SUMMER SONIC 2022 1日目 見たライブの雑感と諸々
曇り時々晴れ、とライブ鑑賞日和の土曜日。銭湯で完全に疲れが取れたので意気揚々とマリンスタジアムへ向かいました。
12:30~ BEABADOOBEE MARINE STAGE
Novelbright、Mrs. Green Appleといったジャパニーズポップス最前線のアーティストがオープニングを飾ったマリンステージであったが、打って変わってDrty Hitにおけるインディーロック筆頭株BEABADOOBEEが登場。ベッドルームの空気を纏った音源がロックリスナーに見つかり、SNSを通して世界中の若者に伝播し、パンデミックの荒波の中なんとか日本まで辿り着くというバックグラウンドだけで何か熱いものがこみ上げる。
新譜「Zootopia」ではインディーフォークに舵を切ったが今回のライブでは「Worth It」「Together」「Care」らストレートなオルタナ/グランジの血筋を感じる曲でスタート。決してスタジアムロック的なスケールの広さでもなく、観客が全員飛び跳ねる性急さも無いわけだが、メンバーの表情(めちゃくちゃキュートなBEA!)やいい意味で整頓されていない演奏がスタジアムの心を掴んだのが手に取るように分かる。
ギターを担当するJacobのハチャメチャなようで楽曲の軸を作り出しているプレイと観客に向けて牙を剥けるような激しさが好きなのだけど、彼の煽りにもっと声という形で応えることが出来ればより良かったな…とは思ってしまった。少し歯痒い。
ハイライトは名曲「Last Day On Earth」。永遠に続くかのように思える青春の煌めきと寂しさを詰め込んだギターリフに聞き惚れながらBeabadoobeeのハミングに合わせて手を天に掲げた瞬間に音楽フェス何たるか、が詰まっていた。終始笑顔で日本で楽器を弾いてくれていることが嬉しいのと、2022年にここまでストレートな「インディー」や「オルタナ」という言葉が似合うジャキジャキしたギターの音が聴けるなんて夢みたいだった。来日公演したら行きます。
13:40~ SQUID SONIC STAGE
BEABADOOBEE終わり、もう始まってしまったSquidのステージへ小走りで向かう。辿り着いたSONIC STAGEに広がっているのはとてつもない緊張感だった。音源を聴いて感じた直線と曲線が交差し合うようなグルーヴがよりソリッドに響いていた。メンバーのルーツであるジャズが持つ「楽器同士の競り合い」という要素が抽出されていて、メンバー同士が常に睨みを聴かせながら楽器を操り、アンサンブルを構築していく。それを固唾を飲みながら見守る観客たち。そして楽曲の終盤に向けて曲が完成しメンバーの演奏に熱が加わり、果て、演奏が終わるたびに一種安堵のような拍手が広がる。凄い。ずっとビジョンに映し出されていた「何か柔らかいものが異質な動きをする」映像と合わせて、異様な引力を持つサウスロンドンシーンの空気を少しだけ感じた。
15:00~ マキシマム ザ ホルモン MARINE STAGE
こちらも途中から。「邦ロック」から音楽を好きになった10代後半から20代にかけてのリスナーにとってマキシマム ザ ホルモンを無視することは出来なかったのではないだろうか。確かに2013年以降一切新しいアルバムを出してはいないし、「予襲復讐」はTSUTAYAで借りれないし聴く機会が完備されている訳では無いが、少なくとも私にとっては非常に大きな存在であった。だから初めて見れてちょっと泣いた。「F」にも「恋のメガラバ」にも「チューチューラブラブニームラムラ」にもそれなりの思い出があるのだ。ただ、彼らの「こじらせ」と言ってもかっこつけすぎに思えるような偏った女性観は今多くの人に受け入れられるものでは無いな、とも思ってしまった。演奏は最高でした。
15:35~ THE LIBERTINES VIDEO LIVE MARINE STAGE
Twitterでは「虚無ビデオ」と揶揄されていた彼らのビデオ映像はフランスでのフェス出演時のものだった。悔しいくらいに全部知っている曲だったし、ピート以外のメンバーはシュッとした出で立ちでスマートでかっこよく、ふっくらしたピートとの対比でバンド全体で見ると様になっていた。演奏は中年の寂寥感に溢れていて沁みる感じ。バカなパーティーバンドでは全くない、という評価通りの成熟をしていた。
16:30~ Måneskin MARINE STAGE
今年のサマソニの目玉であり、かつ「ロックの救世主」といういささか大仰な二つ名を背負うバンドのステージはベストアクトと言っちゃいたいくらいの熱量だった。1曲目の「ZITTI E BUONI」のイントロ、小気味良さと重厚さが両存するギターリフと心臓まで響く図太いバスドラムの音だけでスケールの違いを見せつけるようだった。そして彼らは「ロックの救世主」ではあるのかもしれないが、快楽の種類としてはヒップホップに近い気がした。ループするギターのリフにリズミカルに畳み掛けるようなボーカルが乗っかる。勿論ハードロック的なギターソロはあるのだがやはり無条件に腰から踊ってしまうような感覚はラップミュージックの快楽に近いし、世界中で聴いている方々も「ロックを聞いている!!」という心持ちではないのだと思う。
とはいえボーカル・ダミアーノは現代に現れた鍵括弧付きの「ロックスター」だ。化粧と素肌が印象的なビジュアルはグラムロック期のデビッドボウイのような両性具有具合で、異様なセクシーさを放っていた。また、その声はかなり聞き取りやすく、マイクとスピーカーに乗りやすいのだろう。ボーカルと耳が近い。そして首輪をつけているのが象徴的なように、観客に向けて非常に献身的なパフォーマンスを行っている。ステージを縦横無尽に駆け回り、さらにステージを降り観客席の真ん中の方までダッシュする。その場全員のハートを掴むのが本当に上手というか、挑発しつつ愛される力というか、なんというか「これがスターか…」と納得させられてしまった。
マネスキンはインタビューで「優れたロックバンドの条件」としてカリスマ性、アティチュード、ペーソス(哀愁)を挙げている。まさにマネスキンを表す言葉だろう。カリスマ性は先程書いた通りだ。パーソナリティーを反映し、社会規範に対しての投げかけとして機能する装い含め「アティチュード」が根っこにあるのは明白だろう。そしてステージに立ち熱狂を生めば生むほどステージにいるマネスキンは群衆の一部ではないことが際立ち、一種の哀愁が生まれる。まさに自らが理想と掲げている「ロックバンド」の在り方を自らで証明し続けるような、そんな強みがある。
スネアのトラブルも即興のセッションで乗り越え、ほぼ45分ノンストップで駆け抜けたマネスキンの無尽蔵のエネルギーに観客ができるいっぱいの盛り上がりで応えていたが、特に最後の曲における「I Wanna Be Your Slave,I Wanna Be Your Master.」という歌詞は互いに盛り上がりの主導権を取り合おうとしているようだった。次はヘッドライナー前でしょうか。是非数年後にまた。
17:45~ King Gnu MARINE STAGE
現状一番人気がある日本のバンドだし、オリジナルアルバムはどれも好きな箇所があるということでかなり楽しみにしていたKing Gnu。わたしは結構満足でした。「求められているもの」と「やりたいこと」の間で四苦八苦している様が手に取るように分かったというか。「一途」のアウトロで常田大希のギターキッズとしての顔が覗く瞬間には思わず拳を握ってしまった。ただピアノのコード+井口氏のボーカルで始まる曲の畳み掛けは少しダレる瞬間と言えてしまうかも。椎名林檎のフィルターを通してoasisをやるみたいな新曲「雨燦燦」はかなり好き。
音響が悪いとの声が多かったが、ドラムがストーンと抜けないなぁ…と思った程度でそこまで気になりませんでした。
19:30~ THE 1975 MARINE STAGE
感想はこの記事に書いたので、是非。振り返るとカット割りも照明もト書きも予め存在するようなあまりにも完璧な90分だった。
見事に全部ギターロックでした。クリマンの資金力が芳しくないからこそ超メインストリームのアーティストを呼べない、みたいな勘繰りが正解かどうかわからないが、決して「今の世界の最先端のポップスを提示する場」になっていない(今までのサマソニのラインナップも同じだけれど)ことが功を奏して魅力的な1日になったのだと思う。ベストアクトがマネスキン、一生忘れないのがTHE 1975、みたいな事後評です。楽しかった!!