瀬戸神楽@神楽坂 杉山晴美さん(昭63法)
本年6月、神楽坂にオープンした「瀬戸神楽」は、瀬戸内海産の鯛をメインにした料理と、これに合うワインを豊富に取りそろえたシックで落ち着いた雰囲気のお店。オーナーの杉山晴美さん(昭63法)は、学生時代はスキー一筋に打ち込み、同じサークルで知り合ったご主人が、赴任先のニューヨークで同時多発テロに巻き込まれて亡くなるという壮絶な体験を経て、今日に至っている。その杉山さんに、「瀬戸神楽」にかける思い、学生時代の思い出、そして事件から20年を経た現在の心境を伺った。
1軒目のお店が5周年を迎える直前、コロナ禍で閉店をいち早く決断
じつは「瀬戸神楽」は、杉山さんが2軒目にオープンさせたお店。1軒目は2015年に麹町に開いた「晴ればーる」というイタリアンバルだった。
「みんなが気軽に集まれて、そこに来ると元気が出るような場所をつくりたいという思いでオープンしましたが、5周年を迎えようとしていた矢先の2020年4月に緊急事態宣言が出てしまったんです。麹町という場所柄、周辺の会社はあっという間にリモートワークに切り替え、街から人がいなくなってしまったし、地下店舗で窓がなく、十分な換気ができないこともあって、いったんお店を閉める決断をしたんです」と語る杉山さん。コロナ禍がいつまで続くのか、見通しがまったく立たない中で、周囲の誰もが驚くほど早い決断だったと言う。
その後、「場所にとらわれず、今できることをやろう」と、杉山さんは株式会社ハレプロを立ち上げ、無添加の美容石鹸をプロデュースし、インターネットを通じた販売を手がけてきた。そして前店の閉店から2年余を経て、「そろそろみんなで集まれる場所が欲しい」という周囲の声にも後押しされ、満を持して「瀬戸神楽」をオープンした。
「前の店は個人事業主としてやっていましたが、今回はハレプロの完全出資という形で別会社を立ち上げ、現場は料理人の方にお任せし、私は経営を背後から支える立場で、集客、マーケティング、広報などを引き受け、この場を盛り上げていくという形をとっています」
どんなふうにも料理でき、エコな魚でもある瀬戸内海産の鯛に特化したお店
瀬戸内海産の鯛をメインの食材として打ち出したのは、「料理人が愛媛の出身で、地元の食材を東京の人にぜひ食べて欲しいという思いが強くて、いろいろ試食した結果、鯛がとても美味しかったんです。鯛は1匹を余すところなく使えるエコな食材でもあるし、癖のない魚ですから生で食べて美味しいのはもちろん、焼いても煮ても揚げてもいいし、和風でも洋風でも中華でも、いろんな形で楽しめます。ならば瀬戸内海産の鯛を使った料理に特化したお店にしようということになりました」と杉山さん。
他店でソムリエをしている人にコンサルという形で加わってもらい、ワインのセレクトはその人に依頼した。「たとえば、お醤油ベースの甘辛い味のアラの煮つけに合わせて選んでくださったのが、ベリーAという品種のブドウを使った甲州産の赤ワイン。魚料理には白ワインというイメージがありますが、アラ煮には確かにその赤ワインが合うんですよ。ほかにもアクアパッツァにはイタリアの白ワインとか、料理に合わせていろいろなワインを楽しんでいただけるように、ボトルだけでなくグラスワインも種類を多めに用意しています」
お店も会社経営もメンタルケアの仕事も、一つの思いに集約されて
オープン当初は「お店の再開を待っていた」という前のお店からの付き合いの方、大学時代のスキーサークルの仲間など杉山さんの知人が次々と訪れ、それと並行してSNSを通じて知ったという人や地元の方など、新規のお客様も少しずつ増えてきたと言う。
杉山さんは会社経営とは別に、精神対話士の資格をもち、メンタルケアの仕事にも携っている。
「インターネットでの美容石鹸の販売も、飲食を介した場づくりも、精神対話士の仕事も、私の中で一つに集約されているのは『皆さんの晴れやかな笑顔をつくるお手伝いがしたいとい』という思いです。当面はお店を軌道に乗せることに集中していますが、この先もうまくバランスをとりながらやっていけたらと思っています」
ご主人との出会いの場でもあったスキーサークルの活動に打ち込んだ4年間
前述したように、学生時代の杉山さんは、サークル活動でスキーに打ち込んでいた。
「当時はスキー全盛期で部員も多く、『体育会よりも体育会っぽい』と言われるくらい規律も厳しかったです。12月の半ばから東京を離れてスキー場に行き、試験前に慌ただしく帰京し、試験が終わった日の夜行で再びスキー場に戻り、3月までスキー場にいる、みたいな生活でした」
冬場のスキー費用を捻出するために、夏休みはアルバイトに明け暮れていたという。
「じつは当時から飲食店で働くのが好きで、朝6時のオープン前から午前中いっぱいマクドナルドで働き、その後は自宅を挟んで反対側にあるお蕎麦屋さんで夜まで働くみたいに、バイトを掛け持ちしていたこともあります。厨房の手伝いから洗い物から接客まで、なんでもやりましたね。当時は、将来自分が飲食店を開くことになるなんて思いもしなかったんですが……」
サークル活動については、「生涯の仲間ができた貴重な4年間だった」という杉山さん。3年後輩だったご主人の陽一さんもその一人で、杉山さんの卒業後にOB・OGと在校生との交流会を通じて親しくなり、陽一さんが富士銀行(現・みずほ銀行)に入行した年に結婚した。陽一さんは海外で働きたいという夢を叶え、2000年にニューヨーク支店勤務となり、杉山さんも2歳と0歳の2人の男の子を連れて渡米。その翌年の9月11日、ご主人は同時多発テロに巻き込まれて亡くなった。享年34歳。杉山さんは3人目のお子さんを妊娠中だった。
9・11から半年後に生まれた三男も今年20歳に
「その三男が生まれたのは、テロからちょうど半年後の02年3月11日です。その子も今年20歳になりました。先輩ママさんに言われた『子育てなんてあっという間よ』の言葉通り、本当にあっという間でしたね。ともかく無事に育ってくれてよかったです」と笑顔で言い切る杉山さん。確かに振り返ればあっという間だったかもしれないが、その過程でどれだけの悲しみを乗り越えてこられたのだろう。爽やかな笑顔の奥に、並大抵ではない芯の強さが潜んでいるのを感じた。
杉山さんが3人のお子さんを育てる上で心がけていたのは、「子どもと一緒に楽しく過ごすこと」「恨み事を言わないこと」、そして「子育てだけが生きがいにはならないようにすること」だった。
「子育てはノンストップですから、子どもたちが小さいうちは、かかり切りになるのも仕方がないけれど、子どもの成長とともに私は私で自分の道を見つけていきたい、そうじゃないと子どもたちにとっても重荷になると考えたんです」
手始めに、ご長男が小学校を卒業するタイミングで精神対話士の資格をとってメンタルケアの仕事に関わるようになり、その後、最初のお店をオープン、会社設立、「瀬戸神楽」のオープンと、確実にキャリアを積み上げてきた。
何があっても腐らずに思いを持ち続けていれば、チャンスは必ず訪れる
「主人は学生時代から、将来は海外で働きたいという目標をもち、ものすごく努力してその夢をつかみました。私は主人のように努力してきたわけじゃなく、ただ思いを持ち続けてきただけですが、絶望してしまえばどこまでも絶望的になっていく状況の中でも、なんとかなるんじゃないかと思って、本当になんとかなりました。もちろん、その時々で多くの方々に支えられてきたおかげでもありますが……」という杉山さんに、最後に現役の学生の皆さんに向けて、力強いメッセージをいただいた。
「今から思えば、学生時代のコミュニティって本当に限られた人間関係でした。仮に今、その中で閉塞感や生きづらさを感じていたとしても、一歩外に出れば人間関係もどんどん広がっていくし、広い世界が待っています。そして、5年後や10年後かもしれないけれど、必ず花開くチャンスは訪れます。それを信じて、何があっても腐らずに頑張ってほしいですね」
文:伊藤淳子
写真:チョウ ゲイイツ
<店舗情報>
●瀬戸神楽
新宿区神楽坂3丁目2-9 ナカノビル2F
神楽坂駅徒歩2分
▪️鯛料理とワインのお店
▪️名物の煮付けが絶品🐟
▪️ホッと心安らぐ鯛茶漬けが食べられるお店
【水〜土】(火曜日はディナーのみの営業になります。)
・ランチ 11:00〜15:00(L.O14:00)
・ディナー 17:00~23:00(L.O22:00)
【日•祝日】
・ランチ 11:00〜15:00(L.O14:00)
・ディナー 17:00〜22:00(L.O21:15)
※状況により閉店時間を早めたり、臨時休業させて頂く場合がございます。
日曜も営業しています。
定休日:月曜日
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<会社情報>
●株式会社ハレプロ(HAREPRO, lnc)
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