川の字になって見た『古畑任三郎』
子供の頃、テレビの"チャンネル権"は母にあった。90年代のはなし。
朝は『おはよう日本』を見て学校に行き、帰ってきてからも基本は報道系。子供向け番組も、バラエティも禁止だった。
もちろんドラマだって母の許可が必要。ラブシーンがあるようなもの、くだらないとみなされたものは見ることができない。
だけど、例外もあった。
それが『古畑任三郎』。
母と2歳下の妹とわたし。全員が楽しめる数少ないドラマ。わたしも妹も、まだピカピカの小学生だった。
女3人就寝体制を整え、布団の中から放映時間を待つ水曜の夜。冒頭の、田村正和さん演じる古畑警部補がひとり語るシーン。そこでもうみんな釘付け。
古畑任三郎というあの強烈なキャラクター、毎回登場する豪華なゲスト、脇を固める名優。そこには日本のドラマらしくないユーモアが溢れ、それでいて緻密な脚本……。魅力をあげればキリがない。
母と妹と笑い合った、数少ない思い出。だからこそ色濃い。
周りにいる人たちの楽しそうな姿を見ることで自分も満たされる。この事実を知ったのも、もしかして、古畑がきっかけだったのかもしれない。日頃文句ばかりこぼす母も、小生意気でどこか不貞腐れがちな妹も、水曜の夜はころころと笑った。
こういうシーンが一つでも手繰り寄せることができたなら、他にあった嫌な出来事は流せるもんだ。
わたし以上に古畑任三郎を愛してやまない妹。毎回ダビングし、擦り切れるほど鑑賞していた妹。
時代が終わった
昨夜母との3人のグループチャットに届いたメッセージ。
鑑賞会しよう、3人で。
約束した。
憧れの街への引っ越し資金とさせていただきます^^