『響け!ユーフォニアム』そして『リズと青い鳥』自分が置いてきてしまった青春時代。
世間からは遅ればせながら、『響け!ユーフォニアム』にドハマりしている。
きっかけはまたも星野源のオールナイトニッポン(それしかないんかい)
シーズン3の冒頭で「恋」が流れて感動したというエピソードを話されていて、その時は(あー、なんかそんなアニメあったような。。)と思い、いつか観てみようかな、くらいの気持ちで心の片隅に置いておいた。
そして数週間前、ふとエアポケットのような時間ができた時に、シーズン1の1話を観た瞬間から、睡眠時間(命)を削っての『響け!ユーフォニアム』ブームが始まってしまった。
何が自分をここまで惹きつけたのだろうと考えると、それは「漠然とした高校生活への憧れ」なのかなと思っていた。自分は高校時代いわゆる「帰宅部」で、部活動には参加せず、放課後はすぐに帰宅してコンビニでバイトをする生活だった。部活動に興味が無かったわけではない。
ただ自分が入ろうとしていた陸上部が思いがけず強豪で、かつ自分自身が特別進学クラスに属していた。
こうして2つの大きな逃げ道ができてしまったことで、自分が帰宅部であることへの正当性が作られてしまった。
今となっては後悔をしている。どんなにきつくても部活をやるべきだった。だってやりたかったんだから。後悔しすぎて大学で陸上部に入ってしまったくらい。だったら高校もやっておくべきだった。あの、無限に体力が湧いてくる10代後半を、自分は無駄遣いしてしまったような気がしている。いまだに。
そんな高校生活を送ってきた自分にとって『響け!ユーフォニアム』は強烈すぎた。
主人公・黄前久美子と高坂麗奈の関係性はあまりにも神々しすぎるし、コンクール全国金賞を目指す吹奏楽部員たちの頑張りや本番の演奏は涙なしには見られない。オーディションの緊張感や実力主義の残酷さもまた、本気で部活動に打ち込んできた人でなければ分からないリアルさなんだろうと思う。
基本的には観ながらずっと泣いてるか血を吐いていた。
そしてこの作品のいいところは「進級する」ということ。何を当たり前のことを言っているんだと突っ込まれそうだが、久美子たちは進級する。
シーズン1、シーズン2で1年生だった久美子たちは、そのあとのスピンオフ『リズと青い鳥』『誓いのフィナーレ』『アンサンブルコンテスト』では2年生だし、シーズン3では最上級の3年生になる。
当たり前だがシーズン1,2の3年生たちは卒業し、2年生だった先輩たちは幹部になり、3年生になり、そして同じように卒業する。代わりに新しい1年生が入学し、吹奏楽部に入部する。
1年ごとに大きく体制が変わる。これこそが「高校生」であることを強く実感するポイントだと思う。
連続性があるようで無い。1年ごとに全く違うチームになる。美知恵先生が言うように、それはとても素敵なことで、そしてそれを本当に見事に描き切っているのが『響け!』なんだと思っている。
そんなわけで、シーズン1から始まり、スピンオフも含めて血を吐きながら一気に駆け抜けてきた。そしてようやくシーズン3に追いつき、もう少しで最終回というところまできた。
前置きが長くなってしまったが、今回メインで触れたいのは、本編ではなく、スピンオフ映画の『リズと青い鳥』だ。
時系列で言うと、久美子たちが2年生。シーズン1,2の時の2年生が3年生になり、最後のコンクールに臨む前のタイミングだ。
トランペットの優子が部長になり、俺たちの夏紀先輩が副部長になった。(好き)
しかし本作の主役は、オーボエの鎧塚みぞれとフルートの笠木希美の二人。
この二人は、シーズン2の前半の主役でもあった。
希美は1年生の時に、当時の(やる気のない)3年生に反発して吹奏楽部を辞めてしまう。しかし、中学からの友人である鎧塚みぞれには何も相談は無かった。
みぞれにとって、希美は唯一の友人であり、希望であり、支えだった。
彼女がいたから吹奏楽部をはじめ、彼女がいたから日々を生きることができた。大げさでなくそう思うほどの存在が、何も言わずに自分の前から消えてしまった。
このことがトラウマとなり、みぞれは希美と会うことができなくなってしまった。
これがシーズン2のはじまり。
吹奏楽への想いを断ち切れない希美は復帰を画策するが、あすか先輩をはじめ、ことの顛末を知るメンバーはこれを拒む。なぜなら、希美が戻ってくると、みぞれが演奏できなくなってしまうから。ただ一人のオーボエを、コンクール前に失うわけにはいかないから。
しかし結局二人は再会をしてしまう。でも希美の想いを知ったみぞれの憂いは無くなり、希美は復帰し、二人も元の仲に戻ったのだった。
(個人的に、この場面での希美のリアクションはあまり気持ちよくなかった。え、本当にみぞれのこと好きなの?なんか軽くない?って。)
またまた前置きが長くなってしまった。
『リズと青い鳥』
みぞれと希美が高校3年生となり迎える吹奏楽コンクール。
その自由曲は「リズと青い鳥」
同名の童話をもとに作られた楽曲だ。
みぞれがリズで、希美が青い鳥。
二人はお互いに、なんとなく、でも確信的にそう思っていた。
いつかいなくなってしまう青い鳥、それを放したくないリズ。
でもリズは最後に、青い鳥と別れる決断をする。
だからみぞれにはリズの気持ちが分からない。分かるわけがない。だって希美がいなくなったら私は…。
その迷いは演奏にも影響し、二人が担当する第3楽章のオーボエとフルートの掛け合いも嚙み合わなかった。
ある日トレーナーの新山先生に相談をしたみぞれは、あることに気づき、そして迷いから解放される。
青い鳥は、私だった。
そして、音大への進学を薦められたみぞれに対抗心を抱き、自分も音大に行くと言った希美。
次第にみぞれに対して距離を置くようになる希美。
でも本当に自分は音大に行きたいのか。
気づかないようにしていたみぞれとの実力差。
自分が本当にやりたいことって何だろう。
もしかしたら、リズは私なのかもしれない。
つらつら書いてしまったが、とにかく最高だった。
えなにこの名作。
なんで今まで知らずにいたの?俺のバカ!!!
本編とは少し違う作画もいいし、牛尾憲輔の音楽もいい。
全体が醸し出す世界観が、とてもいい。
鎧塚先輩役の種崎敦美さんも、希美役の東山奈央さんも最高に良くて、あと俺たちの夏紀先輩(藤村鼓乃美さん)も相変わらず好き。(一番好き)
自分が青い鳥だったと気付いた後のみぞれの演奏は、迷いが無く伸びやかで、本当に美しかった。
そして同時に、自分がリズだったと気付いた希美の涙も印象的だった。
先ほども触れたけれど、なんとなく希美のリアクションやセリフには、終始ハマらない自分がいて、どちらかというとみぞれに感情を入れ込んでしまい、だからこそみぞれの一方通行感が見ていて辛かった。
シーズン2の時もそう。本作でも、最後まで少しだけモヤっとした思いが残ってしまった。
でも1回観終えたあと、このモヤモヤはなんだろうと、改めて希美の言動を思い返した時に、気づいてしまった。
希美こそがリアルな高校生なんだと。
そして自分も希美のような人間だったのだと。
どこか打算的で、周りの目を気にして、自分の立ち位置を考えて、あくまでも軽やかに振舞って。でも本当は悔しくて、勝ちたくて。
そして本当は大好きだとちゃんと伝えたくて。
高校生にとっての“高校“は、世界のすべてだった。
そう考えると一気に希美に感情移入してしまい、2回目は違う感情で泣いた。(2回も見たんかい)
あぁクソ、二人とも尊すぎる。
観終えた後の持って行き場のない感情。「あの時頑張っていれば感じることができたはずなのに、自ら逃してしまった」感情。
置いてきてしまったものは、もう取りに帰ることはできないんだよな。
『響け!』に対して感じていた思いは、「漠然とした高校生活への憧れ」ではなく、「後悔」とか「喪失感」だったんだ。
誰しもが経験できないことだからこそ、こんなにも尊いんだ。
書き散らしたら自分の思いが成仏できた気がするので、『響け!ユーフォニアム』最終楽章、しっかりと見届けましょうかね。
余談だが、この『リズと青い鳥』を挟むような形の時系列にある『誓いのフィナーレ』ではコンクールでの演奏シーンも描かれている。
そしてとてもいいなと思ったのが、この『誓いの~』では、一切みぞれと希美には触れていないのだ。
ただただ、オーボエとフルートの奏者であるだけ。(確か声の出演も無かった気がする)
この潔さとさりげなさが『響け!ユーフォニアム』シリーズの魅力なのかもしれない。(逆に『リズ~』もよく見ると奏がいるし、『誓い~』のエンディングではみぞれと梨々花の掛け合いも見られる。最高)
ちなみにサントラも最高。
第3楽章は絶対に聴いてくれよな!
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