マイナス10kgの愉悦
人は いつもと違う環境で
知らない己と出逢う時がある。
普段noteでゴリラを名乗り
リアルでもその名に恥じない
恥ずかしい図体をしている私だが
人生で今のところ
たった一度だけだが
本気で減量を試みた事がある。
きっかけは十三年前
出張先のビジネスホテルだった。
大抵のビジネスホテルの部屋の中には
大きな鏡がある。
仕事先に向かう際の身だしなみを
チェックする為のモノだと思う。
その鏡に 私服姿で写った
私の体は
余りにも締まりが無い残念なモノだった。
ゴリラというより もう
とにかく明るいゴリラだった。
実家に全身が写る鏡はあるが
細長い上に光の加減で陰影が付きやすく
体のラインが細く見える錯覚が起きる。
故にそれほど気にしていなかった。
対して ビジネスホテルの鏡は
ほぼ正方形で腰の下まで中途半端に写る。
窓が小さめだから陰影も付きづらい。
つまり 本来の体型がハッキリと
露わになる。
鏡に現実を突きつけられた。
「安心して下さい」と言えそうで
全然安心出来ない
余りにダルな肢体...
出張から帰った私は
ダイエットに本気で挑む事にした。
まず取り組んだのは
食生活の見直し
昼食をサラダだけにして
ある程度空腹感を回避するため
鶏のササミやチーズを混ぜて食べた。
米やパンは極力控える。
夕食も米の量を減らす
一般的なサイズの茶碗に半分以下
あとは野菜炒め一品と味噌汁
ほぼ一汁一菜。
それでも肉は食べた。
脂肪燃焼と代謝を上げるエネルギー源として
タンパク質は欠かせない。
鶏肉三日 豚肉一日のルーティン
そして 朝食だけはしっかり食べた。
仕事をする為には絶対に外してはいけない。
続いて運動
筋トレと有酸素運動。
これを実行するにあたって
二つのアイテムを購入した
一つは 当時通販番組で取り上げられていた
直立で両足のペダルを左右に動かし
腹筋から下半身の筋肉を引き締める器具
(以下 足漕ぎマシンと呼ぶ)
もう一つは 簡素なエアロバイク
電動式ではなく ゴム製のVベルトで
ペダルに負荷を伝達する
段階の調整可能な機械式の自転車タイプ
これに加えて 元々家にあった
重さ3kgのダンベル二つを利用する。
実践した事は
・ダンベルを両手に持ち 腕を胸の辺りまで上げ中心から外に水平に広げて中心に戻す反復筋トレ
×30回
・足漕ぎマシンに乗り
股関節を広げる→閉めるの反復運動
×30回
・エアロバイクの負荷を
自転車を平地で漕ぐより少し軽めに調整して
20分漕ぎ続ける
この運動を
(平日は朝、晩)
( 土日祝日は朝、昼、晩)
たるんだ自分に課す事にした。
まずは一週間、効果は...
1kg減
日常生活なら誤差の範囲内
飽き性に加えて即効を求める私の性分なら
あの時 ここで辞めてもおかしくなかったのだが
その後も継続していた
続ける事にハマっていたのだ。
二週間 三週間 ...
効果はしっかり出ていた
開始一ヶ月で5kg減
私のモチベーションを維持するには
十分な数字だった。
二ヶ月目
減量の壁 停滞期に入ってしまう
中々数字が減らない しかし...
二つの理由から
私の挑戦が終わることはなかった。
一つは
知人から「体が絞られて来ている事」を
伝えられた事
この言葉にどれ程救われた事か
そしてもう一つは
「3.11」
減量器具が置かれている部屋のテレビから
次々と流れてくる凄惨な光景と
それに屈せず
生命を救おうとする人・生きようとする人
「俺もこれしきの事で へこたれてられるか!」
命に関わらない自分事ながら
そう強く思った。
開始から二ヶ月が過ぎ
停滞期を抜けたのか 体重がまた下がり始めた
三ヶ月目 2kg
四ヶ月目 2kg
それぞれ減少
この頃には
普段 会社であまり接してない人から
(面識はある)
「ずいぶん痩せたね。」と言われる様になった。
それから約半月...
プライベートで食事会に行く事になった私は
ある事を試してみる事にした
「入社してから二年程経った辺りに買って
太ってしまってからタンスに眠っていた
ヴィンテージ物のジーンズを履く」
仕事がハードだったからか
あの頃は周りから心配される程痩せていた
そんな時期も私にはあったのだ
但し あの頃よりまだ10kg近くは重い
さすがに無理かと思ったが...
履けた しかも全く無理がなかった
少し余裕があるくらいだ
体重としてではなく
体がそれなりにしっかり引き締まっていた。
あの日 あの瞬間は
人生で五本の指に入る程の興奮を禁じ得なかった
その日の体重は
減量を始めてから
ちょうど10kgのマイナスだった。
このあと しばらくの間
今は半ば無頓着なファッションに
どっぷり浸っていた
トップスもボトムも買い漁った。
...今 その服たちは手元にはない
元々が太りやすい体質に加えて
仕事の多忙化やそれによる疲れ
前述の飽きっぽい性格
精神障害の発症etc...
結局 かつてのとにかく明るい体型に近いゴリラに戻ってしまった。
まだ精神の調子に波があるので
無理は出来ないが
叶うなら
年齢を重ねて基礎代謝が落ちる前に
もう一度 思いっ切り減量に挑んで
十三年前のあの愉悦に浸ってみたい。
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