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文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】

「文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】」はわたしが書くすべての記事を読みたいという方、定期購読で応援してくださる方向けです。執筆の舞台裏エピソードや医療関係者向けの特…
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記事一覧

WHOとCDCの縮小—トランプ新政権の決断が国際保健に与える影響

第2次トランプ政権が発足した初日、トランプ大統領は大統領令に署名し、アメリカが世界保健機関(WHO)から脱退することを正式に表明した。この動きは、ポストパンデミック時代における国際保健に少なからぬ影響を与えるものとなりそうだ。 トランプ氏は前任期中から「WHOは中国の操り人形」などとして、WHOに厳しい批判を繰り広げてきた。特に、新型コロナウイルス発生初期の情報共有やウイルスの起源の調査への協力体制に関し、WHOの姿勢は中国に対して甘すぎると主張。アメリカはWHOを脱退すると

医学的に見た、安全に寒中水泳を行うための「5つの具体的ルール」

前回のnote「寒中水泳で風邪を引きにくくなることのエビデンス」では現在、健康に良いとして世界的なブームにある寒中水泳について、そのエビデンスを検討してしました。 今回のnoteでは、「寒中水泳を実際にやってみたいと思った!」という人のために、安全に寒中水泳を行うための具体的なアドバイスを医学的観点から書いてみました。 前回のnoteはこちらです。

「寒中水泳で風邪を引きにくくなる」ことのエビデンス(科学的証拠)

1月から2月にかけての今の時期、日本では全国各地で寒中水泳が行われる。コトバンクによれば、寒中水泳は、元来、日本古来の泳法を伝える各流の水練道場が寒稽古として行なったものであり、「寒中」とは1月5日の「小寒」から2月3日の「節分」までの30日間を指す。寒い中で泳ぐから寒中水泳なのかと思っていたが、寒中水泳には歴史があり、今でも新春や新成人の門出を祝したり、古来の泳法を披露したりといった具合にあくまでも伝統行事として行われることが多い。 ロシア人の6%、スウェーデン人の20%

「麻疹(はしか)は感染すると数年間、すべての感染症にかかりやすくなる」という話についての最新情報

もう10年も前のニュースですが、「麻疹(はしか)は感染すると回復しても向こう2~3年はすべての感染症にかかりやすくなる」という話をわたしのFacebookで改めてシェアしたところ、大きな反響がありました。 そこで今回のnoteではこの話の元論文(2015年発表)を紹介するとともに、その後の研究でさらに分かってきたことについて解説したいと思います。 まず、2015年の論文はこちらです。

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生物医学先端研究開発局(BARDA)が塩野義に開発助成金を提供

米保健福祉省の下部組織「事前準備・対応担当次官補局」の中にある「生物医学先端研究開発局(BARDA)」が塩野義製薬の免疫不全者向けの新型コロナ予防薬の開発に対し、3億7500万ドル(約585億円)の資金を提供するとの発表がありました。 日本語ではあまりニュースになっていないようですが、興味深い話なので解説します。

お酒を飲まない1ヶ月「Dry January」

「ドライ・ジャニュアリー(Dry January)」をご存じだろうか。クリスマスが過ぎて年が明けた1月、健康のために1ヶ月間、アルコールを1滴も飲まずに過ごす、イギリスの慈善団体Alcohol Change UKが始めた健康キャンペーンだ。Dry Januaryが始まったのは2013年。当初は約4000人だった参加者は毎年増え続け、今では世界から21万5千人(2023年)が参加するグローバルなイベントへと成長している。 アルコールの適量はゼロアルコールと言えば、かつては「肝

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悲報:小児用RSウイルスワクチンの開発が打ち切りに

昨年、米モデルナと米ファイザーが高齢者や妊娠中の女性向けのRSウイルスワクチンの開発に相次いで成功し、承認を受けたことについてはわたしのnoteでも折に触れて書いてきました。 特に、小児に直接投与するのではなく、妊娠する女性に接種することで生まれてくる赤ちゃんにを守るファイザー製のワクチンについては注意点があり、こちらの記事で詳しく書いているので是非ご覧ください。 インフルエンザなどと同様、RSウイルス感染症が重症者しやすいのは高齢者と子どもです。高齢者用のRSウイルスワ

飲み物で儀式で映画でもある「フォイアー・ツァンゲン・ボール」のこと

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まるでおとぎ話!リューネブルクのクリスマスマーケット

12月になって降臨節(アドベント)に入るとドイツでは街のあらゆるところにクリスマスマーケットが立ち、急にクリスマスめいてきます。 わたしの暮らすハンブルクでも市庁舎や教会の前、広場の前はもちろんのこと、エルベ川沿いや駅前などにも大小さまざまなクリスマスマーケットが立ちます。 ドイツでは、ドレスデン(最も古い)、ニュルンベルク(最も大きい)、シュトットゥガルト(最も美しい)が3大クリスマスマーケットと呼ばれ世界的にも有名ですが、ハンブルク近郊ではリューネブルクのクリスマスマ

野生動物と「ヒト」にはご用心!―米国でコウモリに噛まれ女性が死亡

米カリフォルニア州の保健当局は11月29日、マーセド郡ドスパロスにあるブライアント中学校の教室に迷いこみ、床に倒れていたコウモリを保護しようとした美術教師、レア・セネン氏(60歳)が、コウモリに噛まれて死亡したと発表した。セネン氏がコウモリを死んでいると思ったのか生きていると思ったのかは分からない。死因は狂犬病だった。このニュースを筆者のXでシェアしたところ、大変な反響があった。

今年のインフルエンザワクチンは「あまり効かない」予測?

頸の腫瘍の手術をしたこともあり、今年は新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを両方接種しました。わたしにとってはどちらも重症化のリスクが高いわけではありませんが、まだ飲み込みや発声が元通りではない中、喉が腫れたりすると非常に厄介だからです。 ところが、実は先週、米CDCから「今年のインフルエンザワクチンはあまり効かない」というレポートが発表されました。 米CDCの9月の発表によれば、今年のインフルエンザワクチンの有効率は昨年の50%から減少し、

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カナダで10代の子が重体に!―鳥インフルエンザ・パンデミックのリスクは高まっているのか

日本ではあまりニュースになっていませんが、A(H5N1)鳥インフルエンザが少し今までとは違う動きを見せています。

歌うリハビリ!文系女医、村の教会コーラスに入る

わたしの暮らしているドイツ・ハンブルクは古くから自治権のある「自由都市」で、今でもシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の中にポツンと島のように浮かぶ「特別市」として同州から独立している。このハンブルクを取り囲む、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の村のコーラスに入った。 しかも、2つも。

太陽フレアの当たり年に考える―結局、携帯電話の電磁波は有害なのか?

今年は約11年周期で起きるという太陽の表面で起きる巨大な爆発現象「フレア」の当たり年だ。フレアによって生じた強力な電磁波や有害な粒子の放出により、通信障害やGPS(測位システム)の狂いなどが生じる一方、通常は北緯65度以北の高緯度でしか観られないオーロラが日本でも観測されるなどした。 太陽フレア活発化で再び注目!電磁波の人体への影響気になる太陽フレアの人体への影響だが、専門家の間では

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