【part14】けんほろ予防新聞、ツレに刺さる。
相手が自分を選んだ理由なんてものは、結局大して重要じゃなかったりもする。
私と付き合うメリット
一年以上前、当時私が勤めていた会社の上司が発起人となり、私の上司二人とツレとの四人で飲みに行ったことがあった。
もちろん私の会社の関係者とツレは「はじめまして」な場だったのだけど、だんだん酔いも回ってきて、私と上司たちはいつものように下ネタもちょくちょく挟む会話になっていた。
その流れでいきなり上司の一人が私に対して、
「おい森逸崎、お前と付き合うメリットって何なんだよ。三つ教えてくれ」
と聞いてきたのだった。
いやそれ私じゃなくてツレに聞く質問。
と思いながらも、考える。とりあえずなんだろう、何か返さないと。えーとえーと、
「家族想い、料理上手に床上手、ですかね!」
繰り返すけども、酔っている状態での会話なので容赦してほしい。
アナログのアンテナ
思えば付き合い始めてからそれまで、「ツレが」私と付き合っている理由なんてものを全く気にしていなかった。単純に興味がなかったからなのだけど、この飲み会の翌日、せっかくなので聞いてみた。
「そういえばなんで、私なの?」
「運命としか言いようがないから、わかんない。」
即答かよ。黙りなさい。
「じゃあ、気にしてくれるようになったきっかけは?」
「うーん、、、。
手書きの新聞、かなあ。」
ツレが言っている「手書きの新聞」とは、私が某グルメサイトの営業マンだったときに、自分の担当エリアで勝手に作って配り歩いていた『たぶん週刊 森逸崎』という『ほぼ日』のもじり資料だ。
A4の紙にそのエリアのグルメのトレンドやら小ネタやらをゆるーく掲載していて、四コマ漫画とかも書いていた。
言われるまで忘れていたのだけど、6年前初めて会った時、私はそれを自己紹介代わりにツレに渡していたらしい。
当時資料データはすべてローカルで管理していたから、何代か前の社用PCにしか置いてなかったし、私も内容すらうろ覚えである。
「え、あれ?あんなお粗末なA4ペライチで?」
「うん。なんか、俺も同じようなもの作ってたから。やっぱり手書きの新聞とか雑誌とか、好きなのよ。」
ツレが学生の頃にアイドル雑誌を作っていたと言うからそれを見せてもらったことがあったけど、テキストも絵も全部手書きで、なるほど確かに通じるものはある。
「逆に、あれ見せてなかったらどうなってたの?」
「海さんとは付き合ってないかもしれないなあ。」
まじかよオイ。
まさかあのたった一枚の紙切れが、ツレを引き寄せてくれようとは。
あれのおかげで一度断られた店舗でも「2号目デース」って素知らぬ顔して訪問できたし、飛び込み営業の「けんもほろろ」から身を守るためのものだったけど、なんだろう、書いてみるもんである。
どのアンテナに何が引っかかるかなんて、きっとその本人も知り得ないことが他にもたくさんあるんだろうなあと思った。
関係性は創り上げていくもの
結局大事なのは、これからどう理解しあっていくか、って部分だけだとは思っている。最初はどうであれ、人間関係なんてものは全部『創り上げていくもの』だから。
職場も家族も恋人も、初めからできあがってるモノなんて一つもない。お互いをゆっくり知っていって、尊重して、受け入れて、受け入れられなければ話し合って。
ぜーんぶシンプルにそんなもん。
だから多分、私は「ツレが」私と付き合っている理由に興味が湧かなかったのだ。これまでも、そしてこれからも。ツレも「運命」なんて言ってはいたけど、近しい考えなのだろうとは思う。
「相手がかつて自分を選んでくれた理由」にあぐらをかくのではなく、この先お互いがどう変わっていっても、その都度ちゃんと、会話したい。