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拝啓 鬱人間のあなたへ
まさか自分が、鬱病になるとは思っていなかった。
学校でも社会でも当たり障りなく振る舞い、
ほどよい距離感で人と接し、大きな問題もなく今まで生きてこられたはずでした。
特に生きづらいと感じたこともなかったでしょう。
まさに平凡な人生でした。
良き師、友人らにも恵まれて、人生は穏やかに流れていくものだと信じていました。
当時のあなたは、必死に走り続けていました。
寝る間を惜しんで働き、何者かになろうとしていました。努力は必ず報われると信じ、歯を食いしばり、無理を重ね、それでも前へ進もうとしていました。
でも、そんなことはなかったです。
あなたは一番大切なものを失いました。
心と身体の健康、その両方を。
替えのきかない人間になろうとしたあなたを、
会社は書類の手続きを経て、手放しました。
すぐに新しい誰かが、 あなたのいた場所に座り、
何事もなかったかのように業務は引き継がれたことでしょう。あなたはパーツの一部でした。
そして今、わたしは布団の中にいます。
何もせず、息をしているだけのわたし。
動物と植物の中間のような生き物。
未来を考えることは、
ただただ恐ろしいことでしかありません。
あなたは、わたしを許すことができません。
努力を続けたことも、壊れるまで無理をしたことも、それを今になって悔やんでいることも。
結局のところ、わたしはあなたの敵なのです。
それでも、あなたへ。
どうか、ほんの少しだけでも、
自分を許すことができますように。
また、わたしと同じように自分を許せない人も、
自分を許せますように。
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