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不穏なことが多いけど。『思いわずらうことなく愉しく生きよ』

江國香織『思いわずらうことなく愉しく生きよ』を読む。

麻子、治子、育子の三姉妹の話。麻子は夫と二人暮らしの専業主婦。夫のDVに悩まされている。治子は仕事にも恋にも全力を尽くす外資系企業勤務。三女の育子は「人はなんのために生きていくのか」といったことに思索をめぐらす。恋や結婚に余計な幻想を抱かない。

三者三様の問題を抱えている姉妹だが、彼女たちの一体感は美しいなぁと思った。麻子が夫に殴られたと聞けば実家にかくまい、治子が恋人と別れたと聞けばバーでしっぽり話しこむ。

麻子のDV夫・邦一がとにかく狂っていて、その邦一に翻弄させられる麻子がかわいそう。しかし姉妹が麻子を邦一から守ろうとすることで、いっそう繋がりが強固なものになっていくように思えた。

全身全霊で人生に立ち向かう彼女たち。困ったことがあれば姉妹が支えてくれる。不穏なことが多いけど、なんだかその姿にとても勇気づけられるし、人生は愉しく生きたいよなぁと思った。

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