ワードローブの森の中から(39)「オペラパンプス」
年に数度履くのがオペラパンプスです。かなり昔、アカデミー賞授賞式出席用に買い、グラミー賞授賞式にもこれを履き、新型コロ●前までは、年に一度か二度履く機会がありました。
ただ、残念ながら2019年以降履く機会がなく、ワードローブの靴コーナーで眠りについています。しかし、タキシードでしか履かないオペラパンプスは、他に履くシーンが見当たらないものですね。つまり、タキシードを着ない限りは、履く機会がありません。もちろん、ファッショニスタ的な視点から、デニムに合わせるとか考えられますが、そこまでして履く気にもなれません。ま、日本でタキシードを着る機会があまりにもないので仕方がないのですが…。
さて、このオペラパンプスですが、女性のドレスの裾に靴墨をつけないようエナメル皮で開発されたと言われていますが、もう少しこの靴の歴史を調べてみたいものです。元はそれが理由だったのかもしれませんが、タキシードにこのオペラパンプスを履くと全体のバランスが絶妙にマッチします。逆に紐靴だとなんとなくバランスが悪くなります。そうした美学的なこともあったのではないかと想像しています。
先日のnote「私の好きな映画のシーン」で、映画『月の輝く夜に』の話、ニューヨークのメトロポリタン・オペラに行く未亡人のロレッタ・カストリーニ(シェール)と婚約者の弟ロニー(ニコラス・ケイジ)のシーンを書きました。いつもは汗臭いロニーですが、最後のデートとしてオペラにロレッタを誘ったロニーは、見事にオペラ観劇用のタキシード姿で、足元はもちろんオペラパンプスで決めていました。イタリア系アメリカ人の血に流れるオペラの伝統がふと垣間見えたシーンでした。
京都の日本文化どっぷりの世界で生まれ育った私は、ようやくタキシード、そしてオペラパンプスに慣れてきたところでしょうか。
2023年も、オペラパンプスはワードローブの靴コーナーに眠っています。日本でもオペラを観に行けば良いのですが、なかなかオペラを観に行きたくなるような環境(オペラ前のお店、オペラに集う観客の雰囲気、オペラ後のお店等)にはないので、残念です。
ちなみに、話は変わりますが、ミュンヘンのオペラ座の向かいにあるビール店で春先に食べる白アスパラガスは最高に美味しいですよ。関係ないけど。中嶋雷太