る働きを持つ部分がある。

ここが報酬などを得て意欲が高まると、ドーパミンなどが分泌されて快感や高揚感が沸き上がって、これが疲労感をマスキングしてしまう

脳が発達することで疲労感を誤魔化す能力を身につけてしまったのが人間である。


やはり休息は大事、という話なのだけど、印象的だったのは、「運動による疲労の回復は早く、精神的ダメージによる疲労回復は遅い」という話だった。

疲労してから回復するまでの流れは以下の通りである。

疲労
→細胞の中でリン酸とeIF2αが結合する
→炎症性サイトカインという物質が出る
→これが血液や神経を介して脳へ伝達される
→脳が疲労感を感じる!

→疲労感に従って体を休めたり休息を取る
→細胞の中でリン酸と結合していたeIF2αが元に戻る
→必要なタンパク質の生成を始める
→肝臓や筋肉が正常な運動を始める
→回復!
(とはいえ無理を重ねるとそのまま細胞は死んでしまい、うつや脳卒中や心筋梗塞を引き起こすのでムリは禁物)

実は運動すると、このタンパク質の生成を手助けしてくれる成分が出るらしい。
だから運動後の疲労は割とすぐ回復する。

一方で、精神的なダメージの場合はこの成分は出ない。回復するまでには、ダメージを受けた期間と同じくらいもしくはそれ以上の期間、休養が必要となる。


こんな感じで人間は自分ではなかなか疲労を関知できないのに、それを敏感に察知しているのが体内のウイルスらしい。

ヘルペスウイルスは疲労が溜まると症状が出る(私も出る)。
それはヘルペスウイルスが寄生している体の危険を察知して、外に逃れようとしているのだとか。

ヘルペスにさえ見放される体って考えたら、まあまあ笑える。


そしてヘルペスウイルスの中には、うつ病になる可能性を上げるHHV-6というウイルスがあるらしい。

このウイルスはほぼ100%の人間が持っていて、最近、HHV-6が作り出すSITH-1というタンパク質がうつ病患者には特に多いことが分かった。

マクロファージに潜んでいたHHV-6は
疲労を検知して再活性化して増殖
→血液を通じて唾液に集まる
→嗅球に感染してSITH-1を合成
→それが脳のストレス反応を高める
→結果的にうつ病になりやすくなる


疲労の度合いを測るセンサーとしてHHV-6を使おうという研究もあるという。


なんとなくうつの要因は疲労だってことを認識していたものが、具体的なデータを元に、科学的に証明され始めている。

なかなかに面白いテーマの回だった。

今日もきちんと寝て、スッキリ起きよう。

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