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私の好きな映画のシーン(46)『地下鉄のザジ』

 突然『地下鉄のザジ』が観たくなりDVDを購入しました。
 何故、観たくなったのか…。
 あの、風変わりな女の子のニヤリとした表情に出会いたくなったからです。そして、セリフ。字幕や吹き替えでは分からぬ、フランス語の発話の面白さを楽しめる作品です。フランス語の読み書きは少しできますが、ヒアリングはかなり厳しく、時に何を言ったのか分からぬセリフがありますが、頑張って耳立てていると、スラップスティック・コメディーでありながらも、戦後の重々しさを超えようとする闊達な言葉のやり取りを楽しめます。
 このザジという女の子は、戦後を生き始める為の妖精のようにも思えます。
 映画の編集自体は、1960年ごろの映画技術の限界もあり、少し滑稽なのですが、それもまたこの作品の味わいとなっています。
 凝り固まった考えに毒され、凝り固まった自分を、凝り固まった慰め言葉で喜び、再び凝り固まった殻の中に閉じ籠ろうとする時代、紋切り型が溢れる時代に、ザジという名の自由闊達な女の子の姿は、現在でも生き生きと何かを伝えてくれます。悪態をつく、どこか背伸びしたザジは、今もどこかで走り回っているのでしょうね。中嶋雷太

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