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機動戦士ガンダムOO〔ダブルオー〕のストーリーが素晴らしかった
機動戦士ガンダムOOが11月くらいからアマプラに配信されていたので一気見した。2000年代に放送されたアニメの話を意気揚々とするけれど、それでもいいよね!?
ガンダムシリーズはSEEDと水星の魔女しか見たことがないけど、ガンダムシリーズに共通したテーマは『平和と自由』だと思っていて、そのテーマ性が機動戦士ガンダムOOはとても色濃く描かれている印象。
機動戦士ガンダムOOの主人公は刹那・F・セイエイという青年で、ゲリラ戦闘員として育てられていた。
彼は争いのない世界を望んでいて、同じ思想を持ったソレスタルビーイングという集団に属している。
ソレスタルビーイングはモビルスーツ兵器ガンダムを所有していて、戦争や内紛をしている国にガンダムを操縦して軍事介入をしているのだが主人公の所属する集団の立ち位置が面白い。
ダブルオーの世界観の大枠の説明をすると、アメリカやフランスなどの国はあるものの、国同士が同盟を結んで大国家群を形成しており世界にそれが3つ存在している。
大国家群は三つ巴で敵対しているが、戦争となれば世界を滅ぼしかねないくらい大きいものなので、過剰な軍事力やエネルギーを保有することでそれぞれにらみを利かせ合っている。
先進国で生まれ、大国家群の中枢に位置している国の人々は何不自由なく暮らせているので一見平和そうに見えるが、大国家群から見放された国や国家群に属するものの内紛をしている国などは小さな戦争をしていて争いは後を絶たない状況である。
ソレスタルビーイングはどこの国にも属さない独立した少数精鋭の軍事集団でいわば第4の勢力として第一話で登場してきて、衝撃的。
序盤の展開が斬新なのだが、小さな争いは後が絶たないものの、大国家同士の関係は凪の状態が続いている世界に急にソレスタルビーイングという組織が現れ「戦争の大小を問わず、どこの国で行われている武力紛争だろうと武力を以て介入して戦争を終わらせる」と宣戦布告を掲げ、偽りの静寂を打ち破ろうとする。
当然その宣言で3国家を敵に回すものの、ガンダムは最先端の軍事技術が集約して極秘で作られた機体なので、どの国の兵器よりも圧倒的に強い。
ガンダムのような人が操縦する人型ロボットを3国家群は保有しているが相手にならない。
ガンダムは戦争に介入し、偽りの平和などいらねえ!と言うかのようにぼっこぼっこにしていくのだ。ソレスタルビーイングは良いことをしているんだろうけど、子どもの喧嘩にリュウが乗り込んでぼこぼこにしているようなものだから、なんだか大人げなさもあってシュールにも見える。
ガンダムが強すぎるから1つ1つの武力紛争に介入していけば着実に平和は訪れるだろう……そうはいかないのが面白いところ。
3国家群は負けっぱなしじゃいられない。
それぞれ謎の兵器、ガンダムを研究して、その技術をどの国よりもはやく自分たちのものにしようとする。
そうすれば目の上のたんこぶのようなソレスタルビーイングを倒せるし、軍事力も格段に上がり、他国家の侵略も可能になる。
人類の知恵や進化に対する欲望は計り知れない。
そうして、ソレスタルビーイングがガンダムを使って平和のために戦うたびに3国家群は学び、技術力や戦略性が広がって子供だったはずの戦闘力がケンやザンギエフになり、国家群ということで人力も駆使してソレスタルビーイングを苦戦に陥れる。
拮抗したパワーバランスゲームが始まり、より面白くなる。
また、ソレスタルビーイングに所属するキャラもどうして平和を望むようになったのかというバックストーリーが重厚なのはもちろん、3国家群の主要キャラにはガンダムに夢中になるもの、兵士の数でなんとか攻略しようとするもの、プロの傭兵を雇いあらゆる手段でソレスタルビーイングを駆逐しようと考える者がいるから、どの視点にも想いや策略が込められていて展開に期待を膨らませることが出来る。
さらに、ソレスタルビーイングと3国家群の戦いに巻き込まれてしまう人の話もあるため、語りつくせないくらいボリュームのある話となっている。
ソレスタルビーイングと3国家群の戦いに巻き込まれてしまう人の代表としてルイス・ハレヴィと沙慈・クロスロードというカップルが登場する、序盤はただ2人でラブコメをしていて、それが戦いの話の中に差し込まれているものだから「この2人のパートいらなくね??」と思っていたものの、戦いに巻き込まれることで2人の穏やかな日常が狂わされることになり、アニメを見ている人は胸が苦しくなる展開となる、見事なストーリー設計だ。
そんな魅力的なキャラが多い機動戦士ガンダムOOの個人的に特に好きなキャラを発表する。
1人目はパトリック・コーラサワー
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3つの大国家勢力の1つであるAEUに属するパイロットで自信過剰で口が軽く喧嘩っ早いキャラクターでいわゆるヤンキー系のお調子者キャラである。
何故コーラサワーが好きかというと物語自体シリアスなトーンで進んで、キャラクターはずっと何かしらに悩んでいて、会話も平和や自由とか、国のためにとか堅苦しい雰囲気であるため、彼のいい意味で何も考えていない持ち前の明るさと自信が素晴らしいアクセントになっている。
戦闘で結果が残せなくても、負傷をしても生き残り、何度でも戦場へ蘇る姿と上官であるカティ・マネキンという女性に片思いをしていて、上官の命令に常に命を賭けている直情キャラは見ていて気持ちが良い。
専用機を与えられていないのであくまでモブキャラ扱いなのだが、恐らく当時アニメ放送された時も人気だったのではないかと思う。
本作の助演男優賞だ。
2人目は……というかこれはキャラクターというか機械ハロである。
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ハロといえばガンダムシリーズにおけるマスコットキャラとして様々な作品に登場する、機能としてはモビルスーツをアシストする機械である。
AIが搭載されているため自由に話すことが出来るから、日常会話にも口をはさんでいる。
話せることは単調で、ただ言葉を繰り返すだけだったので僕はハロがあまり好きではないというか煩いし苦手であった。
しかし、本作においてその苦手な部分が上手にストーリーに活用されていて愛しさすら感じるキャラになってしまった。
それが1stシーズンの終盤でロックオン・ストラトスというソレスタルビーイングのモビルスーツパイロットが命を賭けて家族の命を奪った宿命の相手と戦うのだが、ロックオンは負けて死んでしまう。
そこでハロは「ロックオン……!ロックオン……!」といつもの単調なメカ声で呼びかける。何度も何度も呼びかけており、メカに心がないと分かっていても、その声はロックオンの安否を確認するための必死の呼びかけにも感じてしまうのだ。
そしてそのハロが何度もロックオンと呼び掛けている声をソレスタルビーイングの母艦が受信することでメンバーもロックオンがどうなったのかを察することになるという、見事な演出であった。
3人目は本作の主人公、刹那・F・セイエイ
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見た目はクールで、過去にゲリラ戦闘員に所属しており、平和を知らない青年ということから情は薄く、常に冷静なキャラクターである。
しかし、ガンダムに対する想いが強すぎて「俺がガンダムだ……」と言ったり「違う、貴様はガンダムではない」と言ったりと、かなりぶっ飛んである。主人公ながら、本作において一番変なキャラクターである。
一番そう思った瞬間は、2ndシーズンの終盤に入るくらいの時、ソレスタルビーイングのキャラクターが戦いを経験してそこで出会った異性に恋心を抱き、平和のために戦っているという動機から、自分・大切な人を守るために戦うという動機が追加され、それぞれ想いのキャラクターの名前を言って戦いに出るというシーンがあるのだが、なんとそのシーンで刹那は「ガンダム……」といったのだ、とてもシリアスなシーンなのだが刹那の一言で笑ってしまった。
そんな刹那の奇妙なセリフであるが終盤には「刹那は……お前たちはガンダムだ……」と思ってしまうような展開に持っていき、ストーリーが刹那の変なセリフに追いつき結びつくところは痺れた、天晴であった。
流石水島監督ウデがある。