「ずっと好きでした」
甘酸っぱい思い出のかけら。
*
「ずっと好きでした」
卒業アルバムに寄せ書きをお願いしたAクンに、そう書かれた。ペンを置き、閉じることなく返され目に飛び込んでくる。
これって……
中学生、初めての経験で混乱する。気まずさや小っ恥ずかしさ、この上なし。覚えているのはリアクションに困ったことくらい。
だけど冷静さを取り戻し、解けた謎がある。
ひょっとしたら、Aクンがいつもわたしの笑顔を見たがった理由は”そこ”にあったのかもしれない。
席替えのたびに隣同士になり、なんとなく視線を感じていた。気付いてそちらを向けば「笑って」とお願いされる。
変な奴。
と思っても、普段人前で見せないニコニコ顔をされればこちらも負ける。照れ笑う。そうするとめちゃくちゃ嬉しそうにしていた。
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笑顔だけで好きになるなんて、あの頃の特権だ。大人になると色々見えすぎる、求めてしまう。
戻れないなあ。
憧れの街への引っ越し資金とさせていただきます^^