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8月は、砂浜に描いた絵のように消えていった…夏の思ひで、映画編ー『メイド・イン・バングラデシュ』『メタモルフォーゼの縁側』『ぼくの歌が聴こえたら』『スープとイデオロギー』『おばけずかん』『戦争と女の顔』『Plan75』『犬王』

前の投稿から1ヶ月…。いやーもうコロナとか色々あってさーあたいは何もないけど、シフトの代打代打で、朝から働いて家に帰ってご飯食べてTwitterみたらもう寝てしまう。しかし夜中に起きてしまう。
その繰り返しで時が滝のようにダーっと流れていってしまった。その間、映画を見たり、本を読んだり、もちろん野球も見ていましたが、疲れてしまって文を考えて書くことができませんでした…

駆け足ですが、観た映画の話など。

『メイド・イン・バングラデシュ』
 わたしたちが安価に利用しているファストファッションは、いったいどこで作られているのか?世界の縫製工場と称されその規模を誇るバングラデシュ。しかしその労働実態は、低賃金、長時間、そして若い女性からの搾取で成り立っている。
 かつての日本にも「女工」という言葉があった。貧しい小作農家の娘たちが製糸工場で絹糸を作る。身売り同然で働かされていた。『あゝ野麦峠』や『女工哀史』と聞けば思い出す人もいるだろうか。今や、その女工たちが働いていた冨岡製糸場は「世界遺産」に指定されているが、日本の製糸業、縫製業は、衰退し、わたしたちの着る物のほとんどは海外に委ねられている。

といって、わたしは、やっぱり何も知らず、ただ安い服を便利に使い捨てていただけだった。バングラディシュの女たちが必死の思いで作る服を。
しかしまた、搾取を批判して「服を買うな」とは映画は言わない。
彼女らは、その仕事で生きているのだ。まともな労働環境と人間としての扱いを求めて、彼女らは学び、立ち上がる。
一人の若い女性が、仲間とともに労働組合を作るまでーの物語である。

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『メタモルフォーゼの縁側』
 75歳の老女と17歳の少女が出会う。彼女らを繋いだものは「BL」ボーイズラブと呼ばれる少女マンガだった…。
 誰も知らないから言うけど、わたしは、1990年代〜2000年にかけて、多分日本でただ一人の「やおいマンガ評論家」でした。「やおい」とはBLの前哨「ジュネ」「耽美」とも呼ばれていた。コミケの歴史を辿れば1978年まで遡るのだからはしょりますけど。とにかく一生懸命、新聞雑誌、ムックなどで紹介し、評論してたんです。

 しかし、その野望も虚しく2000年に仕事を失ったきり、わたしの言葉も消えていきました。以降、多くの優れたやおい系BL論者、論考、評論作品が生まれてますので、そちらを参照していただきたいですが。
 ともかく「BL」とは、わたしの人生、アイデンティティの根幹に関わるテーマなわけです。切っても切れないといいますか。そんな「BL」に出会った二人の「少女」の物語を、あたいが見なくて、一体誰が見るのか!?
 
 30年40年前とは格段に一般化されたとはいえ、表立って堂々とは「わたしBL好きなの」とは未だに言えないらしい「BLマンガ」を「大好きです!」と話すだけで、嬉しくてたまらない。75歳の雪さんと17歳のうららちゃん。二人が交わす「マンガの話」、好きでたまらない雪さんの心。
あたいは泣いた。泣いて泣いて涙が止まらず。隣で見ていた娘(現役少女マンガ家)は「お母さん泣きすぎだよ」と呆れていた。

 だってだってだって、わかるんだもん。75歳の雪さんの来た道も、17歳のうららちゃんのたった今の気持ちも、どっちもわかるんだもん。
60歳を目の前にした「元祖オタク少女」なんだからさ〜〜〜😭

全てのマンガを愛する少女たちへ 「それでもいいんだよ」と肯定する映画だった。

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『ぼくの歌が聞こえたら』
なんか疲れきっていた時に 時間が合うからと飛び込みで入った。韓国アイドル映画。優れた才能を持つ美青年チフン、しかしパニック障害の症状があり、人前で歌うことができない。そんな彼を見出す、うらぶれた音楽プロヂューサー、ミンス。二人の旅は韓国中を回り、ロードムービーでもあり音楽映画でもあり、観光と韓国の食を伝える美味しい映画でもあった。
 あたいは全然無知なんですが、EXOのチョンヨルくんてすごい有名なアイドルなんだってね。って納得する徹頭徹尾エンタメに徹しながら、ストーリーも映像も安っぽさも安易さもない、隙のない出来上がり。
とにかく楽しかった!

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『スープとイデオロギー』
『かぞくのくに』で北朝鮮に「帰国」させられた兄と日本に住む家族の葛藤と愛情を描いたヤン・ヨンヒ監督。在日朝鮮人として日本で生まれ、15歳の時に済洲島(チェジュ)へ疎開していた母ーオモニの記憶と大阪での暮らしの物語。
 おそらくは日本ではほぼ知られていない、わたしも全く知らなかった「済洲4.3事件」1948年、共産主義運動を弾圧する韓国警察により、無差別に島民を虐殺、その数3万人以上とされている。
 「なぜ自分の親は北朝鮮に固執するのか_」とずっと葛藤し苦しんでもきたヤン監督は、その理由を、母の死の間際に知ることになる。映画のクライマックス、その個人の道筋は、まさしくも近代「日本」が、戦争をし続けてきた、「朝鮮半島」へ介入してきた、歴史的な現実の道筋だった。
 何もかもが一切合切、無関係ではない。わたしとオモニの生きてきた世界は、濃密につながっている。ニンニク40個入りのスープの味のように。


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シアターキノでのティーチイン ヤン監督話たい気持ちが溢れていました。

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『ゴースト・ブック おばけずかん』
山崎貴監督の映画は、『ジョブナイル』(2000 )『リターナー』(2002)しか見ていない。もはや22年前、まだ小学生の娘たちと見にいった夏休み映画(冬休みだったかもしれない)を22年後、大人になった娘と観た。
 特撮映画が大好きで、よく観ますが、『妖怪大戦争』(三池崇史監督)で主人公だった神木くん当時10歳くらいだったはず…この度の映画では、小学生の主人公たちを操る魔法使いの役でした。
 同じ「妖怪映画」でも三池さんとは大違いのお行儀の良い山崎監督ですが、テクニックは頭抜けてます。星野源の主題歌も良かった。映画館にも子どもたちがいっぱい。誰一人も騒いだり動き回ることもなく、だからといって大人しくしてるわけでもなく、画面にかぶりつきでガチ観していたよ。楽しい夏休みの思い出になったことでしょう。

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『戦争と女の顔』
第二次世界大戦、独ソ戦に参加した女性兵士の言葉を集めた『戦争は女の顔をしていない』にインスパイアされた監督は、カンテミール・バラーゴフ1991年生まれ。娘と同年代の青年だ。短い文章では、書き切れない。
「若い女性が戦争に参加し、戦争の終わった後に女として生きる」とは如何なることかと。男性監督が想像の限り誠実を尽くそうとした映画ー

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『Plan75』早川千絵監督
シアターキノで鑑賞ののち、監督のティーチイン。観客の感想や問いに一つ一つ丁寧に誠実に答える早川さんに感動しつつ、何事もそらさずに受け止めてしまう人は大変だなとも思う。でもだからこそ「映画」を撮るのかとも。会場では時間切れだったが、わたしにしては珍しくサイン会の最後尾で粘り、誰も後ろにいないことを確かめて、お話させてもらった。

 75歳で生き死にを選択できる「Plan」を政府がお届けします。
わたしは普段、65歳以上の独居で、食事の支度が困難な高齢者のお弁当を作っている。映画の中で(磯村勇斗くん演じる)ヒロムたちが従事している仕事といわば真逆、「高齢者の命を守る」仕事をしている。
のだったなあと、映画によって改めて知らしめられたと。早川監督は、淡々と静かに一人の観客の言葉を受け止めてくれていた。

 コロナのせいもあるにせよ。年々お弁当の需要は増え続けている。手作りでいける限界も感じている。支える方も50代60代〜70代にも突入してきている。70歳が作った弁当を75歳が食べていたりするのだ。
 映画の中の78歳で仕事を失い援助もなく放り出されるミチ(倍賞千恵子)の暮らしも様子も態度も、リアルすぎて、胸がざわざわし続けていた。今はお弁当も届けられるけれど、いつ映画の中の世界へと傾いていくのか。
 というより、現実は、映画の中に限りなく近い。高齢者に限らず、あるべき援助を受けられず、誰にも知られぬまま亡くなっていく人は大勢いる。
わたしたちが見て見ぬふり「ないこと」にしているだけだ。映画の本筋は、多分、そこにあるし、「ないこと」にされること自体が、スクリーンには、映し出されてもいた。

写真下手すぎ。シアターキノ ティーチイン 早川監督と映画館主

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「犬王」アニメの力が存分に発揮された音楽映画でした。

なんか抜けてる気がするけど。本日は、これまで。









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