私の出版体験 1
個人的な体験ですが参考にしていただけることがあれば嬉しいです。
はじめに
2年ほど前に単行本を出版しました。自費出版です。それまでに共著を含め研究書は何冊か出していましたが、それらを手にする人は限られています。単著のものでも学位論文を書籍化したものだったので友人に「読んで」と言うのはためらわれました。興味を持たれないと思うからです。家族だってあまり興味を示しません。 だから多くの人に気軽に読んでもらえるような本の出版することは長年の私の夢でした。
その夢を実現するチャンスが来ました。コロナ禍です。外出が自粛され、家にいる時間がぐっと増えました。仕事もオンラインで行うようになり、通勤の時間がなくなりました。行動は制限されますが、執筆の時間は格段に増えました。それを利用しない手はありません。得られた時間を活用して本を出版しようと考えました。
どんな本を出版するかはすでに決まっていました。私がこれまで研究を続けてきた海外の教育について一般向けの読みやすいエッセイにまとめたものです。研究を始めてから調査で海外に行くことがたびたびありました。中高生を引率して行くこともあり、現地の学校を数多く体験しました。そうした中で私の手元には海外の教育に関する情報が蓄積されていきました。論文の執筆に使用したものもありますが、未使用のまま眠っているものも少なくありません。そうした情報を記憶が鮮明なうちにまとめておきたい。そうした思いが私を本の執筆に向かわせました。
原稿の執筆
こうして出版に向けた原稿の執筆が始まりました。それまでに書き溜めた原稿はかなりありましたので、新たなトピックを設定し書き加えていく形になりました。コロナ禍で執筆は一気に進みました。
執筆に際して心がけたことが「読みやすさ」です。それまで研究論文ばかり書いていたので私が書く文章は固いものになりがちです。だれもが気軽に読んで楽しめるよう読みやすい文章を綴ることを心掛けました。
教員時代に体験した日本の学校のエピソードもたくさん盛り込みました。
出版社選び
執筆と並行して行ったのが出版社選びです。今はネットなどで自分でも書籍を出版できる時代です。でも私はまだまだ古い人間です。やはり紙の本へのこだわりがあります。
それまでの出版は学術書を専門に扱う出版社からだったので、今回は一般書を扱う会社をネットで片っ端から調べました。また、共著の場合は代表の方が出版社選びなどすべてやってくれましたし、単著の本も指導教授に出版社を紹介してもらっていたので自分で探す必要はありませんでした。でも今回はすべて自分の力で進めなければなりません。自費出版を扱う会社は多数ありますが、やはり信頼できる会社であることが重要です。
大手から中規模の会社まで1カ月近くかけて調べました。資料を請求し、メールや電話で問い合わせ、実際に説明会にも参加しました。実際に出版されている本も手に取って読んでみました。どのようなジャンルの本を出版しているか、編集はどのようになされているか、校正はしっかりされているかなどを確かめることも出版社選びでは重要なポイントになります。私は特に編集や校正がきちんとされているかどうかを重視しました。自分の書いた文章が不適切ではないか、公にされることに問題はないか、誤字や脱字はないかなど自分では気づかないことをきちんと指摘してほしかったからです。著作権や肖像権、プライバシーの侵害なども確認もらいたかったです。自費出版と言えども読むに値する本を出版したいです。
最終的には比較的大手の出版社に決めました。費用はやや割高ですが名の知れた会社なのでまず大丈夫だろうと思いました。もちろん「賭け」の部分はありましたが、営業担当者とのやりとりを通してある程度の信頼感も得ました。
出版の流れ
出版社を決めたら見積もりを出してもらい費用などを検討し、納得したら契約します。契約書は細かなところまで何度も読み返し、納得のいかないところは問い合わせました。ハンコを押すまでは慎重さが必要です。契約後すぐに申し込み金を支払いました。費用は3分割して払いました。
契約が済んだら原稿を提出し制作に入ります。制作は担当編集者と相談しながら行います。初校は1カ月後に出来上がり、その後何度も校正を繰り返し、校了となるまで2カ月ほどかかりました。校正は私が期待した以上に丁寧にやってくれました。本文中に多用されている表現をリストアップし、表記のゆれを指摘して統一語を提示してくれたことも有難かったです。表紙のデザインや帯の文言なども丁寧に相談に乗ってくれました。
校正と並行して表紙や帯の作成も行いました。プロのデザイナーが提示してくれた表紙デザインは柔らかい感じで私の気に入るものでした。帯のカラーや文言も納得のいくものなりました。表紙や帯は書籍の「顔」になりますからやはり自分の気に入ったものにしたいです。
最終的に仕上がったのは四六版のソフトカバーで約300ページの本です。ひとまず600部印刷しました。絶版がないとされているので在庫がなくなったらその時点で増刷が検討されます。でもそれはあまり期待しませんでした。とにかく初版が捌ければよいと考えました。紙の本と合わせて電子版も出版しましたが、こちらは半永久的に販売されます。
契約してから出版されるまで約半年でした。無事に出版されたときはとても嬉しかったです。
書店への配本とプレスリリース
契約には書店流通も含めていましたので出版前に配本先の希望を聞かれました。アマゾンなどのネット販売以外で全国の書店の中で特に置いてもらいたい書店を提示するのです。その点は出版社の方が熟知していると思いましたが、さしあたり地元の書店をいくつか希望しました。
出版前日、配本先の書店一覧が送られてきました。首都圏の書店が多かったですが、北海道から沖縄まで全国200店舗以上に配本されていました。大手の書店はネットでも在庫を確認できましたし、地元の書店に並んでいるのをこの目で見たときやはり嬉しかったです。
出版社からはプレスリリースが行われます。マスコミに対する本の宣伝で、10か所くらいに配信するということでした。大手新聞社については配信が決まっていましたが、それ以外に希望があれば提示してほしいということでしたので地元の新聞社やタウン誌、雑誌社をいくつか希望しました。正直なところそこまでやってもらえるとは思っていませんでした。
合わせて献本先の希望も聞かれました。国会図書館についてはすべての本(ISBNのあるもの)が献本されますのでそれ以外の献本先です。出版社から直接献本してくれるということなので所属学会や教育関係の団体、図書館、大学などをいくつか希望しました。
「私の出版体験2」に続く
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