日本人の働く時間は短くなったが、保育標準時間は長いまま…という現象がいつの間にか起きているんじゃないか
保育士の友人から興味深い話を聞いて、こんなポストをしました。
友人の職場では、今年度入った新卒・第二新卒の保育士7人のうち2人が、夏前までにフルタイムからパートタイムに働き方を変更することを希望し、現在パートタイムとして働いているそうです。
今保育所は11~12時間、それ以上開所しているところがほとんどだと思います。それはなぜかというと、保育標準時間が11時間だからです。(保育標準時間については何度か説明しているのと、ググると出てくるのでここでの説明を割愛します)
先日こんな記事も書いたのです。保育士はなぜ若い人が多いのか…多くの人がバーンアウトして辞めていき、その後もフルタイムで復帰する人は少ない、なぜそんなことになっているのか…について、私の個人的な体験を基に考えていたことを書きました。
が、ここで書いた状態に留まらず、私が思っている以上に時計の針は進んでいて、その唯一”保育士をフルタイムの正規職員として続けられそうだった20代独身の人たち”にも変化が起きていたのかもしれない…ということに、今回友人の話を聞き、気づかされたのでした。
そんなことを考えている中、のもきょうさんのこんな記事を読んで、自分の体感とも合致し、あぁやっぱりそうだよねと思ったんです。
私の周囲の人たちも、年々勤務時間が短くなっている人が増えています。コロナ禍で一気にリモートワークが進み、働き方もさまざまになっています。24時間戦えますか?という言葉が流行語になった30年前とは日本人の働き方の景色が大きく変わりました。ここにきて、出社を推進する企業が増えている話も聞きますが、そうかといって、完全にコロナ禍前には戻らないんじゃないかと思います。多様化は進んでいくでしょう。
そう考えると、大人の働き方はかなり変わってきていて、11時間保育所に子どもを通わせなくても仕事ができる人も増えているはずなのに、相変わらず保育所は保育標準時間を11時間とし、そこに延長保育時間を加えてさらに長時間開所しなければならないという状態は、本当に必要なのでしょうか。
もちろんどれだけリモートワークが浸透しても、それができない仕事はたくさんあります。そういった方たちのために早朝・深夜・土日祝祭日に開所している保育所は必要でしょう。しかし今のように、ほとんどすべての保育所で11時間以上開所することは必要なのでしょうか。
先日松井さんと対談した際にも、日本とアメリカの保育園の比較をしながら、こういった部分に触れましたが、
日本の保育所の開所時間の長さは、保育所が保育所保育指針に則った保育をしていくことを大変難しくさせています。しかも園児の年齢は0~5歳までの幅もあります。そのひとりひとりの子どもに合わせた保育を11時間以上も行うためには、相当数の人員が必要だし、職員ひとりひとりの学び続ける努力も必要です。それを本気で行うための資金が保育所に十分に投入されているとは到底思えません。
時々SNS上で起きる長時間保育についての議論、現場にいる身としてはなんて不毛なんだろう…という気持ちで眺めていることが増えてきていました。自分の中のこの冷めた気持ちは何かと考えていたところ、もうとっくにうまくいってないのに、長時間保育のどこが悪いの悪くないの言ってる場合じゃないんだよね…と思っている自分に気が付きました。
他の仕事をしている人が多様性を求めるように、保育士も多様性を求めることに何ら不思議はありません。そんな中で保育士は11時間連続して子どもを保育することを国から求められているのです。そしてその求められている保育の内容は、子どもの多様性を認めて、それぞれの発達段階を理解し、応答的なものです。両者は矛盾しているように私は感じます。両立できる方法があるのかもしれませんが、少なくとも今の日本の保育所の仕組みでは困難です。しかもそんな困難を両立することは、子どもたちのすぐそばにいて、その多様性を理解していく立場として考えてみると、良い方向にむかっているのだろうかと疑問を持たざるを得ません。自分たちの働き方が多様性とは程遠い状況では、何をどう子どもに伝えたらいいのかわからなくなってしまいます。
保育士個人が各々自分に合った働き方を考え、その上で短時間労働を選ぶことは今後増加するんじゃないかと思います。そうなったとき、保育所の仕組みが今のままだったとしたら、表面上は保育士が居てうまくいっているようでも、実際のところパートタイムの短時間勤務者だけになっているかもしれません。そういう時代がそこまで来ているかもしれません。
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