浴室リフォーム体験談とUX考察(?)

先日、浴室リフォームで業者を選んだり設備を選んだりする場面で、自分の選択基準が興味深かったのでメモしてみる。
日頃、UXデザインに関わっていて、作るほうの立場で云々かんぬんしているわけだが、導入する立場=顧客になって、学びました、という感じ。

出典:「人間中心設計入門編〜お客様と接する方々へ〜」HCD-Net,-2019

機能価値の勝ち

普段は、「スペックよりUX」なんて言ってるわけですよ、わたくし。だがしかし、浴室ユニットを選ぶときは「お掃除機能」でTOTO択一! 浴室床の自動洗浄も、うちに入るサイズで浴槽洗浄機能もTOTOしかない、ので、もうこれで決まりなわけだ。
”掃除は面倒だからしたくない”という究極の省力ニーズの勝ち。機能価値。あえて言えば自分で掃除しなくても浴室をきれいに保つというUXなわけだが。
導入した結果、とても満足している。自動洗浄バンザイ!

”あなたの暮らしたい生活はどんなものですか?”

リフォームするにはまず業者を選ばなければならない。リフォームなんて滅多にしないのに金額が張るし、自分は建築とか内装とか詳しくないので、結構怖い。新聞の折込でリフォームの広告は頻繁に入るけど、信じていいものかどうか。
で、HOME Proという紹介サイトを使った。
実はここ、以前も使ったことがある。使う前には紹介サイトそのものが怪しくないかも調べてみたりした。平日、しかるべきところに出向かなくても”調べられる”って、もう、インターネット様様だ。
その時は、和室の畳替えと押入れの改造を考えていた。3社に現地調査してもらった。このときの対応が三者三様で興味深かった。言われたことだけテキパキやるタイプ、言われたことに対してアドバイスしてくれるタイプ、言われたことの背景を聞くタイプ。その3番めのタイプの営業さんが「あなたの暮らしたい生活が第一です」といった意味のことを言い出して、ちょっとびっくりした。UXがリサーチか!?
結局、このときは各社のアドバイスを聞いて畳替えはする必要なしと判断し、リフォーム工事依頼は取り下げ、自分でできる範囲の押入れ改造をしたのだった。

再び、三者三様

浴室リフォームも3社に現地調査してもらった。”3社”というのは、HOME Pro側の使い方手引にあって、見積もりはそのくらいとっとけということなので。
その中の1社が、先のUXリサーチ営業さんだった。この時点でこの会社のポイントが上がる。
対抗馬はDX先進会社。現地調査に来て、その場で調査結果を会社に送り、リフォームの段取りなどの説明をしている間に見積もり結果が返ってきて、タブレットで提示。うぉーーーー!
もう一社は社長が現地調査、融通ききそうだが、見積もりはメーカー待ち、ということで自社ではできないらしい。ちょっと信頼度下がる。
結局、リフォームでの心配事に親身に対応してくれそうなUXリサーチ営業さんの会社にした。…DX先進会社のほうが総額は安かったのだが…。
このケースはコスパではなく”人”で選んだということになる。
しかし、意図したわけではないのに、現地調査に来た業者が浴室のときも三者三様とは!

機能価値の先の累積UXは?

浴室ユニットに関しては、予期的UXの段階で、タッチポイントは主にメーカーのホームページと、該当機能に関してネットに散らばっている各種口コミ情報だった。結果、機能価値の勝ち。
使い始めてからの一時的UX(操作簡単・きれいになってる)もエピソードUX(掃除しなくて楽!)も良好である。予期した通りの経験をしているわけだ。
今後、累積的UX(TOTOでよかった)になるには、まだもうちょっとなにか必要かも。というのも、他のメーカーが同じ機能をつけたら、そっちでもいいかもしれないからだ。

対応力の先の累積UXは?

業者選びに関しては、予期的UXの段階で、タッチポイントは紹介サイトの口コミ・メーカーのサイト、そして営業の人だった。口コミと営業の人の対応がずれていなかったのが大きい。対応力に期待したわけだ。
で、TOTOに決めていても、浴室ユニットの細かい仕様や付随して生じる内装工事なども相談して見積もり出してもらって決めていくことになる。このあたりの対応は予期したとおりの良好な体験だった。
リフォーム工事中の一時的UX(工事状況・仕上がり)も悪くなかった。なんか、営業さんと職工さんが仲いいのだ。
ただ、「決めなくてはいけないことが決めてなくて直前に選択依頼がくる」ということが起きて、この手の選択に慣れてない身にはちょっと辛かった。…あのシステマティックなDX先進会社だったら漏れはなかったかもしれないが。
工事後の手直しや補助金対応などもやってもらっているのでこのあたりが累積するエピソードかな。次に頼むときもこの業者にするかどうか、確率は高そうな気がする。

改めてサービスデザイン

「機能」という意味では、自社見積もりが出せるなどの会社としての機能が必要条件ではあった。無いとだめなので選定基準の一つではある。
その「機能」が突出していたDX先進会社より、多少割高でも相談しやすそうな会社を選んだというのはどういうことだろう。日々、製品提供による”お客様価値創造”を目指しているメーカーの中の人としては、立ち止まって考えなければならない。製品もタッチポイントもそれを運用する人もひっくるめて良くなくてはならないというサービスデザインでは当たり前の事柄に行き着くのだ。
頭でわかっていても、実感が足りなかった。noteにして言語化し、改めて捉え直した。一担当者としてどこまで手を伸ばせるかはわからないけれども。


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