ブータンの学校訪問 その2
2017年3月にブータンの学校を訪問しました。その時の様子を3回に分けて紹介しています。今回は公立のランゴ中学校(Lango Middle Secondary School)です。
パロのランゴ村にあるランゴ中学校は1983年に小学校として設立され、150人の児童と7人の教員でスタートしました。その後2000年に前期中等学校(7年~8年)、2010年に中期中等学校(9年~10年)が開校しました。ですから「中学校」とは言いながら現在は就学前から10年生までの生徒が在籍しています。
訪問時の生徒数は853人(男女ほぼ同じ割合)で教職員は60人いました。正規の教員は43人で女性の割合が多かったです。他に養成段階の教員を含む補助教員が20人ほどいました。養成課程の学生も貴重なスタッフの一員として校務を担っています。
各学年3クラス(一部2クラス)で1クラスの人数は20人から30人です。
前日に訪れたティンプー小学校に比べると校地はずっと広いですが、校舎は古く、設備も傷みが目立ちます。公立学校なので生徒の社会経済的背景もまちまちで、家庭の格差を感じます。でも子どもたちは一様に明るく元気で、私たちを温かく迎えてくれました。礼儀正しく、先生や友達に対する敬意(リスペクト)をいたるところで感じました。
校舎の前にはブータンの国旗とダルシンがはためいていました。
ブータンの学校らしく敷地の中に大きなマニ車が設置されているのも印象的でした。
さらにブータンの国是である「国民総幸福(Gross National Happiness : GNH)」がカリキュラム全体で扱われていることを示す「GNHの輪(GNH Wheel)」も目を引きました。GNHは各教科に組み込まれ、包括的に扱われています。ライフスキルも重視され、生徒中心のアクティブラーニングや協働学習が積極的に取り入れられています。
授業が始まってまず目に入ったのが外で試験を受ける子どもたちの姿です。カンニングなどをしないために外でスペースを取って試験を行うそうです。
授業はゾンカ語以外はすべて英語で行われていました。子どもたちの英語力は高く、先生や友達とすべて英語で話しています。参観した多くのクラスでグループ学習を行っていました。
教室表示。
5年生の授業風景。グループごとに座る形式はどのクラスにも見られました。どの子も授業には真剣に取り組み、積極的に学ぶ姿勢が感じられました。
体育の授業が外で行われていました。体育着に着替えたりはせず、そのままの服装で行います。
図書室です。蔵書はあまり多くありません。ここにも国王一家の写真が飾られています。
図書館のルール表示。
休み時間に教室の外に出て遊ぶ子どもたち。
授業を参観した後、先生たちと懇談しました。そこで得た情報です。
・GNHは学校教育で最も重視されいて、指導の基本になっている。
・各教科にGNHの要素を組み込み、包括的に扱っている。
・教師が教える授業(teacher-centered)から生徒が自ら学ぶ授業(student-centered)に 変化してきている。
・評価は形成的評価と総括的評価の両方で行う。
・年に2回教育省の視察が行われる。
・近年は教員不足が課題となっている。
別れ際に一人の先生から「日本ではなぜ自殺が多いのか」と聞かれましたがうまく答えられませんでした。