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令和の前田慶次?

「君は、前田慶次みたいなオンナや」

私をお姫様のように溺愛していたオトコが、愛おしそうな表情を浮かべて言った言葉を、今でも時々思い出すんだ。


前田慶次みたいなオンナだと言われたのは今から4年前。「前田慶次?どういうこと?」と即座に聞き返すと、オトコはまた嬉しそうににっこりと微笑んで「傾奇者(かぶきもの)ってこと」と応えた。

かぶき者という言葉を初めて耳にしてから、前田慶次という歴史上の人物を妙に意識してしまったことをよく覚えている。

前田慶次とは、戦国随一の傾奇者として知られる武士。かの有名な豊臣秀吉に「生涯傾奇ご免」の許しを得たとかなんとかで。調べたところで当時は大して理解できなかったのだけど、戦国時代のゲームやドラマでは、いつも凄まじくイケメンに描かれるオトコだと言うことだけは知っていた。



「オンナ前田慶次」

そんな言葉をふと思い出したのは、終わった恋の話を書きたくなったからだ。

noteで「オンナ35歳の恋愛観。」や「傲慢と善良(読書感想文)」を書いていた時、私は数年ぶりに、心が焼ける恋をしていた。

心が焼ける恋だなんて良いように言ってみたが、実際は若いオトコに現を抜かしただけ。

世にあふれる、都合のいい男女関係の話だ。

そんなどうしようもない関係を続けていた時に、辻村深月さん作の傲慢と善良を読み終え、一時は「私は恋をしているのだ」と自己肯定出来たのだが、数週間後には泥水をすするような思いで、その関係にしがみついていた。

若いオトコに抱いた恋心は、いつしか執着に変わり、執着は最後には殺意にまで変わってしまうほどだったのに、今の私は「そんなオトコもいたね」と笑ってしまうほどに微塵も気持ちがないのは、大切な感覚を思い出したからだ。

- 生物として、メスは勇ましい。

メスのカマキリは交尾中にオスのカマキリを食べてしまうし、アンコウなんて交尾しようとくっついて来たオスを身体に吸収してしまう。どんな動物だって自らの遺伝子を残すために、オスは必死でメスに求愛しているというのに…

なぜヒト科のメスの私は、オスに求愛してしまっていたのだろう。そんなことを思った途端、全てが馬鹿馬鹿しくなってしまった。決して、オンナにも権利がある!みたいなフェミニスト的なことを言ってる訳ではなく、人としての「自尊心」を思い出しただけなんだ。

それに、男女関わらず、人は尊い。

皆それぞれに心を持ち、人生の中で価値観を形成し、自分の美学みたいなものを信じ生きている。そんな存在を、”皆尊い”と思うから私は私なりの誠意を持って接している。

その誠意が時として、破天荒で異端であると捉えられることや、義を重んじる者と捉えられたり、美学のためなら命までも賭ける勢いで生きている私に危うさを感じる者もいた。

しかし、私はそれこそが女前だと思っている。そんな自分の強さを思い出した時、私はしがみつくことを辞めて、選ぶ立場に返り咲いた。

「欲しくなったら言ってね」

そう言って坊やに最後に微笑んだのは、自分の強さを思い出していたから。もう選ぶことのないオトコに見せた最後の優しさだった。

どんなオンナも、
センスの悪いオトコに割く時間などない。


少女のように無邪気に、母のように包み込み、そして、まるで娼婦のように妖艶なオンナを欲しがるセンスの良いオトコは星の数ほどいる。

そして、そんな優秀なオトコは決まって、よく稼ぎ、多くの他者に慕われ、自分のオンナをまるでお姫様のように溺愛する。

坊やと過したほんの僅かな時間は、いいリハビリになった。感覚を思い出したからなのか、坊やのおかげなのか、私今とても幸せなの。


ねぇ、坊や。
オンナはなにゆえ強いと思う?

もともと強いからよ。

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