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『パンデミックを終わらせるための新しい自由論』が届きました
新刊『パンデミックを終わらせるための新しい自由論』を発売日より前に倉庫から発送してもらったのに、待てど暮らせどいまだ届かず。担当編集者が郵便局に行ったところ、窓口では「ウクライナ戦争の影響でまだヨーロッパへの郵便は不安定」と言われたそうです。それでもEMSで送りなおしてもらったところ、こんどは3日で届きました!
本は想像していたのよりコンパクトで軽く、見た目も明るく、これならバッグに入れて持ち歩いても苦にならなさそうです。屋上に出て空にかざすと、同じハンブルクの空だからなのか、別の場所の別の日の空なのに、空の色から遠くの森との境界線まで本にぴったりでした。
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それにしても最初に送ってもらった本はどこに行ってしまったのでしょう。
さて、今回の本は、反子宮頸がんワクチン運動が吹き荒れる最中で書いた『10万個の子宮』やパンデミックが始まったばかりの頃に出した新書に比べると、良くも悪くもまったくと言っていいほど反響がありません……。
書店に足を運ぶ人、紙の本を読む人が激減していることに加え、タイトルや表紙で煽っていないことも原因かもしれません。またどんなことが書いてある本なのかがはっきりしないこともあるのかなと思いました。
そこで今日はわたしのnoteから『新しい自由論』の目次を紹介させていただきたいと思います。
『パンデミックを終わりにするための 新しい自由論』
難民列車に乗って ――はじめに
第1章 生物兵器開発と感染症
目的は「恐怖を抱かせる」こと/世界の生物兵器開発をリードした日本/人工衛星に遺伝子操作――ロシアのスプートニク・ショック/感染症学の来た道/ 「防疫の島」台湾を作った日本統治/朝鮮戦争後に本格化したアメリカの生物兵器開発/パンドラの箱、遺伝子操作を伴う生物兵器開発/自然変異説を隠れ蓑に/現在でも曖昧な平和利用と軍事利用の境界
【コラム1】 トロイ発掘を支援した医師
第2章 民主化がもたらした新型コロナ国防の弱点
占領政策の一環としての「民主化」の名残/世界でも稀な「人権へ配慮」した感染症法/国がワクチン非接種者を擁護する日本/強制接種だったワクチン/ 「接種しましょう」と言えなくなった予防接種法の改正/ワクチンに消極的な日本の国の専門家/東京五輪の果たした役割
第3章 日本産ワクチンはなぜできなかったのか
国家を凌駕するメガファーマの圧倒的存在感/財団メーカーによる国産ワクチンの寡占/化血研事件
第4章 世界のワクチン開発競争
ワクチンを国家事業としたアメリカ/一時は世界最大シェアだった中国製ワクチン/世界初の新型コロナワクチンはロシア製/中国とロシアのワクチン外交/独バイオベンチャー、ビオンテックの決断
【コラム2】 「交差接種」の衝撃
第5章 スタート地点に立っていなかったワクチン獲得競争
日本は蚊帳の外、欧州はビオンテックに融資/河野太郎氏、ワクチン担当大臣抜擢の英断/個人情報でワクチンを買ったイスラエル
【コラム3】 集団免疫における「接種一回」の重み
第6章 開発競争での敗戦が意味するもの
化血研事件から四年後の日本のワクチン業界/パンデミックを契機に産学協同に再トライ/世界人口の七〇%が接種したことの意味
第7章 ウイルスの起源、研究所漏洩説
新たなる冷戦/消えた「独立した第三者による」ウイルスの起源の調査/WHOは中国のあやつり人形か/ 「DRASTIC」の不気味な存在感/中国が主張する「フォート・デトリック米軍研究所漏洩説」/WHOと消されたピーター/バイデン報告書は中国の生物兵器開発を否定/ウイルスの起源に関するWHOの新レポート/中国政府とは無関係の中国人研究者が書いた武漢市場の論文/ 「フーリン開裂」は他のコウモリウイルスにもあった/当局発表のみの中国発ウイルスの起源のデータ/塗り替えられた国際保健地図/WHOに権限を!パンデミック条約の行方/中国が三年経って公開した武漢市場の遺伝子情報/報告書を書いた「濁った水たち」の正体/パンデミック再発防止の枠組みはないという現実
【コラム4】 「ペイシェント・ゼロ」は二〇一九年十月発生か?
第8章 ワクチンを接種しない自由
ハンブルクで再燃したデモ/右翼と左翼と自然思想/ 「リベラルだから反ワクチン」という誤解/暴徒化する反ワクチン/追加接種しないと外食もできない「2Gプラス」/接種義務化の結末
【コラム5】 新型コロナパンデミックとシュタイナー主義
【コラム6】 世界で初めての反ワクチン運動
第9章 守るために制限する自由
明暗を分けた抗原検査の活用/日本のクラスター対策を反面教師に/ 「精度を頻度で補う」抗原検査の活用法/人災としての医療ひっ迫/5類引き下げで終わらない日本に
【コラム8】 ロックダウン明けの街で見たもの
真夏の夜の夢 ――おわりに
はい、本のオブジェとしての軽やかさとは裏腹に、戦争、生物兵器、ウイルスの起源研究所漏洩説、反ワクチン、と中身はずっしりです、笑
この間、noteやメディアに書いた記事をただまとめただけの、「買んじゃなかった」と思うような本ではありません。
パンデミックの最中、生煮えでも「いま書く」ということを優先させたためにトレードオフになっていた、それぞれの問題やニュースをつなぐものを補い、日本と日本人にとってパンデミックという3年間がどんな時間であったのかを捉え直す内容となっています。
本の袖(折り返した部分)には、こうあります。
感染症対策と戦争は似ている
ある程度、人権を制限しなければ効果的に目的を達成することは難しい
都市のロックダウンやワクチン接種の義務化
どれも市民の自由を奪う
欧米はそれを民主的な方法でやり遂げ
パンデミックから抜け出した
日本はどうだろうか――
念のために断っておくと、この本は日本人のコロナ対策を批判する本ではありません。マスクやワクチンはもちろんのこと、旅行・外食の自粛や「黙食」に至るまで、日本人はやれることを世界一まじめに全部やってきました。
この本で伝えたいのは、まず、感染症と戦争は似ているだけでなく、実際にも密接な関係をもってきたこと。
ふたつ目に、第二次世界大戦の終わった後、日本では、国として対策を取ろうとするとすぐ「全体主義につながる」といった批判が出るようになったこと。その状況にあぐらをかいた国は、パンデミックという国家の緊急事態に際しても「国としての対策」をきちんと取らなかったという事実です。
文藝春秋のウェブサイトで担当編集者が、この本の内容をこんな風にまとめてくれています。
人権は大切だが、それが制限される局面もある。国家は国民を説得し、そのことを許してもらわなくてはならない。それこそが、今後、国家に期待される役割なのである。
国民は3年間、不自由に耐え、できることはすべてやった。あとは政府の決断だけだ。
日本がパンデミックで委縮・停滞した社会に活気を取り戻し、ポストパンデミック社会への歩みを挽回していくためにも、歴史や世界といった大きな枠からパンデミックを俯瞰することは大切だと思います。
『パンデミックを終わらせるための 新しい自由論』、ぜひご覧ください。
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