#09 初対面はどんなお店が良いか 【マッチングアプリで出会ったモラハラ婚約者と別れた話】
レストランまでの道のりは気まずかった
レストランまでは私がナビをした。わんこくんはどうも移動が苦手らしい。目的地まで最短で辿り着けなくて、いつも集合時間ギリギリになっちゃうんだって。ふむ。
正直、移動中の会話には困った。わんこくんはこれまで話したことがないタイプに見えたので緊張していたし、彼も口数が少なめだったので…。彼はどんなスタンスや距離感で私と話せばいいのか考えているように見えた。慎重そう。
とにかくちょっと気まずかったなー。ま、これからこれから!
初回はエンターテイメント性のあるお店が吉
予約したメキシコ料理屋は地下にあった。穴蔵みたいな店内、オレンジ色の間接照明、陽気な音楽、骸骨の飾り、サボテン、カラフルなソンブレロ(メキシコの帽子)。これが本当に素敵な内観だったの!
そうかなぁ。そうかもね。
テーブルにつくまでのわんこくんのエスコートは完璧だった。ドアを開けてくれるとか、先を歩かせてくれるとか、奥の席を譲ってくれるとか、そういうの。デート慣れしていそうだなぁと考えたら、胸がチクっとした。他の女性に嫉妬?いやいや、妬くの早くない?
席につき、お互いにマスクを外す。実物のわんこくんは、一瞬困ってしまうくらい写真より老けていた。言わないけど。
付き合ってから知ったんだけど、彼は加工アプリに詳しくなかったし、スマフォが古くてカメラの性能が悪いせいでぼんやり写ってしまい、結果的にsnowで撮ったみたいに肌が綺麗に写っちゃったらしい。笑
オーダーするまでに、私たちはメニューひとつでたくさん笑った。メニューが木製でやたらと重くて手が震えたり。メニューのフィルムが光って文字が読めず、変な角度から読もうとしたり。フィルムを外してみたものの、今度は文字が滲んでいたので解読班を呼ぶ真似をしたり。私たち、こんなどうでもいいことで笑い合える二人なのねとうれしくなった。
結局、どうにかこうにかして文字を読み当て、無事にサラダ、タコス、お肉を数種類、そして綺麗なカクテルを二つ注文した。
男性のギタリストが歌い始め、私たちはお互いの顔を見て笑った。
お店の雰囲気が一役も二役も買って、私たちの緊張は一気に解けた気がする。さぁ、楽しい夜が始まる。
りん