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えなどり

このところ、毎朝1本、エナジードリンクを飲んでいる。緑色の爪痕のやつとか、ブルーと銀のやつとか。

なぜかと言うと、自分を鼓舞しなければ1日の仕事をやっていけない気がするからだ。効率を求められているので、上司が想定した時間内に作業を終わらせなければならない。例えば、ホームページのブログを30分以内に書くとか、書類作成を10分以内に終わらせる、とか。それは上司が設定した時間で、まだやったことのない作業も含め、わたしには到底その時間内に終える自信がない。その時間内に終わらせなければ罰を与えられるとか、そんな話ではないのだが、確実に評価に反映されるだろう。評価されるということは、つまり「人間を見定められている」気持ちになってしまう。
たとえそれが、仕事の効率をアップするためだけの方策としても、だ。

そうなったら、人間どうするか。「気にしない」タイプと「やるしかない」と思うタイプに分かれる。いや、もっと色々な感じなんだろうけど、わたしにはその二択しかなかった。そして当然ながら、お給料をいただいているのだから「やるしかない」のだ。

そんなわけでカフェインにでも頼らなければ、乗り越えられないという気持ちになってしまった。24時間戦えますかと時任三郎がCMで白い歯を見せていた時代に逆戻りしたような気分である。もはやわたしはクリエイティブな人間として息をする時間はないのだ。そんな個性は二の次で、まずは誰がやってもできる仕事を誰がやっても同じように完了させることを求められている。

エナドリでも飲まなきゃやってられるか、という自暴自棄な気持ちで、ガブガブ飲んでチャッチャと仕事を進めた。しかし。思うようには進まなかった。ノルマと言うと申し訳ないが、今日の予定は完了しなかった。残り1時間半になった時、上司が悲しい目で「無理ですよね…あと1時間半で終わらせるのは…」と言った。やったことがない作業だから、やれるかもしれないし、やれないかもしれない。やり終えるまでやっていいならわたしは喜んでやるんだけれども、退勤時刻は固く守らなければならない。残業は許されていない。

わたしがやり終えなければ、上司の評価が下がる。それもわかっているので、頑張らねばならぬ。心のどこかで「これ無理ゲーじゃね?」という声と「最後まであきらめるな」という声が交錯して、キーと叫び出したいような焦りを感じつつ作業をした。でも間に合わなかった。工場じゃないから。

上司の名誉のために言っておくが、決してわたしに無理難題を押し付けているわけではない。上司の予想する作業時間は、彼が自分でやったらこれくらいでできるだろう、という目算である。本人自身もやったことのない作業だから、それに似た経験値を駆使してのことだろう。ただ、上司とわたしはスキルが全く違う。この歳までぼーっと生きていきたツケがこんなところに回ってきているのかもしれないな、と思う。「いやいや、チラシを5枚まとめて封入して宛名シールを貼る作業なんて、わたしがやってきた仕事とは全く別の畑だから、できないことを気にすることはない。一生懸命やれば、それでいいんだ」と思う自分と、「やっぱり望まれるようにやり終えないと、わたしの生きている価値がなくなってしまう」と思う自分がいる。大袈裟か。

エナドリを飲み続ける日々。これは、働く姿勢としては、末期である。やばい。明日は、エナドリを飲まずにやってみようと思う。

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