ドラマ『アンナチュラル』のあまりにも残酷で、苦しくて、美しかった第5話
シェアードユニバース最新作『ラストマイル』をみるために『アンナチュラル』を視聴している、1話ごとの事件が非常に面白く「終わったら記事にしたいな~」と思っていたのだが5話が衝撃的だった。
全ドラマの第5話で1番面白い第5話
その後の話が頭に入らなかったので、是非この回だけを取り上げたい。
5話は後悔、疑念、嫉妬、怒り、復讐、といった負の感情が45分の間に詰まっている苦しすぎる回。
しかし、ラスト雪が降りしきる中で虚ろな顔を浮かべる法医解剖医中堂系を演じる井浦新さんの画があまりにも儚くて、美しかったので、自分の心がどうにかなりそうでぐちゃぐちゃになってしまった。
アンナチュラルは2018年に放送されていた石原さとみ主演のドラマで今でもAmazonprimeやNetflix等幅広く視聴することが出来る。
ミステリーであるが探偵や刑事が事件を追うシステムではなくUDIという架空の解剖研究機関に所属する主人公である法医解剖医ミコトやそのチームのメンバーが活躍することで真相を解き明かしていくドラマで、今でも人気を誇っている。
法医解剖医に焦点を当てたドラマということで日本において死者は8割が解剖されずに火葬されてしまっていると言われ、謎に包まれたまま火葬されて死の真相までも葬り去られていることが多いのではないかという問題を提起しながら、感染症・過労死・事故に見せかけた殺人など多くの社会問題が取り上げられているのが見どころ。
5話では女性が海で溺死してしまう、それが自殺なのか、事故なのか、殺人なのかを解剖をすることで解き明かしていく話であるが、親族は綺麗な体で火葬をしたいとのことで解剖を望まず、女性の婚約者である鈴木という男がUDIに親族で無断に解剖依頼を出してしまい、その後警察に通報され、死体は親族に取り戻される。
しかし、井浦新が演じる中堂が死体が親族へ返却される前に、女性の肺の部分だけを切除し、警察や親族に黙って鈴木のために溺死の真相を探り始める。
中堂という男は法医解剖医として卓越した観察力と知識を持っていて優秀であるが無口で、無愛想でチームメンバーにも強く当たるところがあり、過去にいろいろあったので周りから煙たがられている存在である。
中堂のしたことは自分勝手で、信頼を裏切るものであり、何より立派な犯罪である。
赤の他人のために何故そんなことををしたのかというと中堂は過去に恋人が亡くなってしまい、とあるパターンから連続殺人犯による殺人を疑い解剖をしたが、親族に黙って解剖をしたため、親族には中堂が恋人殺して証拠隠滅のために解剖をしたと因縁をつけられて逮捕され、不起訴で片付いたが、連続殺人犯によるものだったかという真相は永遠の闇の中に葬られた。
そんな中堂は鈴木を過去の自分と重ね合わせてしまい、彼に真実と向き合って欲しいために、無理やり暴こうと倫理を超えた行動に出た。
主人公であるミコトは中堂の身勝手な行動は気に食わなかったが、死者を敬い、真相を暴こうとする信念は同じ法医解剖医としてリスペクトしているため協力をする。
そして、中堂は主人公であるミコト、UDIラボのチームメンバーで非公式に肺を調査し始める。
ミコトやチームメンバーも上の言うことを聞いて、真相が分からなくなるより、信頼を裏切って真相を追求することを選んだ。
職場で堂々と盗んだ肺を調べることができないので、中堂の家に肺を持ち込んでそこに仲間が集い、肺に入り込んだプランクトンから死亡場所と発見場所の矛盾を見つけていく。
その調査過程は面白くて、チームメンバーの団結が深まっていくのも感じ、真相が少しずつ見えてくることで、法医解剖医の宿命が身に染みるものもあった。そして、鈴木の婚約者は自殺ではなく鈴木の地元の知り合いの女性が婚約者を海に突き落としたという真相にたどり着く。
ここからが怒涛の展開だ、中堂はチームメンバーに相談する前に、鈴木に婚約者は殺されたことを伝えてしまう。
すると、鈴木は犯人の目処がついたのか、犯人は婚約者の葬儀に出席しているくらい近くの関係にいるため鈴木は葬儀場へ向かい、犯人を見つけた鈴木は包丁でメッタ刺しにしてしまう。
ミコトは一足遅く真相に気が付き葬儀場へ向かったため、目の前で鈴木が犯人に復讐をしたことを目撃してしまい、中堂はそうなることが分かりながら鈴木の選択を止めなかったことを知る。
あまりに衝撃的なラストで、5話で用意する展開ではないと見ているドラマは僕は幻かと思った。
1人の男のトラウマによりチームメンバーが団結してより絆が強くなる熱い回かと思いきや、強くなった絆を無残にも断ち切る終わり方、そして負の感情が多く込められていることに気が付く。
・中堂の恋人の死の真相を突き止められなかったという後悔
・チームメンバーによる中堂への疑念
・犯人の動機は鈴木の婚約者が鈴木からもらったネックレスを自慢したこと
からカッとなって殺したという嫉妬
・真相を知ったことによる中堂の静かな怒りと、
鈴木の猛烈な怒り
・鈴木から犯人への復讐と中堂の間接的な復讐
物語において知らなければよかった真実という展開はあるがこの事件は間違いなく明らかにするべく真実であり、その真実を超えた先にある悲劇が痛すぎた。
もやもやとしてバッドエンドな終わり方であるが、降りしきる雪の中で中堂は自分の恋人が亡くした時には辿り着けなかった真実に辿り着いたことと、鈴木に愛する者のために復讐をさせてあげられた満足感がありながらも、本当にこのようなことをしてよかったのかと自分に問いかけているような切ない顔が素晴らしかった。
また、この回では窪田正孝さん演じる、解剖を記録するバイトをしながらゴシップを扱う週刊誌出版社と裏で繋がっている久部が、この事件を女性の不審死の事件として取り扱って真相を追求することを大切さを欲しいと週刊誌に頼み込むが「そんなつまらない事件を取り上げられるわけない」と突っぱねられてしまう。
しかし、事件は婚約者の復讐で幕を閉じ、久部は鈴木が逮捕される現場を撮影することで「世間が興味を持つ面白い事件」に変貌を遂げ雑誌に取り上げられる。
世間の興味を持つ対象というのは恐ろしいと改めて感じてしまった。
一話完結なので是非この5話だけでも見てほしい、おわり。