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鬱になんてなりたくなかった

「鬱は誰しもがなる病気ですよ」

誰しもが一度は聞いたことのある言葉だと思う。
そんな言葉を聞くたびに、わたしは歯を食いしばる。

そうじゃない。
わたしが必要としているのは、
そんな当たり障りのない優しい言葉じゃない。

わたしは、鬱になりたくなかった。
自分がなるなんて、思っていなかった。
どこか遠い国の、自分とは離れた世界の出来事だと思っていた。

他人事だと思っていたものが、
ある時、自分の人生を塗りつぶしに来た。

最初は些細なことだった。
体調不良が続いていた、仕事しかできなくなっていた、休日は何も出来なくなっていた。

気のせいだと思っていたし、そう思いたかった。

ある日、朝礼のzoomミーティングで
言葉が出なくなり、涙が溢れ出し、
その後は呆然となって枯れたようになった。

精神科へ初めて行って、鬱病の診断をうけた。
やっぱりそうかと思う一方で、
そんなはずはないとも思っていた。

休職届を出した後に人と会わなくなってから、
出来ないことがじわじわと増えていった。

眠れない。食べられない。
風呂に入れない。動けない。
外に出られない。電車に乗れない。
声が出ない。人と話せない。
文字や数字が読めない。

昨日まで当たり前にできていたはずのことが、
なぜかできない。わけがわからない。

焦る。早く正常にならなければ。

どうやったら治るのか、そればかりを考える。

でも、焦るほどに、身体は強張り動かなくなる。
回復を急ぐほどに、心はなぜか重くなる。

なりたくなかったのに。ならないと思っていた。

「鬱は誰しもがなる病気ですよ」

そんなこと、一生知りたくなかった。

今日も厚い雲がかかっている

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