至福のスイーツ・スコーンの思い出
私の中で美味しいスコーンと素敵な記憶は結びついている。
私にとっての最高のスコーンは、妹が焼いてくれるスコーン。
本当にサクッと香ばしくもあり、シットリともしている絶妙な舌触り。
そして、そのスコーンをイギリスの由緒正しい食べ方、クローテットクリームと苺ジャムでいただく。そして、紅茶はもちろん、ミルクティー。
イギリスの田舎のティールーム巡り
イギリスで学生をしていた時、年子の妹も同じくイギリスにいた。なので、春休みに一緒にイギリスの田舎巡りをしよう、と旅に出た。
妹はイギリス各地の伝統菓子のレシピを集めていて、各地でそのレシピ本を手に入れていた。
お金はないけど、時間はたっぷりあった。フィガロジャポンが特集した”イギリスの田舎巡り”というバイブルを持って、忠実にティールームを巡ったのだ。
カズオ・イシグロの日の名残りの世界
田舎ではB & B(Bed & Breakfast)に泊まった。ある日は牧場が経営しているB & Bに泊まり、新鮮な牛乳、ヨーグルト、卵を堪能した。
その中でも一番印象深かったのが、古いお城のようなお屋敷のB & B。かつてのご主人様はもういないのに、カズオ・イシグロの日の名残りのような執事と女中がいて、とても素晴らしいフル・イングリッシュ・ブレックファーストを提供してくれた。
そこで食事を提供してくれた執事さんは、アンソニー・ホプキンス演ずるあの誇り高き執事そのままで、お姫様になった気分だった。
貧乏旅行と思っていたけれど
その当時は本当にお金がなく、ティールームで伝統菓子を食べるので、普通の食事はB&Bの朝食以外は予算がなかった。お金があれば、もっと色々な物を食べたかったね〜!と妹と旅行中、言い合っていた。
でも十数年経った今、振り返ると、あの時間と経験が何にも代え難い、貴重で贅沢な時間だったのだろうと思う。
写真のスコーン
写真のスコーンは最近、妹が焼いてくれたものだ。妹は今でも時々、スコーンを焼いて持ってきてくれる。そして、必ずあのイギリスの貧乏旅行の話をするのだ。
本物の執事が素晴らしい朝食を提供してくれたこと、数々のティールームで本場のスコーンを堪能したこと、イギリスの田舎道で小さい時と同じショット、手を繋いで写真を撮ったこと、全てがスコーンと共に鮮やかに蘇る。
至福のスイーツ、スコーンは、夢のような素敵な思い出まで堪能できるのだ。