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桜星人に乗っ取られてピンクに染まる

桜ってどうしてピンク色してるかわかる?
そりゃあ、あれだけたくさんの人に見つめられ、Amazing、Beautifulとつぶやかれ、パチパチシャッキッとシャッターを押されて一斉に注目されたら、血管が花びらに集中して、ピンク色に染まるわな。

と言ったのは、坂口安吾だか梶井基次郎だか。(ウソ)

桜さくらサクラSAKURA

テレビを点ければ日本中の桜の森の満開の下で誰も彼もがはしゃいでいる。
花見という宴から遠く離れては早ン十年。まだまだ夜は寒いのに元気だなみんな。トイレが近くなってきた今日このごろ、桜の下でのアルコールと仲良くなれる自信がありません。



藤野可織「私はさみしかった」(『ドレス』所収)に、カネコフというあだ名の女子高生が出てきます。
彼女は、新緑が嫌い、と言い切ります。

「新緑って、なんか厚かましい。油みたいにぎらぎらして、自分たち生きてますって感じで。なんでそこまでしてフレッシュなのを主張したいわけ?そもそも、なんでそうまでして生きていたいわけ?」

藤野可織「私はさみしかった」

「新緑ってエイリアンみたいじゃない?内側から木を食い尽くして、食い破って出てくるの、ぶわっと」

藤野可織「私はさみしかった」

「別の生命体になるんだよ。元の木は死んで、新緑の姿をしたエイリアンに乗っ取られるの」

藤野可織「私はさみしかった」
藤野可織「私はさみしかった」


インスタで、#桜、と打つと出るわ出るわ、様々な撮影テクニックを駆使した、ホント美しい桜の数々が。
みんな上手に撮るなぁ。一億総カメラマンです。かないません。

サムネールを埋め尽くしているのは桜だけじゃありません。
満面の笑みを浮かべ、私を見て、と自己主張をする晴れやかな女性たち(一部男性も)もずらりと並んでいます。
なんかすごいな。
この、美しすぎる美しさが、なんか怖い感じもしてきます。

桜はきれいです。咲いていれば、思わず立ち止まりしばし見上げてしまいます。
カメラロールには何枚も桜の写真がたまっているにもかかわらず、毎年撮ってしまいます。
でも、でも、そのたびに、桜星人に侵略されている気にもなったりして。


桜、と書いて承認欲求と読むのは、許されますか。

この数々の写真がクラウド上に舞い上がり、ここ数日見上げる雲は、うっすらピンク色に染まっているような、そんな錯覚にも陥ります。

坂口安吾「桜の森の満開の下」
梶井基次郎「桜の樹の下には」


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