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アカデミック読書会(第27回) 開催レポート - 「記憶と忘却」-

読書会概要

昨日(7/8木)の読書会では、参加者3名、ファシリテーター1名の4名で、「「国民」の歴史はどのように語られたか?」をテーマに、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』の「XI 記憶と忘却」を読みました。

今回の読書会では、「死」がどう語られるかについてが対話のメインテーマとなりました。人間の歴史は戦争の歴史であり、戦争には多くの死があります。その死を、人間は単なる出来事ではなく物語として語ります。そのように「死」に意味を与えるものとして、宗教なり歴史なりナショナリズムがあるのだと感じました。人間は自分の人生が無意味であり、ただ単に「生きて死ぬ」ことに耐えられないのかもしれません。人が死に意味を与えようとするのは人間らしい営みであり、意味を与えるために何かを「想像する」のだと思います。

そして、今回の読書会で、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』を1冊読み終えました。今年(2021年)の2月から読みはじめ、充実感があります。扱っている概念や独特の表現に難しさを感じることも多々ありましたが、ご参加されたみなさまのおかげで様々な気づきが得られたことを感謝いたします。

読書会詳細

【目的】
・この本を読み終えて充実感を得たい
・歴史や古典を読むことについてヒントを一つ見つけたい
・国民とは何か?、最終的な答えを出しい

【問いと答えと気づき】
Q

・国民の歴史はどのようにつくられたか?
A
・国民の伝記を作る
・国民は記憶を失っている、ナラティブを造って伝記的な物語を作る
・死が点々と関わっている
・連続した経験が忘れられている
気づき
・象徴的な特別な「死」とかなどを描く
・昔は暴力の歴史だったが、現代は暴力的な死は減っている

Q
・記憶と忘却、相反する言葉、どうして題にしたのか?
A
・国民の歴史、殺し合ってきた
・忌まわしい記憶を忘れることで国民というものを作り上げていくしかなかった
気づき
・記憶も大切だけれど、忘れないと前に進めて行けない

Q
・兄弟殺しの戦争を求める心理的な背景は何ですか?
A
・陰鬱
・ごく自然に現れてきたものである
・暴力的な死
気づき
・思い出すことができない、人間とはそういうもの
・藤原辰史さん、農業、食、ナチスのキッチンを書いた、泣きそうになりそうにながら研究
・ありありと記述するのを避けるのは人間の本能

【対話】
・歴史は戦争が中心、戦争の歴史
・戦争の裏でたくさんの人が死んだ
・アレキサンダー大王も戦争をして敵を破っていった→殺すか捕虜にするか
・現代は自己犠牲の精神はまったくない
・昔は特攻隊、お国のために死んでいく、自己犠牲の精神があった
・中国は昔(毛沢東)の時代に帰ろうとしている
・死を忘れているから「出来事」となっている→物語をつくる
・死とか戦いは避けられない→国民の歴史として一つの主題になっている、ナショナリズムがつくられた
・歴史と戦いは切っても切れないもの
・「国民」は「宗教」の代わりとしてたち現れた
・宗教の役割:弔う、埋葬、死後の世界を想像する
→国民が宗教の代わりになったとき、歴史が弔う、埋葬、死後の世界を想像する機能をもった
・宗教と国家は切っても切り離せない、宗教は国家と結びつき、人を支配しやすいようにした
・権力と宗教は結びついている
・宗教は支配者に利用された、国が宗教を支えた
・時代が変わっても本能的なものは変わらない
→死に目に会えないことの悔しさ、過去に対する供養を何かしら求める
・平家物語、海外の人が読んでみたい、生と死、日本人の考えを書いているから
・現代日本人は宗教を意識しないが、世界は宗教で戦争をする人もいる
・宗教は戦争に使われやすい、国家権力と結びつきやすい
・メソポタミアでは記録のために文字が生まれた
・農耕が世界を変えた→ヨーロッパが発展した要因
・オーストラリアでは経済が発達しなかった
・農耕は、アフリカは縦、ヨーロッパ(ユーラシア)は横に発展した

【気づきと小さな一歩】

気づき
・人にとって忘れるとは生きるための本能、大切なこと
小さな一歩
・嫌なことを忘れることはいけないことではない、忘れることで下を向かなくてよい、前向きになる

気づき
・宗教は光と影の両面がある
小さな一歩
・宗教の元祖の人の教えを学ぶ(釈迦、孔子、老子(道、タオ))

気づき
・国民の歴史について:政治に都合のよいように語られると思っていたが、語られるほうも聞く方もそれをもとめていた
小さな一歩
・ナラティブの新書を読む

次回の読書会のご案内

【開催日時・場所】
・2021年7月22日(木)20:00~21:30 @ZOOM

【テーマ】
・「世界経済」の生まれる素地とは何か?

【課題本】
・イマニュエル・ウォーラーステイン著、川北稔訳『近代世界システムI ― 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立 ―』 ※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK

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