マガジンのカバー画像

文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】

「文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】」はわたしが書くすべての記事を読みたいという方、定期購読で応援してくださる方向けです。執筆の舞台裏エピソードや医療関係者向けの特…
内容の詰まった記事を更新していきます。「文系女医の書いて、思うこと。【スタンダード】」とだいたい同…
¥10,000 / 月
運営しているクリエイター

記事一覧

1年待ちもざら!?データで見る世界の手術待機期間

日本では、病院の外来の待ち時間は決して短くはありませんが、体調に異変がある時、必要なタイミングで受診できないということはありません。 ドイツはヨーロッパではもっとも医療水準が高く、医療サービスがもっとも優れていると言われている国です。日本のように皆保険で、受診の際の費用も一般の人が払える値段なら、人口あたりのベッド数も群を抜いています。 ドイツでも驚くほど待たされたところが、ドイツでは腫瘍などの比較的緊急性の高い病気でも、受診や検査までに驚くような長い待ち時間があります。

「おとなのワクチン接種」で下げる認知症のリスク

7月末、帯状疱疹ワクチンに関する興味深いデータが発表されました。帯状疱疹ワクチンには認知症の予防効果があり、特に組み換えワクチンでその効果は高いというものです。 今回の記事では、この話をどう受け止めたらいいのか(真に受けていいのいか)について検討します。

帯状疱疹ワクチン、定期接種へー生ワクチンを捨てられない「日本の特殊事情」

来春から、65歳以上を対象に帯状疱疹ワクチンが定期接種となる予定です。帯状疱疹ワクチンには生ワクチンと組み換えワクチンの2つの異なるワクチンがあります。どちらもすでに任意で接種できますが、定期接種としてどのワクチンがどのように使われるのかはまだ検討中です。帯状疱疹ワクチンを定期導入しているほとんどの国では現在、組み換えワクチンを使用していますが、日本ではまだ検討中なのです。

¥980

コロナより簡単!エムポックス予防のためにできる4つのこと

WHOがエムポックスの緊急事態宣言(PHEIC)を出しました。聞きなれない病名ですが、2022年、男性同性愛者を中心にアフリカの外で流行した時にも緊急事態宣言の出たサル痘のことです。 サル痘は昨年2月、特定の動物や地名・国名などを病名につけるのは差別につながるなどとしてWHOが「サル(Monkey)」のMと「天然痘(Poxvirus)」のPをとった呼び名に変更したのに従い、日本でも「エムポックス」と呼ばれるようになりました。 「サル痘」は差別用語?「日本脳炎」はOK?改名

東京地裁HPVワクチン集団訴訟、本人尋問の中身(鈴木エイト氏X投稿まとめ)

いまでも子宮頸がん(HPV)ワクチン問題を取材し続けている数少ないジャーナリスト、鈴木エイトさんが2024年8月7日に行われたHPVワクチン集団訴訟の証人尋問メモをXに投稿した。 国と一緒に訴えられたワクチン製造元は被害者だという女性たちのカルテ開示を周到に行い、症状がワクチン接種前からあったことや、いわゆる「いい子」に多い身体表現性障害(機能性身体症状)の診断を受けていたこと、ワクチンを接種したせいで歩けなくなったとして杖をついて入廷した女性が、学園祭で和太鼓を叩いたり、

ドイツの言語聴覚リハビリ「ロゴペディ」①舌圧子とストローによる訓練

症状が悪くなった気がするーー。 術後3ヶ月目の体調を素直にまとめると、そうなります。 7月は医療記事も少なく、「文系女医のリハビリ話」も更新しなかったのはそれが理由です。記事を楽しみにしてくださっている皆さま、本当に申し訳ありませんでした。 そんなある7月の夕方、バカンスシーズンに入ってキャンセルが出たとの連絡があり、ドイツ式言語聴覚リハビリ「ロゴペディ」が始まりました。

リワイルディングの贈り物

オーガニック食品は好きでも嫌いでもない。だが、わたしのお気に入りのグリースプディング(ドイツのざらっとした食感のプリン)のLサイズは、オーガニック食品を売る「ビオショップ」にしか売っていないので、毎週1回はビオショップに行く。 (オーガニック食品についての詳細は、以下の記事をご覧ください) 5月、ビオショップで「ハチは花を求めて」とパッケージに書かかれた花の種をもらった。 生物学的多様性を上げることを目的に、ドイツのオーガニック食品会社が2012年からかれこれ10年以上

クロアチアの市場で買ったもの

アドリア海の見えるクロアチア・シベニクの市場には旬の地物が並んでいる。前回のウインナー・コーヒーに続き、今日はその市場で売られていたもの種類や値段、味などについて書く。

クロアチアの市場でウィンナー・コーヒーが飲まれている訳

エスプレッソに生クリームがトッピングされたウィンナー・コーヒーを本場オーストリアの首都ウィーン、ではなくクロアチアの港町シベニクの市場で飲んだ。 クロアチアの市場にはどこでもカフェがあり、地元の人たちの交流や生存確認の場所となっている。利用者は特に男性が多く、朝早くからコーヒー、時どき、ビールなどのアルコールも飲んでいる。 シベニクの市場にも男性や家族連れ(父親と娘、3世代といった組み合わせも多い)でにぎわっているカフェがあったので入ると、おじさん2人が表面の白っぽいコー

¥980

「リスク低」なのになぜ?欧米が鳥インフルエンザワクチンの準備を始めた理由

7月4日、アメリカで4例目となるヒトの鳥インフルエンザの感染が確認された。「鳥インフルエンザ」とはA(H1N1)型インフルエンザウイルスの俗称だ。ヒトが感染するのも鳥が感染するのとまったく同一のインフルエンザウイルスだが、ヒトが感染しても他の動物が感染しても「鳥」インフルエンザと呼ばれている。アメリカでは今年に入ってからこのA(H1N1)の感染が乳牛の間で拡大しており市販の牛乳の5つに1つから鳥インフルエンザウイルスが検出されるようになった。また感染した4名のうち3名が酪農家

¥980

独紙も注目!なぜいま日本では「人喰いバクテリア」が増えているのか

独「フランクフルター・アルゲマイン」紙が日本で劇症型溶血性レンサ球菌感染症(通称「人喰いバクテリア」)が増えていることを取り上げたのを受け、友人で同紙の記者のヒナク・ドレンナップが書いた微生物学者アンドレアス・ポドビエルスキー氏の取材記事を許可を得てご紹介します。 オリジナルの記事のリンク(ドイツ語)はこちらです。 「人喰いバクテリアについては」わたしが書いた記事もあるので、よかったら読んでみて下さい。 〇日本では今年、劇症型レンサ球菌感染症、いわゆる「人喰いバクテリア

ニワトコの花の黒パン

ドイツには夏至の前後の短い間、小さな白い花を咲かせるとびきりステキな木がある。 ニワトコ(Hollunder)だ。 日本で言うと沈丁花のような感じだろうか。甘い香りがして見上げると、小さな白い花の房をつけたニワトコの木が立っている。街路や庭、公園はもちろんのこと運河や湖沿いの森にもニワトコは立ち、可憐な花を咲かせる。 実はこのニワトコの花、レモンを浮かべた砂糖水に浸してやるとお酒になる。仕込み水を常温において3日、しゅわしゅわと泡が立ち始める。5日から1週間くらいしたら

歯医者で溺れかけるー「文系女医のリハビリ話」はじめました!

身体にメスを入れられること。その影響は、実際にメスを入れられてみないとわからないこともある。 3月末、顎にできた腫瘍の手術を受けて以降、食べたり話したりに少々支障が出ている。用は足りるが「元通り」とか「気にならない」といったレベルにはほど遠く、思わぬところで足元をすくわれる日々だ。 今回、足元をすくわれたのは歯医者。飴を食べていたら、口の中がじょりじょり言い出した。妙に割れやすい飴だと思ったが、じょりじょりを吐き出してみると飴のかけらと割れた詰め物のセラミックが混在してい

ウワサのハギス

今日は医学も科学も関係ない、スコットランドの「ハギス」という食べ物についての話です。 ハギスについては先日のラジオ「おはよう寺ちゃん」でも触れましたが、音声で説明を聞いてもどんな食べ物なのか想像が難しいのでは?と思い、写真を載せて説明を補足することにしました。この記事のカバー写真の黒いひき肉のように見えるのがハギスです。 ハギスとは羊の肺や肝臓と穀類、スパイスの腸詰で、「ハギスを食べずしてスコットランドに行ったと語るな」と言われるほどのソウルフード。日本でいうおにぎりの感