映画『トランスフォーマー/ONE』オプティマスとメガトロンが親友同士だったあの頃……
映画トランスフォーマーシリーズはマイケル・ベイの1作目からビースト覚醒までなんだかんだ映画館で鑑賞している。
無印、リベンジ、ダークサイドムーンの流れは素晴らしく、特にダークサイドムーンを3Dバージョンで鑑賞した時の衝撃はいまだに憶えている。
正直映画館で一番楽しい体験をしたのはダークサイドムーンだ。
しかし、ロストエイジからはただ映像が良いだけの映画に成りはててしまい(ウィトウィッキーが登場しなくなってしまったのもデカいよね……)ONEではオプティマスやメガトロンの過去の話が描かれることはとても気になっていたけど、予告は正直微妙だし3DCGアニメというのも日本ではあまりウケそうになく、流行らなさそうな~と思っていて、案の定1週目から上映館が縮小してしまうこともあり、完全に見るのを諦めていたが、ちょうどジョーカー2の前に行けそうな時間でやっていたので見ることにした。
面白かった!こんなん男の子大大大好きだろ!
『ゴールデンカムイ』で土方が「いくつになっても男子は、刀を振り回すのが好きだろう?」と言っていたが現代においては『トランスフォーマー』も付け足すべきだ。
トランスフォーマーシリーズはそもそもオプティマスプライム率いるオートボット軍とメガトロン率いるディセプティコン軍の機械生命体同士の対立が描かれているが、かつてオプティマスプライムとメガトロンは親友同士だった。原作は知らなかったのでこの関係はかなり驚いた。
メガトロンとオプティマスの過去が判明したことは、トランスフォーマーシリーズの見る目が変わってしまうくらい革命的な1作である。
ノリやギャグは子供向けだけどそれがいい、変形後のメカも男の子どまんなかなデザインをしていて、シリーズの見どころであるトランスフォームするシーンは純粋に心が躍る。
しかし、ただのお子様ランチ映画ではない、大人も楽しめる話の奥深さがある。
オプティマスプライムとなるオライオンやメガトロンとなる〔D-16〕はお互いを尊敬して助け合う友情があり、特別なモノに憧れ己自身も特別になりたいという夢があった。
そんな共通に持っていたまっすぐな想いはとある出来事により、それぞれの心情が少しずつ変化し、いつのまにかすれ違い、関係が戻ることはなく、お互いが宿敵となってしまう。
苦しい時こそ手を取り合う青春の煌めきを見せながらも、気持ちはずっと一緒とは限らないという展開はほろ苦く、オプティマスとメガトロンは呪術廻戦での懐玉/折玉編の五条と夏油のような関係で思わず脳内音楽で『青のすみか』を流してしまった。
そう、これはお子様ランチ映画ではなく食べ応えと少年の心を思い出してしまうミックスグリル定食映画だ。
オプティマスとメガトロンは機械生命体が住んでいるサイバトロン星でエネルギーとなる物質を採掘する仕事をするだけの機械生命体で、変形機能はないと思われていた。
オプティマスは心優しく、サイバトロン星の戦士たちに起きた過去の悲劇の真相を探るため、時には命令を無視して無茶をすることもあった。
メガトロンは上からの命令に忠実に従う優秀な採掘ロボットで、オプティマスの無茶に付きあったり、心の内には憧れの戦士がいても、人の上に立って何かがしたいと思うようなロボットではなかった。
しかし、2体がプライム戦士たちの歴史と今のサイバトロン星の支配者は仲間の裏切りにより得たもので偽りの支配者だったことを知る。
それは、変形機能は選ばれたものにしか与えられないと思われていた機能が実はその機能はサイバトロン星に住む機械生命体なら元来備わっている機能であり、機能は支配者によって奪われたものであった。
そこでオプティマスとサイバトロンは変形機能を取り戻すことで偽りの支配者を打ち破ろうとする。
オプティマスは支配者をその座からおろし、資源を分け合い、すべての機械生命体に変形機能を取り戻してあげることで、自律して自由な仕事が出来る公正な社会を手に入れ、サイバトロン星を脅かす敵はみんなで協力して排除することを目標にオートボットをまとめ上げていく。
一方、メガトロンは偽りの支配者に激しい憎しみの心を抱き、自分が強大な資力と権力を得ることで、ロボットを支配し、民を導き思いのまま命令を下し、邪魔者は徹底的に排除する独裁的な力を欲するようになる。
心優しい内気な〔D-16〕メガトロンが悪に堕ちる心情の変化が丁寧に描かれていてオプティマスの成長よりも、どうダークサイドに落ちてしまうのかという展開に目が行ってしまう。
〔D-16〕という普遍的な名前だったロボットが何故メガトロンと名乗りはじめたかというきっかけも取り入れられていて、〔D-16〕はメガトロナスプライムという伝説的なプライム戦士に憧れており、メガトロナスプライムのステッカーを大切に自分の体に貼っている。
そして、覚悟を決めた時、憧れの戦士の名前を受け継ぎ、〔D-16〕はメガトロンと成る。あっちぃ……
メガトロンの部下となるスタースクリーム・サウンドウェーブ・ショックウェーブも登場して、最終的にその3体がメガトロンの後を追い、ディセプティコンを結成するシーンは震えるほどかっこいい。
昔から一つ目のショックウェーブデザインが好きで3Dアニメverもかっこよかった。
メガトロンのことしか語っていないが、オプティマスプライムについては最初は無茶をするだけのロボットが、個ではなく全体を良くするにはどうしたらいいだろうと考え、いずれオートボット軍を率いるためのリーダーシップが芽生える過程も面白かったよ。
そして、仲が良かった2体が敵同士となり対立する瞬間は心が痛みながらも、これからの壮大な戦いはシリーズ的に知ってしまっているため、物語に自然と奥行きが生まれることになり、大人も楽しめる作品となっている。
また、トランスフォーマーシリーズではお馴染みで、オプティマスの右腕であるがもはや知名度が一番高いバンブルビーも登場する。
昔からひょうきんで、ビーの明るさがオプティマスとメガトロンの離別と対立というシリアスな展開に華を添えてくれる。
この映画は賛否をまねいた『トイ・ストーリー4』と同じジョシュ・クーリーであり、僕は『トイ・ストーリー4』がめちゃくちゃ好き(正直トイストーリー3より好き)なので、最後の誰かの所有物ではなく自由を手に入れるというウッディの選択がオプティマスプライムの持っているロボットとしての自由と似通った部分があり、とてもこの監督がより好きになった。