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さようなら。ファイターズと札幌ドームへ。長い長い思い出話をしてみようーその5 2009/10/21 ターメル・スレッジの逆転満塁ホームランは、どこに落ちたかわからなかったけれど…喜びは爆発する。
打球が飛んだ方向はわかったが、行き先が見えない。
「どこ?」
「どこに落ちた?」
「入った?入った?入った??」
グラウンドに目を移すと、審判がぐるぐる手を回し、ベンチから選手が飛び出している。
ダイアモンドを堪えきれないように咆哮しながら、
拳を握り、腕を胸の前で何度も何度も振りおろしながら。
ターメル・スレッジが、駆けていく。
2009年、パ・リーグクライマックスシリーズ 第1戦。
北海道日本ハムファイターズ対東北楽天ゴールデンイーグルス
第一ステージを勝ち抜いた、故野村克也監督率いる楽天イーグルスには、勢いがあり、この第1戦に勝てば、イーグルスが流れに乗り切れる、その寸前に、ターメル・スレッジの一撃が、流れをぶった斬る。
わたしは、ライトの外野席、ビジターエリアの隣りにいた。札幌ドームは、熱狂で興奮しきっていて、息が苦しいほどだった。なにしろ9回裏が始まった時点で4対8で負けていたんだから…そっから逆転サヨナラ、したんだから。
一緒に観戦していたお友達とわーわーきゃーきゃー、喜んでいた。
2008年に就任した梨田昌孝監督、2年目にしてリーグ優勝を成し遂げる。「絶対エース」に駆け上がったダルビッシュ有を擁し、この年だけは近鉄バファローズ時代に梨田さんたちが呼ばれていた「いてまえ打線」を継承できたのか、活発な打線。ショート金子誠が、恐怖の9番バッターと化し、2塁打の連続試合記録を作り、3割を打ったりした。
思い出といえば、リーグ優勝までマジック1になり、急いでチケットを買って札幌ドームに出かけて行ったら、負けてしまった。
あたしは知っていた。明日、勝つんだよね…そうなんだよね…。
次の日は。仕事で行けなかった。
そして、ファイターズは、やっぱり勝って、優勝した。
2007年にファンクラブ会員になり、15年間でファイターズは、2007、2009、2012、2016と4回もリーグ優勝しているが、ついに一度も優勝決定の現場には遭遇できなかった。
だけど、あたしは、ターメル・スレッジの逆転満塁ホームラン
見たんだもんね!見たんだもんね!
と、自慢することはできる。いつまでも。いつまでも。
その年の日本シリーズは、読売ジャイアンツに負けた。
東京ドームの第5戦。武田久が阿部慎之助に打たれたサヨナラホームランもまた。記憶から消し去りたいが、脳に張り付いているのは、
打たれた瞬間に、バチンと消した。
真っ黒な、未だブラウン管だったテレビ画面。
真っ黒ー奈落に落ちた、負けチームのファンの気持ち、そのものだった。
歓喜と喪失感、悲哀…
プロ野球、ただの大衆娯楽、スポーツ、ゲームなのに。こんなに一喜一憂しちゃって。
変なのって思うけど。だから昭和の昔から、言葉がある。
たかが野球、されど野球。
ちょっと笑いたくなるような、人の暮らしの、切なさとともに、ある。