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リサーチ実践と組織浸透に向き合った、ペパボでの2年8ヶ月間をふり返る
これは Research Advent Calendar 2023 の8日目の記事です。
こんにちは、8日目担当のうえだと申します。いきなりですが先日、新卒から2年8ヶ月間デザインとリサーチを業務として勤めてきたGMOペパボを退職しました。
今日をもって退職しました。
— うえだり (@rimmmonga) November 30, 2023
大好きな会社で、リサーチもデザインも楽しく刺激的な仕事をたくさんさせていただきました。ありがとうございました!好きな色が詰まった花束がうれしい💐 pic.twitter.com/f1gzSy7NRJ
この記事では、2年8ヶ月を「リサーチ」の観点からふり返り、何を経験してどんな学びを得たか、リサーチをキャリアの軸に据えるようになるまでの流れ、そしてこれからどうするのか? わーっとふり返りつつ、区切りとしてまとめてみようと試みる記事です。
リサーチのアドベントカレンダーで書く内容か迷ったのですが…(笑)、以下が気になる人に読んでもらえるとうれしいです 💐
・事業会社でサービスと全社のリサーチをリードする経験ってどんな感じ?
・新卒からリサーチ中心のキャリアになるまでの流れって?
・Webサービスのリサーチ・デザインを経て、これからどうするの?
私はどんな人か
デザインほぼ未経験の状態から、新卒デザイナーとしてGMOペパボに入社。配属後はロリポップ!レンタルサーバーなどホスティングサービスのデザインを担当。
段々とリサーチ業務の比重が高まり、今年はリサーチ業務メインに。リリース前の効果検証リサーチ、中長期戦略のリサーチ、複数サービスをまたぐ全社リサーチ推進のリードなど・・・わずかな期間ながらも、さまざまなレイヤーのリサーチを濃密に経験させていただきました🌳
社外でも、リサーチカンファレンス2023のスタッフをはじめ、リサーチカンファレンス福岡ポップアップイベントに登壇+会場スポンサーをしたり、福岡のリサーチコミュニティをゆるく始めてみたりと、たのしく活動しています🕺
🌱 🌱 🌱
新卒デザイナーとしてペパボに入社するまで
入社前は大学院の修士課程で、自分の住んでいる福岡県糸島市をフィールドにサービスデザイン研究的なことをしていました。
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学生の頃は教育NPOや公的セクターばかりでインターンしており、当時は今のような仕事に就くとはまったく想像していませんでした。
ただ、その状況下で「目の前の子どもは本当は何を求めているのか、観察と関わりから理解しようとする」試みを模索していたり「教育の問題に対して仕組みでアプローチしたい」と自然とシステム的に考えてしまう自分の特性がありました。ふり返ると、デザインやリサーチに共通する態度がいつの間にか身につき発露していたのだと思います。
就活のプロセスを経て、自身の経験とデザインとの接点に気づいたこともあり「リサーチを重視している会社でデザインしていきたい」という思いを抱き、ペパボに入社することを選びました。
(もっとたくさんの紆余曲折がありましたが、就活の詳細は以下noteに🦒)
入社、幅広いデザイン業務(1年目)
入社以降は、UIデザイン、ビジュアルデザイン、コーディングなど幅広く業務を担当しました。SUZURIのデザイン改善やロリポ・ムームードメイン申し込み導線改善の話、デザインチーム組織づくりの働きかけなど・・・当時の具体的な話は、以下noteにまとめています📝
この頃はまだ、リサーチを業務として行なう機会がほぼありませんでした。
そんな中で「初めての業務でのUXリサーチ」に取り組んだ時のことを、2021年のリサーチアドベントカレンダーで記事にしていました!(当時の初々しさと粗削り具合を見返すと恥ずかしい…🙈)
リサーチが主業務に(2〜3年目)
2年目が近くなってきた頃から、徐々にリサーチ業務の比重が高まっていきました。主にやったことは大きく2つです。
1. 担当サービスのリサーチ・仕組み化、定量定性リサーチポータルづくり
2. 全社(複数サービス横断・組織観点)のリサーチ推進
💪 過去のリサーチも活用・資産化、担当サービスのリサーチを推進
2022年の頭ごろ、規模大きめのリリースプロジェクトにジョイン。そこでの十数名へのユーザーインタビュー・コンセプトテストを契機として、担当サービスのリサーチを推進する役割を担うようになっていきました。
一度リサーチをやってみて気づいたのが「これまで実施されてきたリサーチ結果にアクセスしにくい」ということ。たくさんのリサーチが実施されてきたのは最高だったのですが… 例えば調査設計する時、過去のリサーチを参照しようと探してみると抽象的なサマリしか残されていなかったり、そもそも発話ログが記録されていなかったり、構造的に見つけにくかったり…といった状態でした🌀
そこで「ついでに過去データもアクセス・活用しやすくなる仕組みをつくろう💡」と考え、リサーチ結果データベース運用の試みを始めました。
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このデータベース、約1年半の間に何度もトライアンドエラーを重ね、退職1週間前にようやくある程度形になったところで部署全体に展開しました…ギリギリすぎる😂(苦笑)
全社横展開の観点も含みつつ、定性に加えて定量データも含めたリサーチDB・ポータルページに落ち着きました(データアナリストの方と一緒に自主プロジェクトとして進めました。定量も含めたかったため、本当に心強く感謝でした🥲)
他にも、インタビュー参加しやすい仕組みづくりや、誰かがリサーチをする時には積極的に伴走・レビューしたり、ユーザーさんのデータをもとに意思決定しやすくなるようボトムアップ的な働きかけから文化づくりにも奔走してきました。
💪 モデルケースと仕組みづくり、全社のリサーチを推進
ペパボはminne、SUZURI、カラーミーショップなど複数サービスを抱える事業会社ですが、各サービスごとにリサーチ活用事情が大きく異なりました。
全社的にもリサーチ活用文化を醸成したいという意図のもと、今年、CDO属するデザイン部からの働きかけで「社外顧問とのリサーチ協業」プロジェクトを実施し、その推進役を担いました🏃♀️
社内の本質的なリサーチ課題を特定したあとで理想像を定義し、それを達成する手段として、特定サービスでのリサーチプロジェクトをモデルケースとして実践しました。そこで成果となった事例・仕組みを各サービスに横展開、波及させていくことで全社的な体制・文化づくりへと繋げるイメージです。
社外顧問としてべぢまきさんに定期的にレビューいただいたのですが、毎回稲妻のような気づきがあり…⚡️ 組織としても個人としても、この協業によって大きく前進したのではないでしょうか。
Designshipに引き続き #GMOdevday でもリサーチ協業取り上げてもらっている…!
— べぢまき|UXリサーチャー@リクルート (@vegemaki) December 6, 2023
私のアドバイスをGMOペパボの皆さんが超スピードでアクションに変えて下さっていて、協業の意義をとても感じております!
この取り組みを発信して協業スキームが広がれば良いなと思うので、登壇等の機会があればぜひ😌 https://t.co/pQkLY9lRiN
ペパボ側は、他部署でリサーチをゴリゴリ推進されていたまーやさんとほぼ二人三脚で進めていました🤝
プロジェクトは現在も進行中(道半ばで抜けることになり本当に悲しい…😭)なのですが、来年どこかでバーンと発信しますのでお楽しみに!!!
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リサーチがキャリアの軸になるまでの転機
今でこそリサーチが自分の軸のひとつになっていますが、ここに至るまでに転機になったなぁと感じたものを挙げてみます。
🌱 ペパボの「スキルエリアシステム」と、社内文化
ペパボのデザイナーで共有している「スキルエリアシステム」ですが、ここで「リサーチ」が定義されており、スキル向上支援の仕組みが入社時点ですでに整っていました。
このドキュメントや過去のナレッジを読み込んだことで「自分の強みはリサーチになるかも?」と気づけたのが一つ目の転機でした。
また、ペパボが大切にしているバリューのひとつに「アウトプットすること」があるのですが、それに則り社内・社外でも「リサーチやっていき」をアウトプットしまくっていました。結果、「なんかよくわかんないけどコイツはリサーチの人だな」と認知されるようになっていったのもよかったのかな、と。そういった社内文化にも背中を押してもらいました🌳
🌱 「新規事業チーム」での最高なチームメンバーとの経験
今年の上期、新プロダクトのリサーチをチームメンバーとともにできた経験も間違いなく転機でした。
「リサーチャー」としてデザイナーと分担した関わり方、チームでの仮説検証と分析、新サービス設計にリサーチがリアルタイムで活かされていくプロセスを、初めてガッツリ経験。一人じゃなくてチームでやるってこんなにおもしろいんだ!を実感できたのも初めてだったかも。
何より最高のメンバーで、彼らに刺激されて、プロダクトをつくっていくことの複雑さと楽しさをわずかながらも実感できた貴重な経験でした。いや〜〜本当に楽しかったんですよね。またこんな景色を見たいなと思いました。
そして、それを経てリリースされたMuuMuu Sitesをよろしくお願いします!🌈
🌱 リサーチカンファレンスのコミュニティに入ったこと(スタッフ参加)
個人的に一番でかかった転機としては、やっぱりこれですね!!
今年からリサーチカンファレンスのスタッフに勇気を出して応募したのですが、本当〜〜によかった💮(背中を押してもらった同僚のまーやさんにも大感謝…🤝)
準備から当日の関わりの中で、リサーチに関心のある方々とのつながりができたことが何よりの宝でした。それも一過性のものでなく、今もSlackやSNSでつながったり定期的にイベントで再会したりするのですが、リサーチカンファレンスの方を見つけるとつい嬉しく、ほっとします。笑 それくらい所属意識の高さと居心地の良さがある🍵
単なる情報交換に留まらず、いろんな機会をつくり出す、そのつくる過程の中で関係性が深まっていくのも楽しみのひとつになっています。
リサーチカンファレンスの福岡ポップアップを自社オフィスで開催し、私自身も登壇の機会をいただけたことにも感謝が尽きません🌸(外部初登壇!)
さらに最近は、リサーチカンファレンス福岡で一緒に登壇した方々と一緒に福岡のリサーチコミュニティをゆるく始めました🥳 好きな人たちと一緒に企画できるなんて夢のよう… 心から楽しんでいます🙆♀️
(息子に「ママみたいなおとなになりたい!」と言ってもらうことがあり、こんなふうに働けてるなんて幸せだな〜と噛み締めています🥹)
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経験が浅くもリードする立場として、大事にしてきたこと
改めてふり返ると、経験に見合わないような立場を与えてもらうことが多く、常に「私にできるのか?」と「挑戦してみたい」の狭間で揺れ続けていました 🫠
いつも手探りだったため、頼りにしていたのは先人の方々の書籍や記事。MTG中に、自席ななめ後ろの本棚から書籍をさっと手にとっては引用しつつ調査計画を練り直し・・・といったこともしばしばでした。
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しかし逆に、知識に引っ張られて以下のようなことも多々ありました…。
・知ったばかりのフレームワークや手法を試してみたいがために、気づいたら調査目的からズレたことをやってしまっていた🤦♂️
・この事例ではうまくいってるのに、なぜうちではうまくいかないんだろうと、つい環境のせいにしたくなってしまった💭
それを経て、大事だと気づいたことを残しておきます📝
💙 知見に頼りすぎず「早く、とにかく失敗する」
リサーチ業務にチャレンジし始めた2021年は、今と比べて国内のリサーチ関連の情報・事例が少ない状態でした。しかもお手本事例を知れたとしても、今いるチームや環境でまるっと適用できるわけでもありません🌀
それに気づいてから、できる限りペパボでの経験知を獲得せねば、そしてそれを加速するために「早く、とにかく失敗しよう」という目標をひっそり立てていました。前例のないリサーチや仕組み化など、まず形にして人を巻き込んでフィードバックを得る。さっさと失敗から学び、自分も取り組みも質を上げていくしかない。
これを自分メモ用DMに書いて、失敗数をKPIに置く気持ちで逃げたくなる場面でもぐっと背中を叩き、失敗して恥かいた後に「失敗1ゲット!やったね!🤦♂️」と唱えて落ち着かせていました。笑
やらかしてばかりで頼られなくなるかな…それでも仕方ないか…と思っていたのですがそんなことはなく、それを受容し手を差し伸べてくださる最高なチーム・会社の皆さんのおかげで仕事が可能になっていたんだな、とふり返って思います😭
💙 「たった一人の専門家」にならない、みんなでオープンに進める
先述とも重なりますが、リサーチの最適な活用のされ方はたった一つではなく、チームや環境によって求められる在り方はまったく異なります。私がいた環境では、専門的なアドバイザーではなく「リサーチをみんなでオープンに進める」ための触媒のような働きが求められました。
これに気づいたきっかけはとある失敗談からなのですが・・・詳しくは以下資料に書いていますので、気になる方はぜひ🔭
ただ、この「オープンに進める働きかけ」も、組織によって最適な働きかけは変わってくるでしょう。「こうすればヨシ!」な鉄板策はなく、その組織自体を対象にインナー(組織内)リサーチを並行しながら、これからも理想的な在り方を探っていくつもりです。
🌼 🌼 🌼
これからどうするの?
これまでは組織浸透を意識したメタな動きの割合が高かったのですが、さまざまな経験の中でも「プロダクトをチームで作りあげていく経験」の複雑さも含めたおもしろさが心に残っていました。
将来的に目指すこととも重なり、ひとつのプロダクトと、その先にいる多様なユーザーの方々のために改善し続ける、という経験を集中してもっと積んでいきたい!という気持ちに落ち着きました。
リサーチは軸として変わらず据えつつ、組織的な基盤・体制づくりも担っていく予定です。それに加えて、リサーチ結果を具体のデザインに落とし込んで形作る・提供するところまで担えるよう、自分にとっての新たな挑戦が待っています。
今まで、あたたかいチーム・組織の皆さんのおかげでなんとかうまくやれていたので、環境が変わること、自分への期待値が変わること…正直不安でいっぱいですが、それ以上に新たなチャレンジを非常に楽しみにしています。
(東京のオフィスやイベントにもちょくちょく足を運ぶ予定なので、引き続きいろんな方々とお会いできると嬉しいです🌵)
ここまで読んでくださりありがとうございました!! これからもよろしくお願いします💐
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