僕は今まで、他人を必要以上に自分の内側に入れてこなかったように思う。 今までの人生の中で、人生を恙なく生きるには精神の安定が最上であると直感的に感じていたのかもしれない。 精神を安定に保つには自分だけで完結するのが一番最短で効果のある方法だ。 自分だけなら機嫌を取るのも比較的容易だし、自分の機嫌が直ればそれで終わりだからだ。 思い返してみれば過去の人間関係、特に男女関係での失敗は執着の強さにあった気がする。 要は人に対して踏み込む歩幅というか、飛び込み方が下手くそだったのだ
ふと名前を呼ばれて、自分がいる場所に気がつく。 白い、そう形容するしかない大きな廊下。 天井は高く、壁にも何も装飾は無い。ただ無感動に、廊下が前に続いている。 周りを見渡してみるが、誰もいない。呼ばれた声は何だったのだろう。 何かがあるような気がして、前に歩き出す。 *** どれくらい進んだろうか。 廊下の壁に絵が掛けられている。 幼児と少年の間のような年齢の男女の子供がどこかの部屋に二人並んで座っている。 写真であるようにも見えるし、絵画と言われればそう見えるような