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「熊野リベンジ!紀伊半島一周の旅」その15(最終回) 日本最古の大神神社、そして等彌神社へ
【前回までのあらすじ】
クレソン後輩の希望に沿って、熊野を3年ぶりに巡ることになった「私」。熊野三山は必須として、3年前は回れなかったところを目指して、熊野リベンジに向かった。しかし、長旅で発覚したクレソン後輩の頻尿癖はどんどん深刻になっていく。そんな時限爆弾を背負ったまま、旅は続く。
過酷な旅ではあるが、1月4日は熊野那智大社で神々しい陽光と那智の滝水をいただき元気百倍!さらに太地町で鯨肉を食べることができた。そこから一気に和歌山市まで北上しソウルフードを食してさらに元気になり、最後の目的地、奈良県の大神神社を目指すのであった。
【紀伊半島を一気に東行】
和歌山市内からまた高速道路に乗り、一気に東行。
西行法師になぞらえて高杉晋作は「東行」を名乗ったそうだが、私達も東へ行く。
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和歌山と奈良は近いのに雰囲気が全然違う。古都の空気が漂ってくる。
車で走っていて、何か小高い丘を見つけて「今の丘、不自然じゃなかった?」と尋ねると、「すごい、天皇陵のようですよ!!」と後輩が教えてくれる。
神武天皇が即位された都であり、先人たちの物語は目に入る自然物にさえ宿っている。
【雷神が落ちていた雷丘】
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ふと「雷」と書かれた標識に目が留まる。
傍には小高い丘が!
「ここって雷丘じゃないの?」
頻尿後輩は「え?いかづち?おか?」と口を開いて呆けている。
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柿本人麻呂が「大君は神にしませば天雲の雷の上に庵りせるかも」と詠んだ場所である。
雄略天皇より雷神を捉えよと命じられた少子部栖軽は、この雷丘で雷神を捉えて献上した。
少子部栖軽が亡くなった際に、雷丘に「取雷栖軽之墓」(雷神を捕えた栖軽の墓)と墓標を建てる。立腹した雷神が墓標を踏み潰すと、足を取られ抜けなくなってしまう。雄略天皇は雷神を逃がして「生之死之捕雷栖軽之墓」(生来ているときも死後も雷神を捕えた栖軽の墓)と墓標を建て直したという。
これだけ説明しても頻尿後輩は「ほへー」と気の抜けた返事をするばかり。
【大神神社前の大渋滞とチキンゲーム】
大神神社に近づくと、渋滞してきた。
明らかに大神神社関係者ではない怪しげな業者がたくさん出てきていた。
頻尿後輩が「私はああいう業者が大嫌いなんです!反社ですよ!!ああいう輩に金を払っちゃいけません!」と激昂している。
しかし大神神社まで行って駐車場が無かったらどうしようか、という焦りもあり、チキンゲームのような駆け引きとなる。
例えば、神社まで1キロくらいの地点のミニストップの駐車場が「参拝用駐車場」とされていたが、「※お支払いに関しては、ミニストップと一切関係ございません」と誰が見てもおかしなことが書いてあった。
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チキンゲームに勝つ武器はズバリ「度胸」だ。こういうときだからこそ、強気に正道を歩まねばならない。
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大神神社の大鳥居では交通整理が立って、入る車を制限していた。
少し待って大神神社近くの駐車場へ誘導される。
駐車場には「無料」「有料」があったが、残念ながら「有料」に案内されてしまう。拒否権は無い。
駐車場内で手慣れた係員が駐車の指導までしてくれて、駐車した瞬間にワイパーに駐車の整理券を挟まれてしまった。
「はい、駐車料金1500円ください」
あまりの手際の良さにすぐに支払う。これには勝てない。
とにもかくにも大神神社まで来ることが出来た。時間は午後5時になって、だんだんと暗くなっている。
周囲には屋台が出て、夜祭のような華やかな空気が漂っている。
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「行ってきます!!」と勢いよく駆け出す頻尿後輩。
「またかよ!」と思うが、仕方ない。
トイレに駆け込んで、しかもなかなか出てこない。
しばらく経って憑き物が落ちたような表情で出てきた。
「いや~お待たせしました」
【日本最古の大神神社へ】
少し薄暗いのも相まって、大神神社は幽玄の世界と化していた。
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灯籠に照らされた参道を歩んでいく。
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様々な場所に卵が奉納されている。
大神神社の御祭神である大物主大神はヘビに姿を変えるとされ、ヘビの好物が卵だからとされる。
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大神神社の拝殿前の鳥居は二本の柱に注連縄が渡された不思議な形をしている。明治以降に統一される前の古い神道の姿を垣間見ることができる。
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拝殿では巳年ということもあり、大きなヘビの絵馬が掲げられている。
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大物主大神の娘は、初代・神武天皇の皇后となったとされ、現在の皇室もその血を受け継いでいることになる。
天皇陛下からの幣帛料の札を見て、現在も神話がつながっているのだなぁと感動する。
【巳の神杉】
本殿に向かって右側に巳の神杉がある。
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光に照らされてまっすぐ伸びる神杉は、鎌首をもたげる巨大なヘビのようだ。
【禁足地もある大神神社】
御神体の三輪山は禁足地とされ、拝殿の裏側にある三鳥居から登ることができる。
入る期間や時間帯は厳しく定められ、飲食や見たものを話すことも禁止されている。
軽い言い方になってしまうが、現在でもそういう場所があることが嬉しい。
一度はお参りしてみたいものだ。
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【祭祀は男系の子孫が行わなければならない】
第10代崇神天皇の御代に疫病が流行し、国民が多く亡くなってしまった。崇神天皇の夢に大物主大神が現れ、意富多多泥古(大田田根子)というものを探し出して祭祀を行わせよ、と告げたという。
見つかった大田田根子は大物主大神の5世孫であり、祭祀を行うと疫病はおさまったという。 崇神天皇は大物主大神の娘の子孫にあたり、男系(父のまた父を遡って行けば祖先に行き着く)の子孫ではない。(※ちなみに母の母を遡っていっても大物主には当たらないため、「女系」というのも不正確である。)
祖先神を祀るのは男系の子孫であるということが神示で示された事例と言える。
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帰り道もまだまだ人が多い。
最古の神社にお参りしたからか、すべてが感慨深く見える。
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車に乗り込み、大鳥居の下をくぐっていく。
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【神武天皇の祭祀の地 等彌神社へ】
だいぶ暗くなってきたが、2キロほど離れている等彌神社を目指す。
鳥見山は初代・神武天皇が、皇祖神及び天津神を祀った場所であると伝わっている。
この祭祀こそ、天皇陛下が即位される時に斎行される「大嘗祭」の起源とされている。
等彌神社の境内には人気がなく、かなり暗くなっていた。
「ちょっとトイレに行ってきます!!」と、また頻尿後輩が走っていく。さっき大神神社でも用を足したばかりだと言うのに・・
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何故か「ムー」のコピーが掲示板に貼られている。
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暗くなった山道のような参道を転けないように慎重に進んでいく。
上津尾社が明かりの中にぼやーと浮かび上がった。
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こちらに神武天皇の祭祀の通り、天照大神が祀られている。
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少し降りたところに下津尾社があり、神武天皇、応神天皇、高皇産霊神、天児屋根命が祀られている。
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暗闇の中だったが少しも怖い感じはしない。大神神社と打って変わって人はほとんどおらず、静寂と清浄な空気に満ちている。
神武天皇の祭祀から始まった日本だからこそ、様々なことがあっても神々に護られて今があるのだろう。
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神武天皇の聖蹟顕彰碑は、残念ながら暗くて良く確認できなかった。
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なんとかお参りは果たしたものの、既に午後6時。
ここまでが限度だろう。
京都駅まで行き、旅を終わらせよう。
【旅の終わり】
京都駅に向かいながら、回想する。
よくもまぁこれだけ回ったものだと我ながら呆れる。
約2日間の旅だが、1週間くらいの体験のようだ。
それでもまだまだ行きたい場所はあった。
和歌山の白浜の熊野三所神社、南方熊楠顕彰館は一度行ったけれど再度拝観したかった。
「稲むらの火」で有名な広村にも寄る予定だったけど果たせなかった。
要塞の島・友ヶ島にも行きたかった。
新宮市では徐福伝説のある蓬莱山も行きたかった。
熊野本宮大社のさらに奥にある玉置神社にも行きたかった。
奈良では石上神宮にも行きたかった。
しかし2日間では土台無理だ。
紀伊半島だけでもまだまだ行く場所はある。八百万の神々の在す国日本は本当に素晴らしい場所だ。