ロビン・ウィリアムズより面白いコメディアンを知らない ~ 破壊的な面白さ、病的な哀しさ" Tribute to Robin Williams
天災ロビン、授賞式でハリウッドセレブを抱腹絶倒させる!!
Youtube で "ロビン・ウィリアムズ" と検索をかけると、たくさんの動画が出てきますが、残念ながら、ほぼすべて英語音声・英語字幕のみです。自動翻訳機能を利用しても、直訳のおかしな日本語にしかなりません。しかし、やはり、ロビンは凄いです!
内容は解らなくても、彼の大仰な身振り・手ぶり、多彩な表情・声音の使い分け、何よりも会場にいる「ハリウッドセレブたち」を爆笑の渦に巻き込んでいる様子を見ているだけでも「おかしく」なるのです。
ロビンがステージ上を駆けずり回って繰り広げる「小学生男子並みにバカバカしく幼稚な即興、あるいは下ネタ満載で皮肉混じりの毒舌ジョーク」に、
ゲスト席に座っている監督スピルバーグやスコセッシ、イーストウッド、俳優のロバート・デニーロ、ニコール・キッドマン、レオナルド・ディカプリオ、レネー・ゼルウィガーなど、すまし顔が崩れてうっかり大笑いしているのです。
Youtubeで、その典型例で短いものを挙げておきます(英語字幕設定可
何かの授賞式での一コマ。デニーロ、ジョディ・フォスター、レオナルド・ディカプリオなどを前に2分半ほど 1123万回視聴
https://www.youtube.com/watch?v=hgT707uizYI
映画 Good Will Hunting でアカデミー助演男優賞を撮った時の映像で、共演のマット・ディモンや監督ガス・バン・サントの姿あり 約3分 700万回視聴
https://www.youtube.com/watch?v=q6Egi5V_jNU
ロビンを日本のお笑い芸人にたとえると
毒舌なら昔のたけし、おふざけなら昔のタモリ、軽佻浮薄なトークなら今昔変わらずのさんま、表情・声色を変えた大げさモノマネならコロッケや原口あきまさなど。
ロビンはひとりで多人物を演じ分ける話芸も得意で、タカアンドトシやドランクドラゴンなどのコントのエッセンスに近い感じありです。
スタンダップ・コメディアンから映画俳優へ
1951年シカゴ生まれ。父は大企業の重役、母はモデル。名門ジュリアード音楽院に合格して演劇を専攻。テレビ出演によって人気を確立してスタンダップ・コメディアン(独り舞台でネタを披露する芸人)として全米各地でのライブ公演で大成功を収め、映画へと進出します。
ロビンを初めて観たのは映画「ガーブの世界」の小説家役でしたが、次に観た「今を生きる」の型破りな教師役で、あの激しい笑いの渦を巻き起こすロビンの凄さに感動し、その後、大ヒットした「ミセス・ダウト」の女装した家政婦には、笑い過ぎて苦しくなるほど、彼が100年に一度の「笑いの天才」であることを確信しました(先輩格のバスター・キートンやチャールズ・チャップリンなどに敬意を表しつつ・・)。
彼のマシンガントークによる辛らつな笑いには、皮肉と風刺の爆弾も激しく炸裂するようなエキセントリックさと、どこかピエロのような愛すべき滑稽さとペーソスがあり、激情にかられた姿からぐっと哀しみをこらえたような表情に豹変するところなど、そんな両極端さこそが彼の比類なき魅力だったと思います。
コカインとアルコール依存症、レビー小体型認知症(DLB)
過激な笑いの裏の病的な暗さ
病からの自殺という報道が真実であるかどうかは別として、ロビンのあの過激な笑いと演技は、常人の技ではなく、やはり「天才」というしかないようなレベルに達していたと思います。そんな天才が「演技という舞台」から降りて普通の日常に戻ったとき、その落差があまりに大きかったのではなかろうかと、勝手な推測もしてしまいます。
以上お二人の話は、ロビン・ウィリアムズという人間の別の本質を探る貴重な証言ではないかと思います。いろいろな番組にゲスト出演しているロビンはどれも過激すぎて破壊的な面白さなのですが、終始落ち着きなく動き回り、しゃべりまくる彼の姿は時として病的に思うこともあったからです。
そう思った時、後年になって、異常犯罪者を演じた映画「ストーカー」における無表情で寡黙すぎる写真屋は、今思えば、役を演じているだけでなく、ロビン自身のまた別の顔だったのでは思いたくなるくらいの異様な暗さでした。
私の好きなシーン:my favorite scenes
本来の持ち味、不世出の天才スタンダップ・コメディアンとしての本領を発揮しているのは、映画「今を生きる」での授業風景です。教室という舞台で、生徒という観客を前に、おそらくアドリブも含めた( 生徒役の俳優たちは役を忘れて笑っている)過激な笑いと含蓄のある名言を披露しています。
次は、やはり「ミセスダウト」で、行政委員の調査で何とか素性をごまかそうと悪戦苦闘するシーン、レストランで仕事交渉の際に酒を飲み過ぎてしまうシーンは、大爆笑と涙が止まらないです。このアイデアは間違いなくロビンのものでしょう。人類コメディ史があるなら残すべき傑作です。
最後に、ロビンのTVインタビューより
かなり昔、NHKで「アクターズスタジオ・インタビュー」(?)というアメリカのTV番組が放映されていました。ハリウッドの有名スターをスタジオに招いて質疑応答し、最後に演劇専攻の学生たちと対談する企画物で、たまたまロビンの回をVHSテープに録画していました。
時事ネタや下ネタも交えた辛口のギャグと、体の激しい動きと多重音声のような声音の使い分けで、最初から突っ走ってゆくトークには圧倒されました。
Youtube で、まさにこの番組の冒頭3分半ほどの動画を発見しましたので、ここに紹介しておきます;
舞台登場から観客の様子に応じてすかさず笑いにつなぐ彼のお手並みをうかがい知れる貴重なシーンです( 英語字幕設定可 )
https://www.youtube.com/watch?v=S1nW9DHctYE&t=148s
番組最後に、学生からの質問コーナーがあり、ある女子学生がこう聞きます;
「どうしてそこまでリスクをおかして過激なギャグを連発するのですか?」
ロビンは最初だけまじめな表情で答えます;
「人と違うことをするのにリスクはつきもの。コメディはすぐに客の反応が得られるけど、シリアス物は違う。悲劇漫談なんてないだろ・・(シェークスピア風に)さあ、今夜もたっぷり泣かせますよ、・・(下ネタ)・・存分にお楽しみを、なんてね。・・常に新しいものを作りたい・・(下ネタ)・・演劇をする快感を経験したいから、君たちは、オーストラリアの未開地から過酷な大都会ニューヨークに来たんだろ、サバイバル・ニューヨーク!」
愛すべキャラククター、ロビンを偲んで
" Oh Captain, My Captain " (「今を生きる」の中のセリフ )