読了ツイートできなくなった、夏。#26
数年前までは、読み終えた本の感想をTwitterのつぶやき140字以内に収めて書くことをちょっとした趣味にしていた時期がある。
まとめることで時間が経過しても本の内容をよく覚えているし、感想を書くのも楽しかったので読書の後の楽しみにしていた。
棚からぼたもち的な出来事で、本の感想を簡潔にまとめる技術が仕事でも役に立った。物事を要約して伝える場面で活用できたし、自分の考えを文字に起こして表現するという行為が間接的に、誰かとのコミュニケーションを円滑に進めるための術として役に立った。
文字を書くのが楽しいと気付いたのはその頃からだった。
文字を書く技術・本を読む能力がちょっとずつ上がっていくことに付随して、自分の言葉として表現できることも増えた。
ただ、この本を読む力が悩ましく思う時期があった。
以前よりもちょっぴり表現や発想の幅が広がったことで、Twitterの140字以内に収めることが難しくなっていった。要約する力と言葉で自分の意思を表現する力はまったくの別競技だ。使う筋肉がまるで違う。
140字に納めたくても、書きたい想いが多すぎてうまく収めることができない。140字というのは本当に簡潔なことしか書けない文字数だ。
面白かった!他の作品も買っちゃう~!と、スパッと開き直った明快な感想に徹して書ければよかったのだけれど、Twitterは案外、作者や出版社の人達が読了ツイートを覗いていることが多いし、そうなってくると自分もカッコつけたくなって「主人公から気高い精神性を感じた……と、ッターン!」みたいなことを書きたくなってしまい、あーでもないこーでもないと直している内に、自分には140字以内で想いを伝えきることは無理だと悟った。
しかも書き慣れていく内に、なんだかキザな言葉を並べている自分にもちょっと嫌気がさして、いつからか読了ツイートをつぶやくことを諦めてしまった。
今も本を読んだ後、読了をつぶやきたくなる衝動に駆られるのだけれど、色々揉んでいる内に最後は消してしまうようになったので、単純に面白かった~とだけつぶやくようにしている。
成長と共に失った若さのような気もして、すぐにセンチな気分になる辺り、自分も真っ当な読書おじさんとしての道を歩めているのだと感じる。
そんなわけで、今週は読了ツイートの何十倍もの感想記事を仕上げることを目標に、休み明けからもがんばって生きていこうと思います。
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